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南充浩 オフィシャルブログ

今後、ラグジュアリーブランドの日本撤退が予想される

2011年3月22日 未分類 0

 地震の影響から繊維・アパレル業界ではいろいろな物が様変わりしそうである。

原発事故に過敏に反応したフランス政府が日本国内のフランス人に対して、帰国か東京から避難するよう勧告した。そのため、東京都内のフランスブランドは路面店だけではなく、百貨店内テナントも休業しているそうである。

太田伸之さんの3月15日のブログから引用させていただくと、

外資系企業の中でフランスブランドの休業、百貨店内ショップ閉店の決断が特に早かった。フランス政府が発表の信憑性に疑問を持ち、大使館を通じてフランス人に東京脱出を勧告しているからと聞きました。百貨店の営業中にさっさと化粧品カウンターやブティックを片付けて帰ってしまう背景には、大使館の勧告があり、ジャパン社トップは自分だけ脱出するわけにはいかないので休業にして従業員を守っています。

 フランスに続いてイタリアブランドも同調始めました。百貨店フロアの外資ブランドはどんどん開店休業状態になっています。米国GE製原発なので米国大使館は動かないのか、米国ブランドはいまのところフランスブランドのようにショップを閉めていませんし、日本企業も現時点では冷静。が、原発がさらに深刻な事態になれば、従業員の安全を守るために販売員を自宅待機させる会社が増え、百貨店、ファッションビル、駅ビルは営業できず、繁華街はゴーストタウンと化すでしょう。

とある。

先日、某コンサルタント氏が「今回の地震で欧米のラグジュアリーブランドは日本から本格的に撤退するかもしれない」との見方を示された。
たしかにその可能性は高い。

というのは、2010年後半から高額品への消費マインドがやや回復しつつあったが、今回の震災で過剰な高額品への消費マインドはまた冷え込むことが予想されるからだ。衣料品の分野においては、肌着・靴下・日常カジュアル服・日常通勤着の類は、必需品の側面があるからある程度の消費は保たれるだろう。しかし、1着20万円もするような「ラグジュアリーブランド」のジャケットやスーツ、ドレス類がそう簡単に売れるとは思えない。またそれを「今買わなくてはならない」という意識が消費者に芽生えるとは思えない。
おそらく、こういう類の高額ブランドの売上高は落ち込むだろう。

それに伴い、今年後半から来年にかけてかなりのラグジュアリーブランドが日本から撤退してアジアの拠点を上海あたりに移すのではないかと予想される。

さてこの傾向を「寂しい、日本も終わりだ」と捉えるのか、「日本の消費行動が健全化する」と捉えるのかで気の持ちようが変わると思う。
個人的には「ラグジュアリーブランドが撤退しても良いのではないか」と考えている。90年代半ば以降、仏・伊のラグジュアリーブランドを日本人は過剰に買い過ぎていたように思う。収入が減っているのにラグジュアリーブランドの需要が伸びていたという事実は「健全ではない」と思える。例えば、女子高生が援助交際と称して体を売って、そのお金で10万円近くもするバッグを買うことはどう見ても異常である。
本来、ラグジュアリーブランドはそれを買えるだけの収入を得ている人々だけが、趣味の範疇で買えば良い物であって、貧乏人が無理をして買う必要はない。
とくに貧しくても服飾・ファッションに興味がありどうしても手に入れたい人はまだしも、「友達も持っているから」というような理由で背伸びして買う性質のものではない。

そういう90年代半ば以降の消費傾向を見ていて「仏人・伊人に食い物にされているだけではないのか」という感想も抱いていた。

工賃の安い生産工場と丸投げを受けるOEM業者に依存したクイックレスポンス(QR)システムもダメ。ラグジュアリーブランドもダメ。となれば、国内の繊維・アパレル業界はまた新しいシステムと枠組みを考えなければならないだろう。

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