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南充浩 オフィシャルブログ

好調ブランドも3年後には転落するアパレル業界

2015年9月25日 未分類 0

 アパレルブランドの業績のジェットコースターぶりは激しい。
改めてそう思った。好調だったブランドがわずか3年ほどで倒産してしまう。

今年、6月1日にヤング向けレディースブランド「CHU XXX(チュウ)」を展開していたシー・エス・ピーが倒産した。負債は15億円。

http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4057.html

帝国データバンクの記事を引用する。

自社で企画・デザインを手掛け、中国や韓国などの協力工場で生産、自社店舗で販売するSPA業者として一定の知名度を有し、2013年には関西を中心に東北から九州まで49店舗に拡大。

また、クッションやマット、雑貨などの卸事業も手掛け、大手婦人服小売業者やギフト業者向けに営業基盤を確立していた。積極的な店舗展開により「CHU XXX」(チュウ)ブランドの知名度が向上した2012年3月期には年売上高約51億8800万円を計上していた。

 しかし、同業他社との競争激化に伴い顧客単価は低下し、急激な出店により不採算店舗も散見されるようになった。さらに卸事業でも大口顧客からの受注が低下したことで2013年3月期には年売上高約45億4600万円までダウン。減収に加え、出退店経費や人件費などが嵩んだことで約1億8100万円の当期純損失を計上していた。

このため、店舗のスクラップアンドビルドを加速させるなどのリストラを実施するとともに、金融機関への返済条件緩和を要請するなど経営の立て直しを図っていた。その後も、業績の悪化に歯止めが掛からず、2014年3月期には債務超過に転落。加えて、昨年10月以降の急激な円安により生産コストが上昇したことで収益面は低迷し、ここに来て先行きの見通しが立たないことから今回の措置となった。

とのことである。

2012年度にピークを迎えたブランドが次年度には6億円近く売上高を落として赤字転落。
さらにその翌年には債務超過に陥り、今年倒産である。
この間、たった3年である。

創業は1986年だからジワジワと業容を拡大してきたが、急激な店舗網拡大によって赤字に陥るとともに商品の売れ行きが陰ってあえなく倒産した。

さて、この「チュウ」の商品だが、あちこちの処分屋・バッタ屋に流れており、現在安値で購入できる。
またシー・エス・ピーの幹部やらスタッフやらがあちこちで催事販売をして現金化しているとも聞く。

定価での価格帯でいうと、Tシャツ1900円、カジュアルアウターが3900~4900円、である。
ユニクロと同等か商品によってはユニクロよりも安い。
デザイン面でいうと、ユニクロよりもトレンド性が高い。
ユニクロはレディースもどちらかというとコンサバテイストであり、純然たるヤング向けではない。
ヤング向けということに関していえば、はるかにこの「チュウ」の方が適している。

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(商品一例)

まあ、そんな感じのブランドである。

倒産したブランドはあちこちで投げ売りされて現金化される。
それはこの「チュウ」だけが特別なのではない。

例えば、子供服のフーセンウサギが倒産したが、筆者は昨年、このフーセンウサギの「セレク」というブランドが近鉄百貨店あべのハルカス本店でワゴンセールで投げ売りされているのを見たことがある。
これは倒産後に流れてきた商品だろう。

また、3年ほど前は郊外のショッピングセンターの催事でボブソンのジーンズが投げ売りされていたのも見たことがある。ボブソンが再起する前だったので倒産後に在庫が流れてきたのだろう。

すべからく倒産ブランドの在庫品はあちこちに流れて投げ売りされるのが常態だ。驚くには値しない。

これと似たように感じたのは、「リズリサ」ブランドの売却である。

これもほんの数年前は超人気ブランドだったが、今は赤字転落しており、ブランドごと今年9月に売却された。
もともと展開していた会社は解散である。

これは繊研プラスから引用する。

http://www.senken.co.jp/news/management/crossplus-salelizlisa/

クロスプラスは9月15日、連結子会社のヴェント・インターナショナル(東京、檜皮和彦社長)を16年1月31日付で解散し、ヴェントが展開するリズリサ事業を投資ファンド、希キャピタルパートナーズ(東京)の子会社に10月に譲渡すると発表した。譲渡価格は3億800万円。クロスプラスは本業の製造卸事業に経営資源を集中し、低迷の続く業績を立て直す。

 ヴェント・インターは、「リズリサ」ブランドでヤング向けの衣料品と服飾雑貨を企画・製造し、商業施設の直営店などで販売してきた。不採算店の撤退や仕入れの見直し、コスト削減を進めてきたが業績は回復せず、15年1月期は売上高50億円に対し、経常損益は14億円の赤字、純損益も16億円の赤字だった。

 リズリサの商標は希キャピタル100%子会社のリズリサホールディングス(東京)に、商品在庫、事業設備、備品などは同ホールディングス100%子会社のLIZLISA(同)にそれぞれ譲渡する。

とのことである。

このニュースが流れてから、投資ファンドに何らかの関係のある人から「このブランドに3億円を払う価値があったの?」という質問メールが来た。

売上高が50億円でも経常損失が14億円、純損失も16億円だったなら、3億円も支払う価値はない。

そうお答えしておいた。
3億円支払ってまださらに15億円前後の赤字を背負い込むことになるからだ。

いやはや、本当にアパレルは水物である。

先日、「チュウ」ブランドについてこんなやり取りがあった。

あちこちで投げ売りされている「チュウ」ブランドだが、その中の1店で、「チュウ」の固定客だったという40代前後と思しき女性とである。ちょっと「チュウ」を愛用するには年齢が過ぎているかなという印象が強い。(笑)

この女性によると、倒産する1週間前くらいに「チュウ」の直営店に買い物に行ったところ、全品7割引きだったという。
「チュウ」のスタッフブログによると全店を5月29日に閉店しているので、おそらく5月半ばから20日過ぎの間だったと推測される。

いくらバーゲンが早期化しているとはいえ、5月半ばから全品7割引きセールをするブランドはない。
よほど現金化を急いでいたのだろう。

この女性も「何かがおかしい」と思ったらしいが、まさか、その直後に倒産するとは思わなかったとも。

さらにポイントが数千点たまっていたらしく、「せっかく貯めたのに無駄になった」とひどく落胆しておられた。
それはそうだろう。

5月の7割引きセールで使おうと思ったらしいが、「セール品じゃなくて定価品を買う時に使おう」と思ってさらに貯めたらしい。
気持ちはわかるが、その時に使うのが正解だった。

チュウの商品を見ていると、定価でもそれほど高くはないし、格別に上質というわけではない。
価格相応の品質しかない。
またセール品が粗悪品であるわけでもない。
だったらセール品で気に入った物があればポイントを使って買う方が良いのではないかと筆者は思う。

例えば5000ポイント貯まっていたなら、1000円に値下げされた商品5枚をタダで手に入れた方が良いのではないかと思う。

筆者なら間違いなくそうしていた。
そういえば、筆者はスーツカンパニーの毎号のメールマガジンについている10円分のポイントを何年間か貯めて1500ポイントにしてから、1500円に値引きされていたシャツをタダで手に入れたことがある。

アパレルブランドはいつ倒産するかもわからない。
貯まったポイントはなるべく早く使い切った方がお得である。

そう思わされたやり取りだった。




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