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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロのリペア加工ジーンズの圧倒的コスパ

2017年2月9日 お買い得品 0

 先日、ユニクロのリペア加工ジーンズを買った。
定価3990円が期間限定で2990円に値下がりしていたからだ。

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リペア加工とダメージ加工、クラッシュ加工は似ていて混同されやすいが厳密にいうと違う。

ともにジーンズを破ったり擦り切れさせたりするところは同じだが、ダメージ加工・クラッシュ加工はダメージを与えっぱなし、壊しっぱなしで終了する。

一方、リペア加工は破ったところをさらに修繕(リペア)する。

一般的に、通常の洗い加工よりもリペア加工、ダメージ加工は加工賃が高くなるが、さらにいえばリペア加工の方がダメージ加工よりも加工賃が高くなる。破った穴をもう一度当て布などでふさがなければならないからだ。
なんだか自作自演のマッチポンプみたいな感じもするが、そういうものである。

このため、クラッシュ加工やリペア加工は長らく、高額品として君臨してきた。
理由は加工賃が高いからである。

そのリペア加工ジーンズが3990円(税抜き)で発売されることだけでも、5年前とは隔世の感があるが、それが2990円にまで値下がりするというのは、驚くほかない。
製造加工賃の観点からすれば圧倒的なコストパフォーマンスだといえる。

ユニクロのリペア加工ジーンズのスペックは、

スリムフィットストレートで股上浅めのシルエット。
綿98%・ポリウレタン2%のストレッチデニム生地で、生地生産メーカーはカイハラ。
製造地は中国。

である。

生地はやや薄く、触感だけでいうと12オンス程度ではないかと感じる。

シルエットは筆者にはピッタリで、太すぎず、かといってピチピチすぎない絶妙なシルエットにまとめている。
もっと華奢な体型の人だと太すぎると感じるだろうし、もっと太い人だとピチピチのモモヒキのようになるだろう。

デニム生地の色落ち感も過不足はない。上を見たらきりがないがこの価格ならむしろ出来過ぎだろう。

肝心のリペア部分は左右の足に1か所ずつでその処理も悪くない。
この処理はアセアンやバングラディシュの工場では難しかったのではないか。だから中国工場を使ったのではないかと考えられる。
アセアンやバングラディシュの工場はまだ技術の低いところが多く、中国工場は概して技術の高いところが多いからだ。

筆者はクラッシュ加工ジーンズが嫌いである。
なぜなら、穿くときに破れ目に必ず足先を引っかけてさらに破れ目を拡大させてしまうからだ。

それに冬は穴が開いたままだと寒い。夏は涼しくて良いのだが。

だから穴をふさいだリペア加工ジーンズの方が好きだが、先ほども書いたように加工賃が高くなりすぎるので、低価格のリペア加工ジーンズというのは3年ほど前まで市場には存在しなかった。

総合的に、ユニクロのリペア加工ジーンズは2990円ならほぼ理想的な商品だといえる。
これも「2017コスパオブザイヤー」の候補に挙げておきたい。

もちろん、商品のクオリティで上を目指せばキリがない。
例えばもっと厚手のストレッチデニム生地を使う。例えばもっとリペア加工した箇所を増やす。もっと激しい洗い加工を施す。などなどだ。

そうすると商品の価格はそれに比例して高くならざるを得ない。
加工賃がうなぎ上りに上昇するからだ。

2万・3万円は当たり前、5万円でもおかしくない。

そんなジーンズが出来上がる。

なるほど、それはそれで結構だし、そういう商品の存在自体を否定する気は毛頭ない。
限られたマニアに向けて売りたいのならそれはそれで良いと思う。

ただ、考えてもらいたいのは、「モノの出来栄え」を競うということはそういう競争になるということである。
ある程度の大衆層に向けて売りたい場合はそういう競争に何の意味があるのだろうか?
ほとんど意味がないだろう。おそらくその「良さ」は大衆にはほとんど伝わらない。

例えば

「ユニクロよりもリペア加工箇所を3ヵ所増やしています」とか
「ユニクロよりもステッチ(縫い目)のピッチを細かくしています」とか
「ユニクロよりも激しい洗い加工を施してタテ落ち感をよりリアルに再現しました」とか

そういう「こだわり」はほとんど大衆には響かない。

「だから店頭販売価格が1万5000円になります」と説明したところで、大衆からすると「だったらユニクロの3990円で十分なんだけど」としか思えない。
ユニクロの商品の出来栄えがゴミ屑のようならそういう論法も通じるが、3990円という販売価格と照らし合わせると過剰品質であるくらいの出来栄えなのだから、大衆は「これで十分」と考える。

繰り返すがニッチなマニア層に向けた商品はこの限りではない。

しかし、ある程度の大量販売を狙うアパレル企業がこの手の競争をユニクロに挑むのは愚策である。
作り手が思っているほど、大衆にはその「こだわり」は伝わらないし、その「こだわり」に価値を見出さない。

そうではなくて、背景とかストーリーとかそういうものを語ることで競争しなくては勝ち目がない。

かといって、お涙頂戴の偽善臭漂うストーリーをデッチ上げるのも危険極まりないが、そういうところに着目する必要があるだろう。

商品の見え方や商品の製造方法での競争は、大衆向け商品においては、ユニクロにはもはや百貨店向けアパレルと言えども勝てなくなりつつある。それを自覚しないことにはさらに負け続けることになる。

(追記:某製造業者からご指摘があったので、補足しておきたい。ユニクロのこのジーンズの加工賃はそれほど高くないらしい。脇をほどいて穴をふさぐ必要がないからとのことである。脇をほどいて穴をふさぎ直すタイプのリペア加工なら加工賃は跳ね上がるが、そうでないならそこまで加工賃は上がらないとのことであり、ご指摘を感謝したい)




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