イッツの解散、イトキンのブランド廃止
2016年2月4日 経営破綻 0
国内の倒産件数は低水準に推移しているが、アパレルの倒産件数は2年連続で増加している。
今年も新年早々に大手の解散、ブランド廃止が次々に発表されている。
イッツインターショナルが解散 事業はフランドルが吸収
https://www.wwdjapan.com/business/2016/01/27/00019432.html
アパレルメーカー大手のフランドルは、SPA(製造小売り)ブランド「イッツインターナショナル」を展開する子会社イッツインターナショナル(以下、イッツ)を吸収合併する。1月26日付の官報で開示した。今後はフランドルの一事業として運営する。
イッツはフランドルを中心に住金物産(現日鉄住金物産)、帝人グループ、フェニックス・ホンコンの4社が出資して2009年に設立。後にクラボウが加わった。大手素材メーカーや商社が一致団結した”オールジャパン型SPA”として、高付加価値素材を使ったベーシックアイテムを手ごろな価格で提案することで、当時マーケットを席巻していたファストファッションとの差別化を目指した。
とある。
イッツは15年2月期に2億5000万円の純損失を計上したと報じられているが、開始から5年間ずっと赤字続きだったと聞いている。
立ち上げの2010年に旗艦店となる原宿店を開設したがこの店舗は早々に閉店している。
現在は21店舗残っているされているが、今後は店舗数が減ることはあっても増えることはないだろう。
「日本の物作り」に焦点を当てつつ、中間価格帯を打ち出したイッツの取り組みは個人的には注目していた。
しかし、何度か売り場を見た感想を言うなら、その「思い」とターゲット層がマッチしていなかったと感じた。
このブランドは明らかにレディースが主体。
アイテム数の比率からしても売り上げ構成比はレディースが7~8、メンズが2~3割というところだろうと推測できる。
もしかしたら9:1くらいの比率かもしれない。
「〇〇産地の〇〇織り」「〇〇にこだわった〇〇素材」
こんな風に各素材、産地を説明した大型のPOPも取り付けられており、説明しようとする意思は感じられた。
しかし、この販売方法で心に響くのは女性ではなく男性である。
女性向けブランドなのに販促手法は男性向けなのである。ここにミスマッチがあった。
また原宿店を旗艦店としたが、このブランドのターゲット層は明らかに30代以上の女性である。
商品テイストはコンサバトラッドだ。
原宿という土地は、30代以上のコンサバトラッドファッションを好む女性が多く立ち寄る場所だろうか?
明らかに違うだろう。
原宿でその狙いで成功しているブランドがあるだろうか。
明らかに、「思い」とターゲット層がずれている。
旗艦店を原宿という土地に出店したことも失敗を印象付ける補強材となったのではないか。
あまりにも安易に出店場所を決めすぎたのではないかと感じられる。
物作り系ブランドにありがちな失敗といえる。
それにしても日鉄住金は繊維事業を急速に縮小させている。
遊心クリエイションの会社清算に続いてイッツの解散である。
もともと金属商社だが、全般的に不振が続く繊維事業なんてやっていられないというところだろうか。
この判断は正しい。得意分野に集中した方が効率的といえる。
消費不振の続く繊維事業なんて日鉄住金に限らずどんどん切り捨てれば良いのである。
続いてはイトキンのブランド廃止である。
業績低迷「イトキン」複数ブランド終了へ シンシアローリーの婦人服ライセンス事業も撤退
http://www.fashionsnap.com/news/2016-01-28/itokin-brand/
総合アパレル大手のイトキンが、春にかけて複数のブランドや事業を終了する。ウィメンズ向けの「シンシア ローリー(Cynthia Rowley)」と「グレイセラ(GRACERA)」は秋冬商品、男女複合の「ヒアーズ(HERE’S)」は2月発売の商品がラストコレクションで、各店舗は順次閉鎖される。
25~30歳がコアターゲットの「シンシア ローリー」は、婦人服ライセンス事業を1月末で終了。昨年11月末でオンラインストアは閉鎖されており、各都市の百貨店などに展開する22店舗も2月8日までにクローズする。
同じくウィメンズブランドの「グレイセラ」も2015年秋冬商品で販売を終える。同ブランドはシニア市場の開拓を狙い、イトキンのベテラン勢を集めて2014年8月に設立された会社イトキン メビウスの運営で昨年春にデビューしたばかりだが、わずか1年の展開となった。
イトキンの不振はウィメンズブランドだけではなく、複合業態も同様のようで、都市部や郊外の商業施設に展開するライフスタイルブランド「ヒアーズ」は4月上旬の終了を発表。今週25日に閉鎖したオンラインストアをはじめ、東急プラザ表参道原宿や大阪グランフロントなどに構える30以上の店舗を順次閉鎖している。
とある。
このほかにも先だって「クレージュ」ブランドの廃止も発表されており、イトキンはこれからブランドの廃止ラッシュになるだろう。
ブランドの廃止ラッシュくらいならまだマシだが、さらに衝撃的な発表が控えているという噂もある。
そういえば、ヒアーズだが、昨年からかなり大量にバッタ屋に商品が流れている。
天神橋筋商店街の各店舗でヒアーズの商品が500円とか300円で投げ売りされているのをよく見かけた。
相当在庫を抱えていたのだろうと推測していた。
ちなみにavvの商品もそこそこに見かける。
これも在庫を抱えているのだろう。
イトキンの直近の業績(2015年1月期)は、売上高が952億5,900万円、純益は前の期の40億円に続く赤字。
とあるが、2016年1月期の業績はさらに落ち込むと個人的には見ている。
最終的に創業家がどういう判断を下すのか注目したい。
2016年が明けて、まだ1か月である。
すでに年始早々にセレクトショップWOmBの経営破綻が伝えられた。
1か月の間に名の通ったアパレル3社が相次いでの経営破綻、解散、ブランド大量廃止の発表である。
今日から立春だがアパレル業界の春は当分訪れそうにない。
残り11カ月、どれほどのビッグニュース(悪い意味での)が発表されるのか、想像するのも恐ろしいくらいである。
今年、来年あたりでアパレル業界のガラガラポンが本当に起きるのではないだろうか。