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南充浩 オフィシャルブログ

同じ商品なら人間は安い方で買う

2016年3月9日 考察 0

 先日、道端でばったりと懐かしい方にお会いした。
3年ぶりか4年ぶりだろうか。仕事の環境が変わられたことは小耳に挟んでいた。

新事務所にお邪魔してあれこれと雑談をさせていただいた。

本当に近況報告会という感じの雑談だった。
その中で、「ぼくは、最近ヤフオクで洋服を競り落とすことがほとんど。店ではあんまり買わなくなった」とおっしゃった。

ヤフオクとはYahooオークションである。念のため。

そういえば、筆者の友人も趣味の道具をメインに、たまにダウンジャケット類をヤフオクで競り落とすという購買をしていることを思い出した。
この友人もあまり店で服を買わない。

ちなみに両者とも50代以上の年配層である。

先日、フリマアプリのメルカリが84億円の資金を調達したというニュースがあった。

フリマアプリ「メルカリ」が約84億円を調達–海外展開を加速
http://japan.cnet.com/news/business/35078804/

フリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリは3月2日、総額約84億円の資金を調達したことを発表した。出資したのは、三井物産、日本政策投資銀行、ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合、および既存株主であるグロービス・キャピタル・パートナーズ、World Innovation Lab(WiL)、グローバル・ブレイン、同社経営陣など。

メルカリは、スマートフォンのカメラで商品を撮影するだけで、簡単に出品できるフリマアプリ。ダウンロード数は日米で合計3200万(日本:2500万、米国:700万)、月間の流通額は国内で100億円超に達しているという。

とのことであり、国内の年間流通額は1200億円ということになる。
諸々の要素はあえて考慮せずに単純比較すると、着物市場の3分の1よりも大きい規模である。
着物の市場規模は年間3000億円内外だ。
それなりの市場規模だといえる。

ZOZOTAWNもZOZOフリマを開始している。

一方、LINEはフリマアプリ「LINE MALL」からの撤退を発表している。

ヤフオクも含むフリマ市場というのは、バカにできない大きさの規模になりつつあるようだが、だからといって「単に開始しました」だけでは上手く行かないようだ。
日本では圧倒的なユーザー数を誇るLINEはフリマ市場への参入に失敗している。
単に知名度の高さだけでは成功しないことが証明されたといえるだろう。

それはさておき。

筆者よりも年上の知人、友人がヤフオクを愛用する理由はなにかというと、「高額なブランドが安値で手に入る」ところにある。

たとえば、定価で2万円~3万円するようなイタリアカジュアルブランドのセーターが3000円とか5000円で落札できる。
有名スポーツブランドのスニーカーも3000円内外だ。
商品によっては1000円台のものもある。

支払う金額は、ユニクロやABCマートで支払う金額と同じ水準である。
同じ水準でありながら、有名ブランドの商品を購入できる。
それはお得感がある。筆者だってユニクロと同じくらいの金額でそういう商品が手に入るなら、そちらの方が価値感が高いと思ってしまう。

LINEは失敗したが、メルカリの年間流通額が1200億円にまで成長したということは、彼らと同様の心理の消費者が多いということだろう。

要するに、「同じ商品なら安い方で買いたい」と考える消費者が増えたということである。
増えたというより消費者は常にそう考えており、それを実現できるツールが身近に出現したから利用していると考えた方が正しいだろう。

実も蓋もない言い方をすると、消費者は同じ商品なら安い方で買いたいと思っているし、できればタダで手に入れたいと思っている。これは洋服に限らず食品でもなんでも同じである。

以前は、ブランド物はバーゲンやアウトレットで安く手に入れるほかなく、それ以外はユニクロや海外ファストファッション、国内低価格ブランドの代替品で折り合いをつけていたが、LINEの失敗はともかくもヤフオクやフリマアプリで、ブランド品そのものを常時格安で入手できるようになったといえる。

この消費市場は今後、さらに成長すると考えられる。
もちろんどこかで限界点には達するだろうが。

こうなると、いわゆる「ブランド物」を定価販売していた従来型の洋服店はどうするのだろうか?

少し以前から低価格代替品の脅威にさらされ、そこに加えて、今後は、ブランド物の中古市場の成長という脅威にもさらされる。
わざわざ出かけなくてはならなかった古着屋よりも手軽にいつでも見られるインターネット市場なので、利用者は古着屋の比ではなく増える可能性が高い。

もう「うちはブランド物を売ってるから」というスタイルだけでは太刀打ちできなくなる。
店としてのスタイル提案、強固なファン作り、それがないとインターネットフリマにお客を根こそぎ奪われるだろう。

よほどの強固なファンを作っていない店以外は淘汰されてしまうのではないか。

低価格代替品の場合はあくまでも「代替品」である。
店側・ブランド側も「あれはあくまでも代替品」という説明ができたが、インターネットフリマに出品されているのは紛れもなく「ブランド物」であり、それが定価の10分の1くらいの値段で取引されている。

商品は同等、価格と手軽さでは絶対に勝てない。

さて、どうする?

ブランド側におんぶにだっこのような店は確実に負ける。
何の工夫もない、いわゆる凡百な店が存続するのはかなり難しくなってきた。



 


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