旧大手アパレルが不振に陥った要因
2016年11月10日 考察 0
大方の既存メディアの予想を覆してトランプ氏が米大統領選に当選した。
これによって、コメントを出した某週刊誌の記事がボツになった。
コメントを求められた時点で「トランプ氏が勝った場合は記事がさし代わりますのでご了承くださいね」といわれており、快諾したのだが、その時点で「トランプ氏勝つと思いますよ」と一言付け加えた通りになった。
トランプ氏の勝利は予想外でもなんでもなく、十分にあり得た結果だと思う。
逆にメディアによる世論誘導は最早世界的に通用しない時代に突入したことを証明したといえる。
今年に入って、英国のEU離脱、フィリピン大統領選挙、そして米大統領選挙と立て続けに既存メディアの誘導が不発に終わった。
我が国でも今夏の東京都知事選で、メディアによる鳥越俊太郎候補への誘導が不発に終わったのはその最たる例だと言えるだろう。
普段、繊維・アパレル業界で取材をしていると「業界メディアの記事はすべて信用しているわけではない」とおっしゃる方が多い。
もちろん、参考になる記事もあるが、そうでないメディアや記者の願望丸出しの記事もある。
だから業界メディアの記事は半分信用する程度で良いというのである。
それはその通りだが、実は一般メディアも似たようなものであるということで、それを今まで気が付かない人が多かったということだ。
今年に入って、一般メディアの不確かさが如実に白日の下に晒されているといえる。
それはさておき。
週刊誌に尋ねられたのが、伝統的な旧大手アパレルの不振の要因だった。
たぶんお蔵入りすることになる。
記事を書くためにはすべての要因を等しく並べることはスペース的に難しいので、1つか2つに絞らざるを得ないのだが、今回は書く側ではないので、思いつくだけすべて挙げた。
取捨選択するのは週刊誌側である。
旧大手アパレルの不振の原因を列挙してみる。
1、可処分所得が減った
2、ビッグトレンドがない
3、最新ファッションへの興味が薄れている
4、百貨店・専門店アパレルの商品の品質・デザインが低下し、
ユニクロや無印など低価格ブランドのデザイン性が向上し、見た目では見分けがつかなくなった
5、タンス在庫をたくさんすでに持っている
6、ファッション雑誌偏重の広報宣伝活動が時代遅れになっていることに気が付かずに継続していること
7、そもそもオーバーストア
8、年間の国内洋服流通量は40億点。明らかに洋服自体が過剰供給
9、トレンドがあまり移り変わらないから毎年買い替える必要がない
10、ナチュラル系、セクシー系、エレガンス系、アメカジ系、原宿系などそれぞれのファッションジャンルが確立され、ファッションが多様化したから
ざっと10点であり、重複している部分もあるが、この10点に関して異論のある人は少ないだろう。
10点すべてをカバーする施策を打てるブランドは存在しない。
逆にすべてをカバーしようとすればそのブランドはすぐさま機能不全に陥って破綻するのではないかと思う。
例えば、「可処分所得が減っている」ことに対する答えは、買いやすい値段の物を提供することであり、これを実践したのがユニクロであり無印良品であり、しまむらでありハニーズだったということになる。
例えば、苦戦傾向が著しい旧世代アパレル(ワールドやオンワード、三陽商会など)のファッション雑誌偏重は最早末期状態であり、広報宣伝活動がほとんど機能していないというのが実情である。
現在はウェブ、SNSを使った活動がマストだが、旧世代アパレルはほとんど対応できていない。
その結果、ファン層は30代半ば以上の中高年層に固定化されてしまい、若年層からの認知度が極端に低下している。
今必要なことはこの10点の要因のうち、どれとどれに対応するかを自社と自社ブランドの現状と照らし合わせて考えるべきなのではないか。
売り上げ規模の拡大だけが正解ではないが、利益を獲得できないことには企業活動そのものが続かない。
赤字が続けば企業は倒産してしまう。
じゃあ、自社または自社ブランドの現状をしっかりと把握して、方向性を定めて10点のうちのどれとどれに対応するのかを決める必要がある。
「物作りガー」とか「ファッションって楽しいィー」とか「クリエイティビティーをー」とか「感性をー」なんていうフワっとしたスローガンを掲げるだけでは沈没してしまった旧世代アパレルが浮上することはできない。
本当に浮上したければ、今こそ冷徹な理論が必要なのではないか。
今までさんざんフワっとしたことはやりつくしたのではないか?その結果が今の体たらくなのではないか?