消費者のお金の使い道は洋服だけではない
2016年12月14日 考察 0
この間、フェイスブックでシェアしたオペラに関する文章がある。
これがまったく洋服、和服にも当てはまるのではないかと思う。
芸術を信じて疑わない人たちへ
https://note.mu/yamanononote/n/n44c74c7e226a
文章は長いが非常に読みやすい。
別に難しい単語も使っていない。
興味のある方はクリックして全文を読んでみてもらいたい。
個人的に共感した部分を少し長いが抜粋して以下に引用する。
クラシック音楽がオペラの会場にきてくれる人を、たくさんふやしたいわけだけれど、どうしたらいいんだろうと話をしているとたまに
「オペラは素晴らしいんだから、残って当然なんだ」
とか
「いちど触れてもらえればクラシック音楽の価値は理解してもらえる」
とか
「わたしはあの前奏曲を聴くとワクワクしてきて、身体にエネルギーが満ち溢れる。音楽には力がある(だからたくさんの人もその魅力に気づいてくれるはずだ)」
みたいなことを言う人がいる。
うん、わかるよわかる。
ぼくもクラシック音楽やオペラが大好きだから、その価値はとてつもなく高いものだと思ってるし、聴けばワクワクもするしゾクゾクもする。
でも、そんなときぼくは少しだけ意地悪になるようにしている。
「え?それってほんと?いまの日本のクラシックやオペラ聴いて、楽しいってすぐ思える?ポケモンGOかプレステVRのほうが100億倍楽しくね?」
って、聞き返したりする。
——–
オペラやクラシック音楽は素晴らしいし、楽しいし、価値がある。
これは、それらを愛している、僕らの論理だ。
世間はそうは思っていない。というか、そう思っていたらコンサート会場にはすでに人が溢れている。
世間の大体の認識はこうだ。
オペラやクラシックは素晴らしい(けど退屈)
オペラやクラシックには価値がある(けど敷き居が高い)
オペラやクラシックは楽しい(なんてこと一度も思ったことないし帰って逃げ恥みよーっと)
ね。きっとこれが真実。
僕たちオペラやクラシックが好きな人はすでにコンサートへ足を運んでいる。
新たに動員したいのは、普段コンサートに来てない人たちだ。
だのに、その人たちへ「オペラやコンサートに来てください」と言うときに、こっちの理屈を押し付けてて、果たして彼らの行動は変わるだろうか。
「オペラやクラシック音楽はつまらない」というところから議論を始めないと、何も変わらないのだと思う。
——–
こういうことを言うと
「オペラやクラシック音楽は芸術だ。その崇高さを他の娯楽と同じ土俵で比べるな!」
とか言う人も出てくる。
その気持ち、よーくわかります。
でもね、現実問題そんな甘いこと言ってられない。
僕たちはね、”Twitter”や”VR”や”逃げ恥”や”君の名は。”や”ローストビーフ丼”と、消費者の可処分所得と可処分時間を奪い合わなきゃいけないんだ。
みんなが持ってるお金や時間は有限。この限られたパイをどれだけオペラやクラシック音楽に使ってもらえるのか、それが勝負。
とのことで「オペラ」という部分を「洋服」とか「和服」に置き換えればそのまま通じるのではないか。
旧大手ブランドの洋服が売れないという状況に陥っているが、そのブランドが好きな人はすでにそのブランドの商品を買っており、問題は、その旧大手ブランドが新しい顧客を獲得できていないところにある。
ためしにファッション専門学校で、「毎年『オゾック』の服を必ず買う人」とか「毎年『組曲』の服を必ず買う人」と学生に尋ねてみてもらいたい。
おそらく、手を挙げる学生はほとんどいないはずだ。
若い人がワールドやオンワードのブランドを選ぶことがかなり少なくなった。
下手をするとそれらのブランド名すら知らないという若い人も珍しくない。
現に以前このブログでも書いたが、「イネド」というブランド名は受け持った学生にはほとんど知名度がなかった。
和服にしたって同じで、興味のある人、愛好する人は長年にわたって買っているから、新しく愛好する人をどのように作るかが課題なのではないかと思う。
もちろん、無理に着用人口を増やす必要はないという意見もある。
洋服の場合は、着用人口は今後も大きく減ることはないが、かつては入門編だった低価格ブランドが、今ではほぼゴールになっており、旧大手アパレルの努力不足と相まって、百貨店や専門店を販路としたブランドが大苦戦し続けている。
業界人は「本物の良さを知れば売れ行きは回復する」とか「ファッションの楽しさをしれば売れ行きは回復する」なんていう伝説みたいなことをいまだに信じているが、それは伝説にすぎない。
このオペラの人が書いておられるように、そんな愛好家や数寄者の理屈は一般大衆には何の効果もない。
それに人気ブロガーのMB氏ではないが、現在の低価格ブランドでも十分にオシャレは楽しめる。
むろん、そればかりでよいとは思わないが、低価格ブランドの商品の見た目も15年前から比べると大きく洗練されているから、それなりにファッションを楽しむことができる。
個人的にはむしろ、低価格ブランド以上の価値を提供できなかった旧大手アパレルの怠慢ではないかと思っている。
限られた手持ち資金の使い道は洋服だけではないということだ。
ポケモンGOやらツイッターやらガンプラやら音楽やら映画やらと、限られた手持ち資金を分け合わねばならないということである。
記事中で書かれている、
オペラやクラシック音楽に興味がある人を増やしたいという作業は、僕らが望まなくても、InstagramやポケモンGOと競合を張るということになる。
なので、「オペラやクラシック音楽は芸術だから、その良さを伝え続ければ価値は理解してもらえる」という考え方は、申し訳ないけれど百害あって一利なしだ。
が真理だといえる。
「オペラ」「クラシック音楽」の部分を「洋服」や「和服」に置き換えてもう一度考えてみてもらいたい。