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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品小売業者が製造も確立させることは難しいという話

2026年2月5日 企業研究 0

衣料品の製造と小売業というのは同じ商品を扱っているにもかかわらず、同一業者が両方を手掛けて上手く行くことは容易ではない。

多くのSPA型ブランドもその実は、商社の繊維製品部に丸投げしたり、OEM・ODM屋に丸投げして生産していることがほとんどである。

ある程度商社の力を借りたとはいえ、自社の人間を工場に派遣して大規模に成長できたのはユニクロくらいではないかと思う。

 

 

今回のZOZOの生産事業終了も上手く行かなかった一つの事例になるといえる。

ゾゾ、7億円の特損計上 生産事業を終了 | 繊研新聞

ゾゾは、生産事業(マルチサイズ、メイドバイゾゾ、キヤスクウィズゾゾ)の終了を決定したと公表した。

生産事業では、ファッションブランドの在庫リスクゼロを目指すとして、「ゾゾタウン」上で出店者が1着から商品を発注できるプラットフォーム、「メイドバイゾゾ」を22年秋に確立するなどの事業を行っており、服のお直しサービスのキヤスクとの協業でインクルーシブウェアを受注販売できるキヤスクウィズゾゾといったユニークなサービスも注目された。

しかし、「期待していたほど需要が伸びず、収益化で苦戦した」と柳澤孝旨ゾゾ取締役副社長兼CFO(最高財務責任者)執行役員。今後の事業性を総合的に検討した結果、当該事業の終了を決定した。既に25年10月20日をもって新規受注は停止している。在庫商品は引き続き販売を継続し、在庫消化次第、販売を終了する予定。

事業の精算に伴い、26年3月期第3四半期会計期間において、特別損失として7億円を計上した。

 

 

とのことである。

ゾゾのアパレル生産事業はさかのぼれば2010年代後半のメンズスーツ、ジーンズ、Tシャツなどの自主企画製品生産にさかのぼるが、こちらはたしか機能肌着を最後に不採算を理由として終了している。

サイズを自動計測できるという触れ込みのゾゾスーツとの組み合わせでの売り込みだったが、開始当初のサイズ計測の精度の甘さや、不具合が続出したことから、熱心に擁護していた先端層の熱も冷めてしまったことで一気に需要が減少した。

 

 

IT系はスピードが最重要視されるとはいえ、もう少しサイズ計測の精度や工場と連携精度を高めてからリリースした方がよかったのではないかと当時から思っていた。ちなみに当方は全く興味が無かったので水玉柄ゾゾスーツを発注したこともない。

とはいえ、衣料品生産のノウハウとラインは一定程度は残ったので、それを活かして記事にもあるようにマルチサイズ対応やお直しサービス、メイドバイゾゾへと転用したといえる。

 

 

ただ、これらのサービスはどう考えても需要はそれほど多くはない。需要がゼロだとは言わないが、マスの需要ではない。

これが零細・小規模企業ならその少ない需要でもやり続ける意味はあっただろう。しかし、ゾゾほどの大手企業になれば少ない売上高に固執し続ける意味は無い。これらのサービスの売上高はゾゾにとっては有っても無くても変わらないという存在だっただろうと考えられる。

 

 

ゾゾの2026年3月期第3四半期決算だと、売上高は1718億500万円もある。通期の見通しだと売上高は2315億円となっており、この2000億円台の企業からすれば生産事業の売上高など微々たるものだったのだろう。

例えば、ビッグサイズやスモールサイズの服を求める消費者の声は確かにあるが、それがビッグビジネスになっているかというとそうではない。ビッグサイズ専門、スモールサイズ専門などの業態でビッグビジネス化している事例を見たことが無い。

 

 

一例を挙げると、2017年にはるやまが岐阜のメンズビッグサイズメーカーのマンチェスを買収して完全子会社化した。このマンチェスの売上高だが、

はるやまHD、「大きいサイズ」強化 2社を買収 – 日本経済新聞

マンチェスと、子会社でネット通販サイト運営のミッド・インターナショナル(同)を買収した。独立した子会社として運営し、現在の経営陣は続投する。2社を合わせた売上高は約19億円。

 

とある。企画製造のマンチェスとその子会社でネット通販担当のミッド・インターナショナルの2社を合わせた売上高は当時19億円しかなかったということである。

マンチェスはメンズビッグサイズメーカーとしては老舗だが、それでも通販担当の子会社と合わせてもこの売上高しかないということから考えると、ゾゾのマルチサイズの売上高も小さかったのだろうと考えられる。

 

 

ただし、何度も言うように小規模事業者なら売上高10億円もあれば万々歳だが、売上高2000億円を越える企業からすれば10億円は有っても無くても変わらないし、逆に人員や手間を取られるなら無い方がマシという判断になることは当然の帰結といえる。

さらにいえば、もう10年間も続いているビッグサイズトレンドもマルチサイズ対応には逆風になった可能性が高い。なぜなら、ただでさえビッグサイズなのだから市販のLLサイズで着用可能になった人も多々いることだろう。小さい人には受難かもしれないが、このビッグサイズトレンドで大きいサイズが欲しい人の何割かはわざわざ個別発注する必要が無くなったのではないか。

 

 

そして残りの二つのサービスも同様にスモールビジネスでしかない。1枚から発注できるメイドバイゾゾがまとまったロットになりにくいことは火を見るよりも明らかだし、お直しのキヤスクウィズゾゾもお直しがまとまったロットになりにくいのは誰にでもわかることだろう。

そうなると、2000億円企業としてはスモールビジネスからの撤退は当然である。逆になぜ始めることを決定したのかが当方にはわからない。お直しの大ブームとかイレギュラーサイズ大ブームが来ると考えたのだろうか。そんなものは来るはずもないのに。

 

 

DX生産だ、スマート工場だ、なんだと過剰に騒がれたが、結末は当初予想通りだった。ことほど左様に小売と製造の両立は難しいということで、だからこそ両社の橋渡し・通訳としての「まともな」OEM・ODM屋の存在が不可欠になる

 

 

 

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