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南充浩 オフィシャルブログ

呉服はアイスクリームの3分の2の市場規模しかない

2017年6月16日 考察 0

 先日、ちょっと驚いてしまったのが、この記事だ。

「明治 エッセルスーパーカップ」が売れている、控え目な理由
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170614-00000030-zdn_mkt-bus_all

明治エッセルスーパーカップというアイスクリームの記事なのだが、

アイスクリーム業界が盛り上がっていることをご存じだろうか。日本アイスクリーム協会によると、2015年の販売金額は4647億円。10年ほど前から、右肩上がりで伸び続けているのだ。

とある。
アイスクリーム市場規模が2015年で4647億円もあるという。

その中で売上高1位に輝き続けているのが、明治エッセルスーパーカップ(定価130円)だという。
記事によると94年発売で95年からトップになり、2000年に2位に後退したものの、2004年にトップに返り咲いてからは現在に至るまでトップを守り続けているという。
実に13年連続トップということになるから、なんともすごい。

それはさておき。

単価が100何十円かのアイスクリームの市場規模が4647億円もあることに驚いた。
この市場規模を見たときに、ふと頭に浮かんだのが呉服の市場規模である。
だいたい毎年2900~3000億円で低推移している。

商品単価が最低でも100倍は違うのに、アイスクリームの方が市場規模が1・5倍も大きい。

もちろん、衣服と「消え物」である食料品を同列に比較することはできない。
衣服は耐久財という側面があり、よほど無茶なことをしない限りは、最低でも3年くらいは持つ。
だから買い替える頻度は低くなる。

一方、食料品は食べてしまえばなくなるから、毎日でも買い替え需要が発生する可能性がある。
従って年間トータルすれば個人がすさまじい量を消費している可能性もある。
その辺は衣料品とはだいぶと異なる。

とはいえ、低単価のアイスクリームでさえ4600億円の市場規模が作れるなら、高単価の呉服がそれの3分の2程度しかない市場規模だというのはちょっと努力不足ではないかと思ってしまう。

アイスクリーム好きな個人が毎日、1個ずつ必ずエッセルスーパーカップを食べ続けたとすると、年間36000円くらいを支出していることになる。
毎日必ず1個を1年間食べ続ける人というのはそれほど多くないから、一人がアイスクリームに支出する金額はもっと小さくなるだろう。

それでも多数の人が買うことによって、4600億円もの市場規模になるということだ。

記事では、明治エッセルスーパーカップを売り続けるために、すさまじい商品開発の努力が語られている。
記事ではあまり語られなかったが、売り方も様々工夫されているのではないかと推測する。

翻って呉服はどうだろうか。
そこまで「売れるため」の商品開発がなされているだろうか?

近年、新しい売り方、デザイン、コーディネイトが発表されてはいるが、SNS上で見ている限りにおいては、決まりきったフォーマットを全く崩そうとしない守旧派も数多くいる。
それこそ「あんなペラペラは着物じゃない」とか「あれは着物らしくない」とかそういう批判が多く、通称「着物警察」とまで呼ばれている。

まずは利用者の裾野を広げることの方が大切なのに、それに真向から反対して、ハードルを上げてばかりいる。
めんどくさい着物警察に絡まれるくらいなら、着物なんて着たくもなくなる。
おまけに洋服よりもはるかに高額である。

高いカネを払ったのにグダグダ言われるなら、ユニクロで買った990円のTシャツでも着ていた方がナンボかマシだ。

先日、誤解による炎上から明るみに出たように、呉服関係の製造加工業は後継者難である。
もちろん洋服の国内の製造加工業も後継者難である。

どちらも後継者難に陥っている理由は、事業を継承しても儲からないからだ。

儲からないから志望者が集まらない。
儲かれば志望者が集まる。

じゃあ、左前だろうが、ペラペラだろうが、インクジェットプリントだろうが、着物をたくさん売れば良いのではないかと思う。
入門のハードルを下げて、その上で正式なルールを教えるようにすればよいのではないか。

最初から厳格にルールを押し付けると、そんなめんどくさい物は誰だってやりたくないと感じる。
別に着物業界が消滅したところで、大概の人には何の影響もない。

明治エッセルスーパーカップが廃止になる方がよほど影響が大きい。

製造加工の技術を残そう!と主張するなら、儲かる業界にすることを考えるべきだろう。
儲かるようになれば、全部は無理にせよ、いくつかの製造加工業は確実に残る。

低単価のアイスクリームでさえ4600億円の市場規模が努力次第では作れているのだから、高単価の着物は努力次第では、もう少し市場規模を押し上げることは可能なのではないか。
ついついそんな風に考えてしまう。

門外漢の自分にはこれ以上何もプランもないが、和装関係者でいろいろと考えてみてもらいたい。
今のままなら呉服の市場規模はさらに縮小するだろうし、それにつれて製造加工業は減り続けるだろう。
もう手遅れだという声もあるが、何とかしたいと考えている和装関係者がいるなら、もっと「売るための努力」をする必要があるのではないかと思う。

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