低価格ブランドがスーピマコットンTシャツを製造販売できる理由
2016年7月19日 お買い得品 0
ユニクロでスーピマコットンTシャツが販売されていることはよく知られている。
そういえば、何年か前は、ユニクロでプレミアムコットンのTシャツやポロシャツが売られていたが最近は見かけない。それがスーピマコットンに代わったということだろうか?
さて、夏のバーゲン売り場を歩くと、今夏のメンズブランドのTシャツは素材に着目したものが多いことに気が付く。
ユニクロと同じくスーピマコットンをTシャツやポロシャツに使用しているのがグローバルワークである。
またコーエンはギザコットン、アメリカンコットンを使ったTシャツを販売している。
いずれのブランドも低価格の範疇に属しており、その差別化の一端として希少性の高い(といわれる)素材を使用することになったのだろう。
また、Tシャツというアイテムは、細部はさまざまあるが、見た目はほとんどどのブランドもあまり変わらない。
明らかに差別化を訴えるのはこれまで色・柄だった。
しかし、色・柄の差別化も行きつくところまで行っているから、次の差別化の手段としては、使用素材での差別化ということになったのではないかとも思う。
そういえば、少し前まで無印良品では新疆綿のTシャツやポロシャツが販売されていた。
ところで、スーピマコットンとはなにか?
コットンUSAのページから引用する。
アメリカ綿は品質の良さで知られていますが、
なかでももっともグレードの高いのが「スーピマ綿」です。
スーピマは、“Superior Pima(高級ピマ)”を略したもの。
もともとアメリカ大陸では、南米ペルーでピマ種の綿花が
栽培されていました。
その綿花を中心に品種改良されたのが
スーピマ綿で、この名称は、アメリカスーピマ協会の登録商標になっています。
スーピマ綿は、繊維長35mm以上の超長繊維綿です。
繊維が細く長く、しかも長さが均一で、強く、耐久性に優れています。
また、しっとりと柔らかい肌ざわりはカシミヤに匹敵すると言われているほど。
製品になったときの独特の光沢も魅力です。
とのことでカシミヤに匹敵するかどうかは置いておいて、スーピマコットンを使った生地は光沢がありソフトなことは事実である。
ここで、綿についてのおさらいだが、コットンは綿花から作られる。
採取されたばかりの綿花はタンポポの綿毛みたいな感じである。
その綿毛みたいなのを紡いで(これが紡績)、綿糸にする。
この綿毛みたいなものの1本当たりの長さを繊維長(せんいちょう)という。
繊維の長さだから繊維長というわけだ。
で、綿花の種類や栽培する地区の気候によって繊維長の長さは異なる。
アメリカのピマ綿はもともと繊維長が長かった。
南米のアスペロ綿は繊維長が短いことで知られている。
繊維長の長い綿を長綿(ちょうめん)と呼ぶ。
スーピマはそれをさらに長くしたから超長綿(ちょうちょうめん)と呼ばれる。
筆者の入った業界新聞は素材分野が強かったし、筆者も入社当初は紡績各社を回ったこともあるので、
長綿とか超長綿とかいう言葉を一番最初に覚えた。
文字で書かれるとなるほどと思うのだが、一番最初に音だけで聞かされたときは、チョウチョウメンは蝶々綿かと思った。
綿花は一般的に繊維長の長いものほど高級とされる。
理由は、それを使って生地を作るとソフトで光沢感があるからだ。
また昔は繊維長の長い綿の存在が希少だったということもある。
だからスーピマは長い間、高級綿とされていたということとである。
コーエンのTシャツに使われているギザ綿も同じ超長綿である。
スーピマがアメリカなら、ギザはエジプトの綿花である。
じゃあどうしてユニクロはスーピマコットンを使ったTシャツを1000円で販売できるのか。
そんなに希少だというならユニクロだけでなくグローバルワークでも使えるのか?
コーエンがなぜギザ綿を使えるのか?
もちろん、ユニクロが想像を絶するほどの大量生産をしているから、一枚当たりのコストが下がってその値段で売れるという背景はほかのアイテムと変わらない。
が、以前、カシミヤニットでも書いたように、材料そのものが高級でもその使用量さえ少なくすれば比較的低コストで製造することができる。
綿花1グラム=10円だったと仮にする。
これを100グラム使ってTシャツを作ると、生地代は1000円になる。
一方、30グラムだけを使ってTシャツを作ると生地代は300円で済む。
当然、100グラム使って作られたTシャツは生地が肉厚だが、30グラムのTシャツは生地が薄くなる。
カシミヤだってシルクだって同じやり方で生地代を抑えることは可能だ。
ギザ綿だって同じ理屈だ。
筆者がユニクロのスーピマコットンTシャツを見ると、明らかに生地が薄い。
プレミアムコットンを名乗らせていた過去の商品よりも生地が薄いと思う。
もちろん1000円はコストパフォーマンスが高いのだが、多汗症か更年期障害かわからない汗っかきの筆者にとっては、ユニクロのスーピマコットンTシャツは真夏に着るには頼りないと感じる。
それにしてもスーピマコットンやらギザ綿やらを低価格ブランドまでが使う時代になった。
「こだわり素材を使っているからうちは品質が良くて高価格」なんて言っていたブランドは、より異なる打ち出しを求められることになる。
リバティプリントにしてもそうだ。ユニクロではリバティ社と契約したプリント柄シャツが1290円で投げ売られている。
もう使用素材だけで差別化、高級化できる時代ではない。
いわゆる「こだわりブランド」はそろそろ別の打ち出しを考えなくてはならない。
もしくは素材についてもっと詳細に語るかのどちらかである。
なかなかやっかいな時代になったものである。