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南充浩 オフィシャルブログ

デービッド・アトキンソンへの妄信は危険

2017年1月30日 産地 9

 寺社の修復などを手掛ける小西美術工藝社という伝統企業がある。
この企業の社長に就任して、事業を再生したのがデービッド・アトキンソン氏である。

金融マンから転身したという変わり種で、わざわざ伝統工芸の社長に就任するくらいなのだから、親日的な人物なのだろうと推測される。

また国内でも、グローバル金融マン出身という出自も手伝って、彼の意見の信奉者が多い。
事業を再生した手腕に加えて、根深いグローバルコンプレックスを抱えている日本人は、イチコロで彼の信奉者になりうる資質を持っている。

アトキンソン氏の論調は聞くべきところが多く、最近はいささか挑発的な表現が増えたが、彼なりに我が国の産業を考慮しての提言だと感じる。
しかし、やっぱり「グローバル金融マン」の素性は捨てられないのだなあと感じる。
良くも悪くもアトキンソン氏はグローバル金融マンであり、グローバル金融マンにも当然負の側面もあるということである。

世の中に良い部分しかない存在なんてないのである。
どんなに良い事柄でも必ず負の部分を内包している。

例えば、アトキンソン氏は日本の産業の輸出を促進したいという意図からか、盛んに「一人当たりの輸出金額が低い」ということを最近主張し続けているが、本来は一人当たりの輸出金額は、国の経済力とは関係がない。

「『1人あたり』は最低」ではない日本経済の伸びしろ
http://totb.hatenablog.com/entry/2016/12/11/222220

ここから引用する前に、アトキンソン氏が盛んに比較して日本を挑発する材料にしている韓国についてだが、韓国は内需が極端に弱い国で、ほとんどを輸出に依存している。
しかも人口は日本の半分以下であるから、必然的に一人当たりの輸出金額は高くなる。

日本は内需が大きいので低くなるが、アトキンソン氏を含むグローバル金融マンが褒める韓国は、現在経済危機に見舞われており、日本との通貨スワップが再開されないままに、今年10月に中国との通貨スワップが終了すると、97年に続いて経済破綻する可能性は極めて高い。

余談だが、韓国での売上高が極端に高くなっている某国内スポーツアパレルは大丈夫だろうかと、業界では噂になっている。余計なお世話だが少しずつ韓国での売上比率を下げるべきだと個人的には考えている。

極端に外需に依存した韓国と比較する意味は本来ほとんどない。

さて、先の記事から内容を抜粋引用して紹介したい。

G7で日本の次に少ないのはアメリカですが、両国に共通するのは輸出の対GDP比が低いことです。人口が多い国は多種多様な産業を抱えられるため、人口が少ない国よりも貿易依存度が低くなる傾向があります。

ヨーロッパ諸国の1人当たり輸出額が多いのは、経済統合を進めた結果、貿易が日本やアメリカの国内取引に近いものになっているためです。各国が地理的に近いことも貿易が多くなる一因です。

「ものづくり大国」を名乗りながら、1人あたり輸出額は世界第44位と言われて、悔しくないですか。

という挑発は的外れです。アトキンソンはアメリカ人に「1人当たり輸出額は世界第42位と言われて、悔しくてないですか」、あるいはドイツ人に「オランダやベルギーに負けて悔しくないですか」と聞いているのでしょうか。

とのことであり、詳しいグラフは原文の記事を開いて確認していただきたい。

アトキンソン氏の挑発はおそらく(面談したことがないから文章から推測するに過ぎない)、我が国産業を考慮してのことではないかと思うが、立脚点が間違っているなら、多くの場合は終着点も間違える。
世の中にはたまに間違った過程で正しいゴールにたどり着くこともあるが、そんな僥倖は期待すべきものではない。

アトキンソン氏の立脚点は牽強付会にすぎる部分が目立っているといえる。
例えば、ノーベル賞受賞者の数についての批判は、明後日の方角過ぎて意味をなしていない。

1人あたりのノーベル賞受賞数が世界で第29位というのは、悔しくないですか。

も、2000年以降の自然科学分野ではアメリカ、イスラエル、イギリス、スウェーデンに次ぎます。1901年からの累計値に基づいて現在の日本を論じることはナンセンスです。

であり、これがまさしく正論である。

アトキンソン氏の経営手腕は評価される点も多いが、間違った議論が横行するのは望ましい環境ではない。

参考に次の記事も読んでいただきたい。

アトキンソンの誤診と失った20年
http://totb.hatenablog.com/entry/2016/12/24/094626

アトキンソン氏の意見は非常に参考になるものも多いが、意図的か無意識的か立脚点が間違っていることも多く、妄信するのは危険である。

彼の意見は、テレビのスポーツ評論家の発言程度に半分くらいは聞き流すのがちょうどよい具合ではないかと思う。

アトキンソン氏に限らず、特定の誰かの言うことを無批判に妄信するのは危険極まりない行為であり、他人に操られる結果になってしまう。

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論
デービッド アトキンソン
東洋経済新報社
2016-12-09


デービッド・アトキンソン 新・観光立国論
デービッド アトキンソン
東洋経済新報社
2015-06-05


 comment
  • 塚越繁 より: 2019/04/05(金) 3:20 PM

    そのとおりです。 幾つかの論点がかけています。 現在の英国のBREXITについての彼の意見を聞いてみたいと
    考えるのは自分だけでしょうか? 彼の卒業したオックスフォード大学だけでなく、ケンブリッジ大学もこの件について
    沈黙を保っています。 先ず、お生まれになった英国の現状とこれからについても分析することから、日本の
    問題を論じて欲しいものです。 毎年一度は英国に行きます。 インフラへの投資が遅れているため、あちこちで
    問題が発生しています。 道路、鉄道、などの現状とプアなサービスについてもご意見を伺いたいと思います。
    例えば、ロンドン空港とロンドン市内を結ぶAONE(A1)という、リムジンバスが無くなって久しくなります。 不便きわまり無しで
    高いタクシーを使っています。 英国の光と影、製造業の凋落の原因についてもご意見を伺いたいです。
    デビットアトキンソンは英国人、議論好きな民族です。 どの国にも問題があります。 互いの良いところ悪いところを
    見つけ、あら捜しをするのではなく、評価し、反省して、国として、個人として成長するような議論をしたいものです。 

  • 桑原喜一郎 より: 2019/04/08(月) 8:33 AM

    アトキンソン氏の日本への提言についてのご意見拝見致しました 確りした分析と指摘に感心しました きっと経済分析に卓越した方なんだろうなあ ただ 私が思うのは 外国人で日本に精通している方が少ない中 よくぞ日光東照宮の修復と言う難しい仕事の先頭に立って下さった と言う感謝の思いです 修復に使う「漆」は 現在中国からの輸入物が大半です 又 漆工芸を代表する塗師(ぬし)は激減しています 漆の生産農家も減少しています 品質を落とさず修復するのはどれ程の大変な根回しと辛抱があったろう 
    日本の文化財への深い憧憬と理解が無ければ 到底出来る仕事ではありません
    日本を愛しているからこその提言だ
    私はそう思います
    分析に異論もおありかと思いますが 愛ある提言 少し目障りかもしれませんが私には 納得出来る点が多々ありました

    • 南充浩 より: 2019/04/08(月) 9:44 AM

      根本的にはおっしゃる通りだと思います。

    • 山口浩輔 より: 2021/03/25(木) 6:22 AM

      アトキンソンや竹中のような一般人が 日本政府の政策決定プロセスに関わっていることが非常に危険です
      彼の提言はもっともらしく聞こえますが 詭弁の羅列にすぎません
      彼らの目的はこれまでの 日本経済の体制を崩して 自分たちの利益誘導をしようとしています
      まして アトキンソンは日本の伝統工芸や文化遺産にたいして どれほどの認識をもっているのか 甚だ疑問です

  • 脱臼 より: 2019/12/31(火) 11:22 PM

    一応、私もアトキンソン氏擁護の立場から発言をしたいと思います。

    アトキンソン氏の最大の長所であり、彼に日本人が操られているように感じる原因は「強力なエビデンス」です。
    何しろ、ゴールドマンサックスのアナリストであり、経済分析のみで世界でもトップレベルの富豪に立った男ですので、

    アトキンソン氏が疑わしいのであれ、信奉するのであれ、多くの日本人は、彼についていける、もしくは彼より強力なエビデンス収集や、数字の分析が出来ません。ですので、結局は信じざるを得ない状況に追い込まれています。

    アトキンソン氏の意見を聞かなくてよいようにするには、日本人が、数字の分析を行い、事実に基づいた決断を出来る用になるようにしかないと思います。昭和の長い物文化を取り去らないと(´・ω・`)

  • 丘田守 より: 2020/04/20(月) 10:27 PM

    アトキンソンさんの意見は変ですね、なぜか違和感を感じてます中小企業の分け方と言い日本には本当に3〜4人規模の会社は必要ない的な意見は賛成出来ません。何故ならその会社が日本の将来の宝物です。これからの日本には必要な種子だからです。他国に対して批判すより現在のイギリスに貴重な意見の提言をお願いします。

  • 宮島将郎 より: 2020/07/23(木) 7:44 AM

    アトキンソンさんの考えに賛否両論があることは当然です。彼は議論のテーマを提供しているのです。彼に日本の事をあれこれ言う前に自分の祖国の英国のことを考えろという意見もありますが、それを言うならコロナへの対応で混乱してる日本の政治がどうなのかを考えなければなりません。われわれ国民のレベルに合った愚かな政治家たちが混乱の原因で、批判の言葉は我が身に戻ります。わたしはアトキンソンさんの問題提起を歓迎します。

  • 宮島将郎 より: 2020/07/25(土) 7:56 AM

    アトキンソンさんの発言に対して、祖国英国の現状を見てから物を言えという人が居ますが、それを言うなら今の日本の現状を先に問題視すべきです。わたしはアトキンソンさんの提言を歓迎します。

  • 高橋 より: 2020/09/09(水) 1:49 AM

    アトキンソン氏の主張や解釈に、あまり適切でない部分があるというのは同意しますが

    その中心的な主張である、日本の企業の生産性の低さと、その原因が非効率で利益も出せず賃金も労働環境も悪い中小零細(ゾンビ)企業への過剰な保護にあるという指摘は、かなり妥当でしょう。

    問題は、人手不足だった時期とは違い、増税とコロナ騒動で需要が冷え込んで雇用が悪化している現状では、改革が政治的に非常に難しいことであり
    そう簡単に規制改革や、最低賃金急上昇も、できなくなったということです。

    当面、日本の非効率な産業構造は温存され、バラマキ継続による財政悪化、そして長期にわたる貧困化は止まらないでしょう。。

    toyokeizai.net/list/author/デービッド・アトキンソン

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