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南充浩 オフィシャルブログ

反ファストファッション論者は現在のランドセルを擁護すべき

2016年3月28日 産地 0

 ランドセル、学生服の値段の高さに疑問を呈する記事を最近見かけた。

例えば西日本新聞。

ランドセル、家計に重荷 無料で配布の自治体も
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/233623

元記事を読んでもらえればわかるが、見出し通りにランドセルの高価格に疑問を呈している。
筆者はこの記事を「家計負担を軽減するためにもランドセルをもっと低価格にするか、ランドセル通学を廃止にすべきだ」と読めた。

筆者はランドセル通学や学生服が現在の状況で続こうと、廃止されようとどちらでも構わないのだが、大手新聞社の「善意の発露」によるこういう安易な値段引き下げ論は、産業維持の観点からするといかがなものかと思う。

とくに、昨今、アパレル・ファッション産業では、低コストの発展途上国で生産する低価格衣料品に反対する声があるが、その動きに賛同する人が、大手新聞社の安易なランドセル叩き・学生服叩きに賛同することは言動不一致も甚だしいと言わねばならない。

近年、中国生産のランドセルも増えてきたが、ランドセルの多くはいまだに国産である。

原材料の産地と製造工場(ランドセル)
http://matome.naver.jp/odai/2143320838297343401

これは2014年時点での一覧表である。
シェアナンバーワンといわれるセイバンのランドセルは兵庫県産である。
兵庫県はランドセル生産のシェアでは圧倒的であり、44%前後を占めるという。

「国産品を守ろう」「低コスト生産による低価格販売をやめよう」と主張する人々が理想とする製造・販売体型が完成されているのがランドセルだといえる。

最低でも2万円くらいはする。
高額なものになると10万円前後になる。

筆者にも3人の子供がいるが、もうすでに3人とも小学校を卒業してしまった。
金のない筆者は3人にだいたい税込3万円前後(当時)の価格の「トップバリュ」のランドセルを買い与えたが、6年間使用してもほとんど劣化することなく、まだまだ使用に耐えられるくらいだった。
30年強前、筆者が使っていたランドセルは卒業時にはボロボロになっていたからこの間の素材の品質向上には目を瞠る物がある。

2014年の記事だが参考にしてもらいたい。

中国から大量注文の「ランドセル」シェアトップは播州の企業…秘密は日本でしか作れない機能性
http://www.sankei.com/west/news/141230/wst1412300013-n1.html

ファストファッションや低価格SPAに反対する人なら、高価格高コスト製造を守り続けているランドセルは当然擁護すべきである。
それができないというなら、それは単なるご都合主義だろう。
彼らのいう生産体制を推し進めればランドセルのような形にならざるを得ない。
もし、ファストファッション否定論者がランドセルの現状を否定するなら、その主張には何ら説得力はない。

それにしても西日本新聞のナンセンスぶりには恐れ入る。

70年の6千円が、2014年には約4万2千円と7倍になった。

という一節があるが、46年前の物価と比較して何の意味があるのか。
なら46年前と現在の平均初任給はどうか。
おそらく7倍以上に初任給は増えているはずだ。
まったくバカバカしい。アホかと思う。

少子化と言われているが、だいたい毎年100万~120万人の子供が生まれている。
現在の小学生も各学年にそれくらいの人口が存在するということになる。
市場規模は毎年100万人で減ることはないが増えることもない。そういう市場である。
その限られてはいるが、必ず買うという100万人限定市場に対して、衣料品のように「価格破壊」させることが果たして適切か。
ランドセルの値崩れ、ランドセル廃止になれば、その製造・販売業者が倒産・廃業になる。
とくに国内製造業者は倒産ラッシュだろう。

筆者はランドセル業界と別に利害関係はないからどうなろうと知ったことではないが、「国産」とか「モノヅクリガー」と叫んでいる人たちはランドセルに関しては「値崩れせよ」と考えているのだろうか。
もしそうなら、その言動にまったく整合性がない。

学生服に関しても似たような状況である
学生服メーカーでは国産を守り続けている企業も多い。
国産で新規参入も少ない業界だから当然高価格が維持される。
やみくもな「価格破壊」やら「制服廃止」はそういう企業、工場を倒産・廃業させることになるが、反ファストファッション論者はそれは無視するのか。

ランドセル業界にも学生服業界にもまったく利害関係がないからどちらの業界がクラッシュしても筆者は一向に構わないが、「国産の物作りを守りたい」とか「ファストファッションは絶対悪」と考えている人こそ、ランドセル業界・学生服業界を守るべきだろう。彼らの理想形を体現しているのがランドセルであり学生服なのだから。




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