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南充浩 オフィシャルブログ

ボブソンが負けたのはファストファッションではない。すべての国内アパレルに負けたのだ

2011年5月3日 未分類 0

 昨日、ジーンズメーカー、ボブソンが民事再生法を申請した。

「株式会社ボブソン民事再生法の適用を申請 負債7億3400万円」

http://www.tdb.co.jp/tosan/jouhou.html

http://www.sinyo.co.jp/sokuhou/sokuhou.htm

帝国データバンクと、信用交換所の記事では
少し内容が異なる部分もある。

ボブソンは岡山の老舗ジーンズメーカーだったが、2009年10月にマイルストーンターンアラウンドマネジメントに売却され、新生ボブソンとしてスタートを切ったばかりだった。
ちなみに、「オシュコシュビゴッシュ」の子供服の製造販売を手掛けていた旧ボブソンは、ピーチフォートと社名を変えて営業を継続している。

信用交換所によるとピーク時は年商200億円あったというが、2009年5月期には年商75億円にまで落ち込んでいた。このため、マイルストーンターンアラウンドマネジメントに会社売却となった。
また帝国データバンクでは、ピーク時の年商は記されていないものの、2005年5月期には128億円の年商があったと報じられている。

売却後の2010年2月期は決算期変更の変則決算であるが、7億300万円の年商があった。
7か月の変則決算で7億円ということは、12カ月分に換算してみると10億円前後になるだろうか。
しかし、2005年に128億円の年商があったメーカーが、その5年後には10億円前後にまで落ち込むとは、あまりにも急激すぎて驚くほかない。

今回のボブソンの報道でもっとも気にかかるのは
「しかし、近年はいわゆるファストファッションなどによる激安ジーンズの登場により価格競争が激化し、販売不振から当社へ事業を譲渡」という一節である。
ボブソンの売上高が年々急激なペースで落ち込んだのはファストファッションや激安ジーンズの影響ではないからである。とくに激安ジーンズの登場は2009年秋からであり、その時にはすでに年商75億円にまで落ち込んでいた。またファストファッションの影響でいえば、H&MやZARA、フォーエバー21はボブソンの売上高をすべて奪うほど日本での売上高は大きくないし、彼らが日本に上陸する前からボブソンの売上高は急激に落ちている。

ボブソンが負けたとするならユニクロと、それ以外のすべてのアパレルがジーンズを扱いだしたからである。
現在、ユニクロはさておき、ワールドもオンワード樫山もファイブフォックスも三陽商会もサンエーインターナショナルも大手総合アパレルのブランドのほとんどすべてがジーンズを扱っている。それも自社オリジナル企画としてだ。
また中小アパレル企業のブランドでもそのほとんどにジーンズがある。

そのほか、各セレクトショップに自社企画のオリジナルジーンズがあり、クオリティはそこそこに高く、ジーンズ専業ブランド商品にこだわる必要は、あまりない。

かつて、ほんの10年ほど前までは、ジーンズというアイテムは閉ざされた特殊な業界から生み出されていた。
いわゆる専業メーカーとそうでないアパレルが製造するジーンズには見た目や形、生地の風合いとそのすべてで大きな差があった。
御存知のように専業メーカーの多くも岡山県の児島・井原と広島県の福山市周辺に本拠地を構える。
また徳島や山口には専業メーカーの自家縫製工場がある。
例外は、リーバイ・ストラウス・ジャパンが自家縫製工場を持たないのと、エドウィンが自家縫製工場を東北に構えていること、量販店レディースジーンズのコイズミクロージングが本社を大阪に置いていることくらいだった。

しかし、2000年以降、とくに2005年以降の大手総合アパレルのジーンズと専業メーカーの商品との差があまり大きくなくなってきた。なぜなら、専業メーカーのOBや早期退職独立組が、大手アパレルのジーンズを製造請負するようになったからである。現在ではこのOB、独立組の製造請負業者はかなりの多数に上っており、今では中小アパレルでも気軽に1型100枚くらいからジーンズの製造依頼ができる。

OB、独立組はかつてのジーンズ製造ルートを知り抜いているため、生地、縫製、洗い加工場とそのすべてを専業メーカーと同じところを使用することが可能となっている。
例えば、国内最大のデニム生地製造メーカー、カイハラの生地だって、小ロットでも使用することは可能で、有名国内生地メーカーの生地を少量ずつストックしている小規模生地問屋も存在する。

かつてビッグジョンの尾崎篤社長は「専業メーカーからのOBや独立組が増えて、それらがジーンズの製造請負をするようになって、ジーンズの製造ノウハウが流出してしまった。今では我々専業メーカーと、その他アパレルとの差がなくなっている。専業メーカーの優位性はなくなった」と指摘されているが、まさにその通りの状況である。

それにしても、売却した大人向けのジーンズ製造販売のボブソンがわずか1年半で経営破綻したのに対し、子供服の製造販売に専念した旧ボブソン(現社名ピーチフォート)が営業を続けているのは、何か皮肉な物を感じる。

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