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南充浩 オフィシャルブログ

学校の見映えのために学生は就職するのではない

2016年3月16日 ファッション専門学校 0

 イベント会場などでファッション専門学校生と言葉を交わす機会がある。
昨日終了した阪急百貨店うめだ本店でのテキスタイル・マルシェでも専門学校生とチラホラと言葉を交わした。

今春から就活に臨む学生さんが何人かいたが、学校の就職課から提示されるのは、いわゆる「アパレルメーカー」「SPAブランド」ばかりだという。

販売員志望ならそれでも良いが、デザインやパターンなどいわゆる「企画」系なら、そこは狭き門である。
アパレルメーカーの多くは経費削減で自社内での企画系の人員を減らしている。
かつて隆盛を誇った大手アパレルの多くも、新入社員を採用するよりリストラを優先せざるを得ない状況にある。
SPA系なら一部を除いてほとんどデザイン、パターン担当者はいない場合が多い。

有名セレクトショップなんてデザイン、パターン担当は皆無である。

そういう「狭き門」へ挑戦することを不要とは思わない。
若いうちに挑戦するのは良いことだと思うが、現実的に就職をさせるのなら、そういう先ばかりでなく、OEM・ODM企業や紡績・合繊メーカー・総合商社の製品事業部なども合わせて学生に提示するべきではないか。

アパレルメーカーやSPAブランド、有名セレクトショップがこれほど企画系の人員を抱えないにもかかわらず、それらの店頭に商品が溢れかえっているのは、OEM・ODM企業や製品事業部が企画製造を請け負っているからである。

OEMは本来は生産を請け負うだけだが、現在ではデザインやパターン作りまで請け負っており、アパレル業界のOEMはほとんどの場合がODMと同義になっている。

また、紡績・合繊メーカー・総合商社には製品事業部があり、製品の企画製造を手掛けており、大手チェーン店などへの商品供給はこれらが担っている。
さらに製品事業を手掛ける子会社を所有している場合も多い。

となると、デザイナー、パタンナー志望の新卒採用はこちらの方が可能性が高いということになる。
学生側も正式なキャリアとして「〇〇ブランドで働いていました」ということはできないが、実質的に商品のデザイン、製造はこういう先に就職した方がノウハウが蓄積できる。
丸投げばかりするような先に入ったところで蓄積できるノウハウは「丸投げとインスパイア(笑)」することだけである。

例えば、紡績系だと

東洋紡
日清紡
クラボウ
シキボウ
ダイワボウ

合繊メーカー系だと

東レ
帝人フロンティア
旭化成せんい

商社だと

伊藤忠
丸紅
三井物産
三菱商事

などが挙げられる。(ほかにもまだまだある)
そしてこれらの多くは上場しており、福利厚生はそれなりに厚い。

一部の大手生地商社も現在では生地を抱き合わせ販売するために製品事業部を持っているが、福利厚生や待遇はこういう上場企業系には及ばない。

上場企業はいわば、公器だから、なるべく法令違反をしないように心掛けている。
もちろん例外はあるが。
いわゆる、非上場の「私企業」よりも法令順守が求められる。

で、学生に尋ねると、こういうことは学校の就職部・就職課では聞いたことがないという。

正直にいってそういう学校側の体制はいかがなものかと思う。
専門学校は就職させてナンボである。
販売員にばかり就職させてもその多くは使い捨てみたいにされるし、待遇も良くない。
おまけに販売員がキャリアとしては今のところ認められることが少ない。

学校側からすれば有名なアパレル、ブランドに就職させた方が見映えが良いのだろうが、学校の見映えのために学生は就職するのではない。
それに販売員になりたいのなら、専門学校なんて行く必要もなく、短大や4年制大学からでも就業することができる。むしろそういう販売員の方が初任給が高いし、就職後3年から5年くらいで退職しても違う業界へ転職しやすい。筆者が親なら将来への保険のために4年制大学を勧める。

デザイン・パターンを仕事にしたいと考える学生には、見映えも大事だが、実質的な企画・製造を手掛ける企業を勧めるべきではないのか。



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