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南充浩 オフィシャルブログ

厳格化された「革」の用語規定 「ダウン」にも同様の措置を求めたい

2024年5月27日 素材 0

革・レザーの用語規定が厳格化された。これはまことに喜ばしいことだといえる。

JIS 革・レザーの用語規定見直し 動物由来に限定 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

JIS(日本産業規格)による「革・レザー」の用語規定の見直しを受け、日本皮革産業連合会は5月24日に説明会を開いた。JISは革・レザーを「皮本来の繊維構造をほぼ保ち、腐敗しないようになめした動物の皮」に限定、「人工的な材料の名称として使用してはならない」と定義した。

ここ数年、ヴィーガンレザーなど非動物性の原料を使った素材でレザーの用語が乱用され、消費者の誤解と混乱を招いていたことから、国際的な用語に統一して理解を深め、正しい認識での消費を促す。ISO(国際標準化機構)は19年に「Leather」の用語を規定した。

とある。

JISが勝手に規定したわけではなく、ISOに準拠した基準に厳格化したという話である。

記事にも書かれているように「ここ数年、用語が乱用され、消費者の誤解と混乱を招いていた」ことは明白だった。ここにも書かれている「ヴィーガンレザー」もさることながら、「エコレザー」の乱用や、「合成皮革」を「本革」「レザー」と表記する詐欺行為も多発していた。

 

 

 

今後の用語基準については以下のように説明してる。

革・レザーは動物の皮を使い、仕上げ塗装や加工による表面層の厚さが0.15ミリ以下のものとする。「エコレザー」は、皮革の製造過程で排水、廃棄物処理が法令を順守していることが確認され、消費者と環境に有害な化学物質などに配慮した革と規定した。革を繊維状、粉末状にして50%以上配合した加工素材は「皮革繊維再生複合材」とする。基材の表面に合成樹脂面を配して、革の外観に類似させた素材は、「合成皮革」「人工皮革」に分類され、フェイクレザーも不適切な表現となる。

とのことである。

まず、「エコレザー」なる用語も少なくとも2種類の素材があったと当方は認識している。エコレザー自体も乱用の結果、混乱と誤解を招いていた。

1、エコな製造方法で作られた「本革」

2、いわゆる「合成皮革」の言い換え

という2種類のエコレザーが市場には存在していた。

素材メーカーやタンナーはある程度は明確な使い分けをしていたと感じられるが、店頭やネット通販ではこの2つの違いを認識できない担当者も多くいたため、ごっちゃに使われていて説明文はカオスな状況に陥っていた。

本来の「エコレザー」は1の意味のはずだが、環境にやさしい(とされる)再生繊維などを加工したり、はたまた「動物を使わないこと自体がエコ」という意味不明の定義を持ち出したりして、エコレザーを名乗る合成皮革・人工皮革・フェイクレザーはことのほか多かった。また「合成」「人工」「フェイク」という言葉のイメージが良くないことから、わざと「エコ」と言い換えている業者も多かった。まるで、「消防署の方から来た」消火器を売りつける業者のようである。

このほか、革を繊維状や粉末状にして再構成した素材は「皮革繊維再生複合材」、基材の上に合成樹脂を配した素材を「合成皮革」「人工皮革」とし、フェイクレザーは不適切な用語となる。

 

 

 

こうした基準の明確化はまことに喜ばしいものだが、合成皮革アイテムを扱っている業者の中には反発する不心得者もいるだろう。しかし、合成皮革と本革では見た目は似ていても素材としては全く異なるため、本来は保管や洗濯、メンテナンスの方法が異なる。ごっちゃに表記されると適切な洗濯、保管、メンテナンスの方法が選べなくなったり、誤った方法を選択してしまうため百害あって一利なしだ。利があるのは詐欺業者だけである。

個人的にJISにはこのレザーと同様の措置を「ダウン」についても取ってもらいたいと強く切望する。

 

 

 

近年、レザー・本革と同様に「ダウン」の表記にも大きな混乱と誤解が生じている。

ダウンは「羽毛」という意味だが、近年は羽毛原材料の高騰や円安基調による価格高騰を抑えるためや動物愛護などの観点から機能性合成繊維の中綿を使用した「中綿アウター」が増えている。

この「中綿アウター」に「〇〇ダウン」という名称が用いられていたり、ひどい場合は「ダウン」と詐欺表記されていることが蔓延している。

「エアコンダウン」「ファイバーダウン」などと称した「〇〇ダウン」は数多くある。相当な大手企業でさえ堂々と表記しているが、こちらはまだ見分けができる。ソフトタッチのアクリル100%生地を「カシミヤ調」「カシミヤ風」と表記するのと似たような具合である。

問題は「中綿ポリエステル100%」にもかかわらず堂々と「ダウン」としか表記していない詐欺業者である。これは「合成皮革」を「本革」と表記することに等しい。

 

 

この結果なのか、それとも間違った認識を持っていたから合繊中綿を「ダウン」表記してしまうのか、その前後関係は不明だが「生地の内側にワタっぽい詰め物をしてステッチが表面を走っている形状のアウター自体をダウン」だと認識している人が少なからずいる。

ダウンは形状の名称ではなく、羽毛という素材の名称であることを業者にも消費者にも周知させるべきである。

そんなわけで、JISにはレザー・本革に引き続き、ダウンの用語規定の厳格化を実現させてもらいたい。

 

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