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南充浩 オフィシャルブログ

売れたいなら商品デザイン・見せ方・売り方を変えろ

2016年6月16日 産地 0

 自社製品開発に苦慮する製造・加工業者の参考になりそうな記事を見つけたのでぜひご一読いただきたい。

阪神にも勝る?ナニワ手ぬぐいの「超変革」
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16nv/040100005/060900007/

注染の手ぬぐいの話である。
ナカニという会社の変革を取り上げている。ちなみにこのナカニとは面識がない。

4つのポイントが解説されている。

【メソッド1】生産効率よりも( 職人育成 )が品質向上に繋がった
【メソッド2】( タブー )をオリジナリティーとして商品化
【メソッド3】様々な( 楽しみ方 )を提案し裾野を広げる
【メソッド4】作り手と使い手が( 価値 )を共有する場を設けた

とある。

メソッド1は、これまで分業体制だったのを職人一人が一つの商品の完成まで担当するように変えたというのである。
これによって、職人のモチベーションが上がり、品質向上につながったとしている。

筆者は実はこのメソッド1はケースバイケースなので他の製造・加工業に必ずしも適しているとは思わない。
モチベーションと品質向上は重要だが、それだけで事業結果が好転するとは思わない。
旧態依然とした商品を作り続けていれば、いくらモチベーション高く製造しても売れるものではないし、品質が良いんですといったところで売れない。

それよりも商品のデザインや見せ方、売り方を変えるべきである。
その上でのモチベーションと品質である。

個人的に他の製造・加工業が参考にしやすいのは2~4のメソッドであろう。

メソッド2は注染ではタブーとされてきた「にじみ」をデザインとして取り入れたことである。
これで色柄のデザインが一新された。

メソッド3で紹介されているのは、見せ方である。
10年くらい前にケーキに見えるタオルケーキという商品が発売されて大ヒットした。
瞬く間に各タオルメーカーに広がって今ではその亜流みたいな「野菜に見えるタオル」とか「花に見えるタオル」なんていうのも発売されており、すっかり定着した。
当たり前だが永遠に売れ続ける商品なんていうのはないから、目新しさがなくなると沈静化するのは当たり前である。

ここで紹介されているのは、タオルケーキならぬ「アイスキャンディー手ぬぐい」である。
アイスキャンディーみたいに見えるような陳列方法と、手ぬぐいの色柄に特徴がある。

p6

(記事に掲載されたアイスキャンディー手ぬぐいの画像より)

また、12枚でセットになったカレンダー手ぬぐいである。
1か月ごとのカレンダーが書かれており、その月が終わると手ぬぐいやランチョンマットとして使えるそうだ。

この2つは「商品のデザイン」と「パッケージング」を変えたということである。
古臭い商品のくせに、デザインも売り方も何も変わらずに売れるようになろうと考えることが間違いである。
売れるように変革すべきで、変革できない・したくないなら売れるようになろうとは思わないことである。

メソッド4は工場見学とか工場での体験である。
これも各業者が取り入れつつある手法で、製造現場を見たり体験したりすると、やっぱり理解が深まる。
理解が深まれば興味も湧くからリピーターになりやすい。

いわゆる「物」だけを販売するなら、それは価格とスペックの勝負にしかならない。
筆者の買い方はこれである。別に共感とか心の交流とかそんなものに興味はないから一番安くて、見栄えのデザインも含めたスペックの高い商品が買えればそれでいい。

ガンダムのプラモデルは店頭に行って、価格コムをスマホで見て、一番安いところで買う。
ネット通販のほうが安ければそこで買うし、店頭のほうが安ければそっちで買う。
同じ商品なのだから1円でも安いところで買ったほうが得である。
「物」だけを売るというのはこういうことである。

しかし、そういう消費者ばかりではない。

共感とか情緒に訴えられたい消費者も少なからずいる。
もしかしたそちらのほうが多いかもしれない。
じゃあそういうマス層に向けて売るためにどうするかというと、工場見学とか工場体験というのは一つの有効な販促になる。

いくら「伝統の技法が」とか「伝統商品が」といったところで売れなければ何にもならない。
そのまま滅ぶ。
滅びたくなければ、商品のデザイン、売り方、見せ方を変革して売れるようにする必要がある。

売れて存続できて初めて「伝統」を次代に伝えられるのではないか。
何も自らが変わることをせずに存続し続けようとするのは果たして正しい「伝統」といえるのだろうか。
個人的にはそんなものは「伝統」でもなんでもなくて単なる怠慢ではないかと思う。



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