大手追随では小規模専門店に勝ち目なし
2016年4月19日 考察 0
こんな筆者でも毎シーズン各社の展示会を覗く。
小規模アパレルブランドや独立系デザイナーズブランドの展示会でよく耳にする言葉がある。
この手のブランドを仕入れるのは大概が小規模専門店なのだが、そこのオーナーやらバイヤーは「〇〇が仕入れたならうちも仕入れたい」という。
そしてこの〇〇には伊勢丹新宿店やらユナイテッドアローズやらナノユニバースやら阪急百貨店うめだ本店やらの大手百貨店や大手セレクトショップの名前が入る。
これを横で聞きながらいつも「この店、あほちゃうか」と思う。
坪数が10坪程度の小規模専門店が大手有名店の後追いをしていては永遠に勝てるはずない。
下手をするとさらに「選ばれない店」になる可能性もある。
よくいわれる「ランチェスターの法則」では、
大手は物量を生かした追随戦略が有効とされる。
小規模企業は、個性を発揮した一点突破が有効とされる。
この10坪程度の個人商店は紛れもなく小規模企業である。
零細企業と言っても良い。
その零細企業が大手に追随してどうするのか。
その行動に意味があるのか。
例えば超人気のAブランドがあったとする。
このAブランドを伊勢丹新宿店が仕入れて(買い取りか消化仕入れかはここでは置いておく)コーナー展開をしたとしよう。
展開するコーナーに並べる型数は20~30型。
展開型数の少ないブランドならフルラインナップがそろう。
これを聞きつけた10坪程度の小規模専門店が同じAブランドを仕入れたとする。
しかしこの専門店はAブランドだけを扱うわけではない。
店全体では5~10くらいのブランド数を扱い、Aブランドはそのうちの1つということになる。
当然、この店で展開できる型数はせいぜい3型程度だろう。
多くて5型か。10型を越えることは不可能だろう。
そうなると消費者はどちらで選ぶか?
当然たくさんの型数が見られて、ネームバリューのある伊勢丹新宿店で買う。
わけのわからん、わかりにくい場所に位置する小規模専門店にわざわざ行く人は少ない。
その上に展開型数でも圧倒的に少ないのだから、訪れる人はさらに少なくなる。
知名度・展開型数・店のロケーションなどの条件面だけ見れば、伊勢丹新宿店よりもこの小規模専門店を選ぶ人は皆無だろう。
阪急うめだ本店でもユナイテッドアローズでも同じことだ。
条件面だけで見れば小規模専門店が選ばれる要素は皆無である。
こういう「逆ランチェスターの法則」を発動させる小規模専門店は展示会場で見ているかぎりけっこう多い。
ただでさえアパレル商品は不振であり、何の創意工夫もない小規模専門店はもっと厳しい状況にある。
それ故に大手の威光に縋りつきたくなる気持ちはわからないではないが、それはさらに自店の売れ行きを鈍らせることになる。
大手の追随しかできない小規模店なんて消費者からすれば存在価値はほとんどない。
だったら大手で買った方が展開型数も多いし、アフターケアも安心できる。
何よりも安心感がある。(実際に安心・安全かどうかは別として)
しかし、展示会場を見る限りこんな小規模専門店はまだまだ多い。
逆にそういう店の方が増えているのではないかとも感じることもある。
逆ランチェスターの法則を発動している限り、小規模専門店の倒産・廃業はまだまだ続くだろうし、大手の寡占化はさらに進むだろう。
自業自得ともいえる。