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南充浩 オフィシャルブログ

ワークマンのネット通販に存在感が全く無い理由

2024年6月12日 ネット通販 0

最近ようやく、メディアやコンサルタントが「EC化率〇〇%だから優秀」みたいなクソ指標を使わなくなってきて安堵している。

以前にも書いたように、EC化率が高ければ一概に優秀とはいえないし、EC化率が低いと一概に劣悪とも言えない。要はその会社が実店舗とECを合計して儲けていればそれで良いのである。

ただ、2020年春から続いたコロナ禍のような外出を控える感染症が長期間続く場合を想定するならEC(いわゆるネット通販)を全くやっていないことは大きなリスクになるうる。

そのため、非常時に備えて細々とでもECを運営し続けるのはリスク管理としては必要ではないかと思う。また感染症に限らず、例えば大地震や台風などで実店舗が稼働できない状況は大いにあり得るから、そのための補完としてもネット通販機能は常日頃から準備しておいた方が良いだろう。

「百年兵を養うは一日これを用いんがためである」 

である。

 

 

当方はネット通販とはそんなもんだと思っている。そんな中、不思議なことにメディアやコンサルタントにあまりEC化率でイジられないのがワークマンである。

当方の体感から言うと、ぶっちゃけ

ワークマンのECは弱い

と感じている。

さらに面妖なのが、先ごろ発表があった2024年3月期決算でECのことがワークマン側からもメディア側からも全く触れられていないことである。

ワークマンという法人のこれまでからの性格を鑑みると、言いたいことに対しては聞かれてもいないのに言ってしまうタイプである。広報発信は微に入り細に入り多い。

そんな性格の法人がECに対して口を閉ざしている点を考慮すると、考えられることは2つである。

1、ECの業績が芳しくない

2、ECを重視していない。(もしくはやりたくない)存在を感知されたくない

という2点である。

 

 

当方はここ何年間か5つのブランドのネット通販を定点観測している。もちろん観察も兼ねて定期的にも買っている。

その5つとは、ユニクロ、ジーユ―、ドットエスティ、ベイクルーズストア、アーバンリサーチである。そしてワークマンのネット通販にもアカウントを登録はしている。

そのうえで、確実にいえることは先の5つに比べるとワークマンはネット通販の施策が皆無に等しいということである。

1、アプリが無い

2、メルマガが無い

3、アプリもメルマガも無いので、当然「新商品入荷」「セール開始」などのお知らせも無い

まさしく無い無い尽くしである。

これで売れる方が不思議というものだろう。

 

 

多くの人が感じているように確かに「メルマガ」は煩わしい。当方は極力受け取らないようにしている。しかし、やっぱりアラート機能としてはそれなりの効力はあると思っている。

先の5つのブランドから「新製品入荷」とか「セール開始」などのメルマガが来ると、やはり一度は通販サイトを覗きに行ったり、アプリを開いたりしてしまう。

そうすると、売れる可能性は少し高くなる。これが全く無ければどうだろうか。恐らく売れる確率はかなり下がるだろう。

メルマガを受信していないブランドでもアプリをインストールしていれば、アプリからお知らせが来る。やっぱり鬱陶しいなあと思いながらもアプリからのお知らせは一度は確認してしまう。

それで例えば「セール開始」を知ったとすれば、覗いて見て予想外に値下がりしていてデザイン等が気に入った商品があればやっぱり買ってしまう。

また「新製品入荷」のお知らせが来て、見てみて気に入ったら「お気に入り」に登録しておく。当方は洋服を定価で買わない主義なので、しばらく放置しておくと「値下がりしました」というお知らせが来るのでその時に買う。

特にお知らせしなくても多くの人がサイトまで毎日確認しに来てくれるなんていうのは、よほどの超人気ブランドに限られる。果たしてワークマンはそこまでの超人気ブランドだろうか?(笑)

 

 

当方が確認できた最後のECに関する記事がこれである。

ワークマン、EC売上高が20%減 2023年3月期は大幅増収の見通し | 日本ネット経済新聞|新聞×ウェブでEC&流通のデジタル化をリード (netkeizai.com)

2022年3月期のEC売上高が、前期比約20%減となったことを明らかにした。2022年3月期のEC売上高は本紙推定で19億5200万円。2023年3月期のEC売上高については、前期比で大幅増収になると予想している。

とのことである。

コロナ特需によるネット通販の急成長が鈍化した時期とはいえ、2022年3月末時点で前年比20%減になるネット通販は珍しい。かなりやり方が下手くそだったと言わざるを得ない。

そして、23年3月期は大幅増収と見通していたが、実はその後公式発表が無い。24年3月期も無い。業績が良ければ、聞かれてもいないのに勝手に発表するだろうから(ワークマンに限らず)、口をつぐんでいるということは業績が芳しくないということを如実に示しているといえるだろう。前年割れか計画未達のどちらかだろう。

 

 

で、この記事には思わず首をひねってしまう施策が紹介されている。

2022年3月期は、利益を重視し、高コスト構造からの脱却を図るための施策を実施したという。「宅配比率を減らす」「アイテムを3分の1に削減」「EC専用在庫撤廃」「EC専用倉庫撤廃」などの施策を行ったとしている。
 
「こうした構造改革も終わり、EC注文・店舗受け取り専用商品の影響などもあり、2023年3月期のEC売上高は大幅増となる見込みだ」(同社)と話す。

疑問しか感じないのが赤字で示した「EC専用在庫撤廃」である。

 

ご存知のようにワークマンのフランチャイズ(FC)店舗比率は現在94%強である。ごく一部の直営店を除いてはすべてがフランチャイズだということになる。何度も書いているようにフランチャイズ店はオーナーが自腹で商品を仕入れる。だからワークマンの売上高のほとんどは「FC店への卸売り」ということになる。

一方、ネット通販は本社直営である。

そうなると、EC専用在庫を構えていないとまともな数量をEC用には確保できないという理屈になる。そのEC専用在庫を撤廃してしまえば、ECはすぐに品切れを起こしてしまい、機会損失が生じてまともな売上高は稼げないということになる。

ワークマン側はネット通販から各店舗の在庫状況が検索できるシステムを構築しているが、自腹を切って仕入れているFC店が在庫を多めに持つはずもない。むしろ売れ行きより少なめに仕入れるのが普通である。もし売れ残ったらそのリスクはFC店が背負うわけだから、FC店とすると売れ行き好調であればあるほど少し少な目に仕入れて売り逃げを図りたい。

このような状況で「EC専用在庫の撤廃」によってなぜ「EC売上高は増えるはずだ」と言えるのか、全く理解に苦しむ。普通に考えればそんな見通しにはならないはずだが。

ECが売れれば売れるほどFC店は売上高を奪われがちになるため反発が起きる。逆にECが不調であればFCの売れ行きは順調になるケースが多いと考えられるので、ECが弱いというのは実はFC店からすると理想的な環境だといえる。

 

 

業界関係者からは「ワークマンの基幹となっているFC体制は今更廃止とか大幅縮小は難しい」という指摘をいただく。それはたしかにその通りだろう。現実的にこれまでのFC体制のままで、ネット通販売上高を大幅に伸ばすことは不可能に近い。ワークマンの経営側もそれは分かっているだろうから、今後もネット通販については形ばかりやっている感じで存続するのだろうと推測できる。

全ての物事のメリットとデメリットは同じ事柄であるから、これまでメリットだったFC体制がそろそろワークマンにとってはデメリットとなり始めているといえるだろう。

 

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