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南充浩 オフィシャルブログ

大手と同じ価格の同じ商品を売っていたら絶対に大手に負けるという話

2024年5月21日 売り場探訪 5

これは我が国市場だけのことではなく、恐らく他の国市場でもそうだが、ある程度経済成長を遂げたらマス需要は大手に集約される傾向が強いと感じる。

先日、久しぶりに心斎橋の方を歩いたのだが、長堀通と心斎橋筋の交差点にあった「スニーカーのSTEP」のビルが壊されて更地になっていた。

まだ何か工事をしていたので、そのまま放置されることはなく、何らかのビルに建て替えられるのではないかと思う。

工事現場の看板を見てみると、今年4月1日から工事を開始しているようである。ということは遅くとも今年3月下旬にSTEPは営業を終了したと考えられる。

最近心斎橋界隈へあまり行かないので、初めて知った次第だ。

 

 

一時期、東京にも進出していたSTEPだが、急激に店舗数を減らしており、現在は大阪の長居、茨木の2店舗と兵庫県の六甲道店の計3店舗しか残っていない。

こちらも長い事行っていないので知らなかったのだが、梅田の茶屋町店も閉店しているようだ。

大阪市内ではけっこう老舗のスニーカーローカルチェーン店で、90年代半ばごろから大阪を中心に店舗数を増やしていた。

もちろん、定価品も販売しているが、目玉は型落ちの値引きスニーカーである。ナイキ、アディダス、プーマ、リーボック、アシックス、ミズノあたりの大手ナショナルブランドの型落ちスニーカーがだいたい2900~5900円くらいで売られていて、90年代半ば以降、当方も結構STEPで値引きスニーカーを買った。もちろん、定価で買ったことなど無い。

90年代から2000年前半くらいまではすごい勢いで店舗数を拡大していた。スニーカー業界は素人である当方から見て、2000年代半ばごろからその勢いが止まり、徐々に店舗数を減らし始めたと感じている。

 

 

理由はABCマートの関西圏への進出と急拡大によるものだろうと思っている。

当方の記憶が確かなら、昔は関西圏にABCマートの店舗は無かった。進出し始めたころ合いは、不確かながら2000年代になってからではないかと思う。(進出した時期が違っていたらご指摘ください)

しかし、資本力の差なのか、ABCマートは関西圏でも急ピッチで店舗数を拡大し続けてきて、それが今も続いている。

一時期、H&MやZARAなどの近隣への2~4店舗くらいの出店を指して「ドミナント戦略ガー」と唱えていた経営コンサルが多かったが、彼らのドミナント戦略はあっけなく終了したのに対して、ABCマートこそドミナント戦略を今も活発に続けている。経営コンサルにはABCマートのドミナント戦略とについて解説してもらいたいものである。

ザックリ検索してみても、心斎橋エリアから難波にかけてだけでABCマートは5店舗もある。

こんなに店舗が近接していて売れるのだろうかと心配になるが、それでも撤退していないのだから、各店舗はそれなりに売れているのだろう。これが心斎橋だけでなく、梅田など他の都心でも同様なのだから、この「ドミナント戦略」はすごいものだといえる。

 

 

当方のような外野からすると、STEPとABCマートは全く同じだと見える。もちろん、屋号や店構えが違うことは分かっている。一消費者の目から見れば、同じ商材をほぼ同じ値段で売っている店というふうに見えるということである。

定価品はあるものの、目玉は大手ナショナルブランドの型落ち値下げスニーカーである。微妙に品番や価格に差異はあるものの、ほとんど同じである。

となると、どちらで買うかというと店舗数が多く、知名度が高くてどこででも店を見かけるABCマートで買うという人が増える。逆に「STEPで買わねばならない理由」が消費者には全く無い。

今回STEPの心斎橋店が無くなったわけだが、困る消費者はほとんどいないだろう。なぜなら近隣にABCマートが複数あるからだ。型落ちの値下げスニーカーが欲しければそこで買えばいい。

STEPが圧倒的に安い、例えば型落ちスニーカーが1000円均一とかなら支持する消費者もいただろう。しかし、値下げ品の値段帯もABCマートとほぼ同様なら、消費者にとってはSTEPで買う必要性が全くない。

 

 

これはスニーカー以外の商材でも同様で、ほとんどの商材やサービスは大手の方が圧倒的に強いといえる。

ペット関連の国内EC市場 2028年に23年比27.9%増の3489億円と予測 | 通販通信ECMO (tsuhannews.jp)

例えば、この記事でも

2023年の市場規模は2727億円となり、全体の6割以上を大手ECモールが占めた。

とある。大手ECモールの売上高合計は少なくとも1636億円以上あるということになる。さらにいえば、企業数が多い中小零細は残り900億円弱を分け合うという構図になる。

これはペット関連以外でも同様で、衣料品も飲食店も同様だろう。ネット通販でもAmazon、楽天、Yahoo!ショッピングが圧倒的に強い。

【ECモール利用実態】1位はAmazon、2位は楽天、3位はヤフー。利用するモール、頻度や金額、年代・性別など調査まとめ | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)

 

STEP側もこのことを認識しており、STEPは3店舗まで減らしながら、安売りではないスニーカーショップ「TOP to TOP」と「Dr.martens」オンリーショップを展開している。現在、公式サイトによるとTOPは6店舗、Dr.martensは8店舗ある。

ABCマートとモロ被りする安売り業態は捨てて、高価格業態へ転換しているというところだろう。

もちろん、STEP側も理解はしているだろうが、両店舗ともに今後爆発的に店舗数が増えるということは見込みにくい。上手く行けば徐々にジワジワと店舗数が増えるということになるだろうが、Dr.martensなんかはブームが終わるといきなり需要が激減する可能性も高いので、ジワジワとでさえ店舗数はあまり増やさないのではないかと個人的には見ている。

 

いずれにせよ、どの分野でもマス需要は大資本チェーン店が握っているから、中小零細企業は個性的なニッチ市場で売上規模よりも収益性の追求をするほかない。

これが現在の閉塞感の一因なのではないかと思うが、一朝一夕に変わることはないから地道にやるほかないだろう。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/05/21(火) 1:14 PM

    20~30年くらい前にワークブーツ流行ってた時にはダナーのブーツを何足か買ってましたが、10数年くらい前にアメリカのダナー社の親会社?がABCマートに買収されて、さらにダナージャパンが倒産してダナーのショップが無くなったのを思い出しました。ドクターマーチンとかも同じ様になったりして・・・

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/05/22(水) 11:52 AM

    >とおりすがりじい様

    それこそABCの野望です

    今は仕入れて売るだけ。でも儲からない
    ではオリジナル商品を。でもあまり儲からない
    そこで安く買えるB級ネームを買収してネーム上乗せ
    =ウマ~wというワケですな

    ところが庶民が履くスニーカーを見てわかるように
    もうこの図式が通用しなくなっています

    若い子とくに女の子はネーム無し商品でも今や平気です
    中途はんぱネームが必要なのは、ジジババ中年だけかも

    サテ、バッシュ風wヒモ無しベリベリマジックテープ
    安全ぐつスニーカー履いてお出かけしちゃおw

    価格は4000円ナンボですたw

  • とおりすがりのオッサン より: 2024/05/23(木) 11:03 AM

    >南ミツヒロ的合理主義者さま

    >もうこの図式が通用しなくなっています
    ということは、そのうちABCマートも凋落していくんすかね?
    神保町の書泉ブックマートのビルがまるごとABCマートになっちゃったときは驚きましたが、また何とかマートに変わったりしてw
    僕はお金持ちになってエドワード・グリーンとかジョンロブとか注文したい人生でした(・∀・)

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/05/23(木) 11:51 AM

    エドグリのB級品かってみた~ウヒョ~w

    数か月後、今まで履いてたオールデン特注品とかわんねー
    と気づく

    数年後、月星のゴム底スエード風ブーツとかわらん事
    に気づく

    さらにその数年後、モノタロウで買った安全靴のほうが快適
    だと気づく

    となるワケですw
    ちなみに価格差は、最初と最後で50倍ww
    科学技術の進歩と流通の高度化は偉大ですwww

    問題なのは、ハナからこの一番下の物しか買わない層が
    増えていること

    そらいろんな人が仕事、無くなるはずだわ

  • とおりすがりのオッサン より: 2024/05/24(金) 8:34 AM

    安全靴に負けるエドグリタン(`;ω;´)

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