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南充浩 オフィシャルブログ

サンドブラスト加工は危険か?

2011年6月1日 未分類 0

 5月20日付けの繊研新聞にジーンズにからんで「サンドブラスト加工は危険か」という記事が掲載された。

記事によると

トルコのジーンズ加工場で作業員がけい肺症になったという報道から、
サンドブラスト加工の取り扱いを中止するジーンズメーカーや大手SPAが出ている。

という。

サンドブラスト加工とは高圧の砂を吹き付けることで表面を削ってダメージを与える加工で、本来、さび取りや金属の研磨などに使われる加工で、工業界では当たり前に使われている。ただ、砂に含まれる結晶シリカが飛散し、防護マスクをしていない作業員がその粉末を吸い込むと健康被害を受ける可能性がある。

おそらく、この部分だけの報道が独り歩きして、上のような取り扱い拒否のブランドが出てきたのだろう。

しかし、記事によると

トルコの作業員は防護服やマスクの着用などの安全対策を怠っていたと伝えられており、「コストをさげるために手抜きをするからこういうことが起きる。やるべきことをやってからコストを考えるべき」というエドウイン商事の小林道和専務のコメントも掲載されている。

さらに続けて、

薬品や物質が問題なのではなく、取り扱い方の問題。法令や基準を守ることは当然だが、
「アパレル業界自身がもっと物作りの現場を知ることが必要」(小林専務)

とある。

物作りの知識や経験がなくても熱意と工場側への配慮に溢れたブランドもあるが、大多数のブランド、とくにSPAブランドは机上の空論だけで商品を組み立てている。
実質は組み立てているというよりは、製造関係者に要望だけを伝えて、組み立てさせている。
実際に工場まで足を運んで現場を見たことがない企画担当者が大多数を占める。

サンドブラスト加工で防護マスクをするのは当たり前で、岡山・児島地区の洗い加工業者のほとんどがきちんとマスクをしてサンドブラスト加工を行っており、実際にこの目でも見た。
マスク着用をしなかったといわれるトルコの工場運営がむしろ異例であろう。

そして、トルコの工場も過剰にコスト削減をアパレル側から要求されたのかもしれない。

ここで、アパレル製品の原価率を考えたいのだが、年々低下している。
これまでの製品は、製造業者が製造して問屋に卸し、小売店が販売するという
重層構造であったため、中間利益が幾重にも発生して店頭販売価格が高かった。
SPA方式は、本来なら、小売業者が製造までする。もしくは反対に製造業者が直接小売する。のどちらかであるため、中間利益を省くことができ、店頭価格が安くなるというものだった。

しかし、現実には、SPAブランドのほとんどは自社で物作りを行っておらず、デザイン・企画すら外注している。
製造業者がおり、外注のデザイン企画がおり、外注のパタンナーがおりそれらが作った商品をSPAブランドが仕入れて販売すると言う重層構図になっている。
ブランド側は、利益を確保するために年々製造原価を下げており、現在では、製造原価20%を下回るようなSPAブランドもある。

要するに、10000円の店頭価格の商品が実際は1800円程度で作られているということである。
本来のSPAなら1800円で製造した製品は、6000円くらいで販売できる。

だから、夏冬のバーゲン最終時に、10000円の物が「一律1900円」という投げ売り価格が可能になる。
最悪、売れ残り商品の製造原価さえ回収できれば良いということである。

当然のことながら、トルコの工場ではないが、工場の労働条件も厳しくなるし、使用する素材も劣悪になる。縫製も手抜きになる。本来は「比較的品質の高い商品を、中間利益を削ることで、良心的価格で販売する」はずだったSPAという仕組みが、いつの間にか「中価格帯を維持しながら利益を増やすために、品質を下げ続けて、最終バーゲンで破格値で投げ売りする」という仕組みに変貌してしまっている。

こんな安直なSPAブランドが多数存在したままでは、アパレル業界の活性化は永遠に無理だろう。

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