商品スペックを過剰に押し出した売り方は必ず価格競争に巻き込まれる
2016年11月21日 考察 0
商品はなんでもある程度の品質の高さが必要になる。
とくに日本では粗悪品は売れない。たまに売れることがあるが、それは売り方が上手かっただけで、長続きすることはほとんどない。
しかし、いくら品質の高さが必要だと言っても、品質の高さだとか機能性のみを全面に打ち出した売り方では、必ず同等の低価格品が現れ、市場を奪われることになる。
例えば
「4K」早くも値崩れが始まった DMM、50型ディスプレイで6万円
http://www.j-cast.com/2016/11/19283628.html
4Kテレビに早くも格安商品が登場したというニュースである。
まだ4K放送が始まってもいないのに、すでに値崩れしているというすさまじい現象である。
個人的には今のハイビジョン放送で十分高画質なのでそれ以上の4K、8Kというような超高画質なテレビに何の魅力も感じていないのだが、それにしてもこの状況はひどい。
おそらく、他の家電メーカーは「4Kが値崩れを始めているから当社は8Kテレビを強化するぞ」なんて思っていることだろう。しかし、すぐに8Kも絶対に値崩れする。
じゃあ次はなんだろうか?16Kとかを開発するのだろうか。
物性面、機能面、スペックだけをセールスポイントとしているからこういうことが起きる。
そして、工業製品なら必ず、同機能の低価格代替品が登場する。
これは避けられない。逆にこれがあるからあらゆる工業製品は大衆に広まったともいえる。
ちなみにジャパネットたかたの前社長のこんなインタビューもある。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161006-00000005-nikkeisty-bus_all
デジタルカメラでも同じように目先を変えることによって販売増につなげたことがあります。デジカメの出始めのころは画素競争が盛んでした。200万画素のカメラが出たと思ったら、主戦場は500万画素になり、とうとう1000万画素、2000万画素の時代になりました。数字が上がると何かよくわからないけど、高性能になったことは消費者にもぼんやりとは分かります。消費者は最初、性能の進歩を商品の良さと思っていました。
しかし、今や2000万画素を備えたカメラでも1万円しない時代です。
そこで消費者はハタと気付くわけです。カメラは一体何のためにあるのか、と。そこまで行くと消費者は自分が求めていたのは実は、カメラの性能ではないことがわかってきます。
とのことで、画素数の高さのみをセールスポイントに掲げているメーカー、店はここで軒並み価格競争に巻き込まれてしまっているというわけである。
ご理解いただけるだろうか?
コンパクトデジカメならキヤノンやカシオの有名メーカーの商品でも高画素数で7000円くらいで売っている。
単に高画素数のカメラが良いなら7000円のカシオで十分である。
筆者なら7000円のカシオを買う。なぜなら、価格重視の価値観だからだ。
さて、このブログは繊維・衣料品関係に特化しているので、そちらに照らし合わせてみる。
繊維製品、衣料品でもこのスペック重視の売り方は相当に多い。
いわく「〇〇製生地を使用しました」
いわく「日本製です」
いわく「こだわりのナンたら製法で加工しました」
いわく「〇〇機能の素材を使用しました」
ほとんどがこんな売り方に終始している。
いわゆる、「こだわりブランド」とか「高価格ブランド」に限ってこういう売り方が多い。
しかし、繊維製品の製造法や加工法なんて、追随は容易な場合が多い。
スペック、機能面だけならすぐに低価格代替品に追随されてしまう。
例えばカイハラのデニム生地といっても、それはユニクロだって使っている。
ユニクロのジーンズは3980円なのに、どうして同じカイハラ製デニム生地を使って2万円もするの?
というふうに多くの消費者は感じる。
特に「カイハラ製デニムを使用」ということのみを全面に押し出した売り方だとそうなる。
ハリスツイードも同じだし、吸水速乾機能も同じだ。
ダイソーでは500円のハリスツイードのポーチが並んでいるし、吸水速乾機能のある肌着はドン・キホーテでも290円くらいで売っている。
そういうスペックのみを過剰に重視した売り方・見せ方をしていると、確実にダイソーやドン・キホーテなどの低価格代替品にやられてしまう。
思い入れや理念ばかりを過剰に語られても偽善臭くて気色悪いが、それが一切なくスペックのみの売り方では絶対に価格競争に巻き込まれてしまう。
繊維製品、衣料品の多くは、前者か後者どちらかに非常に偏っていることが多い。
そのあたりのバランスを見直す必要が、洋服不振の今こそ必要な作業だといえる。