従来型のビジネスモデルが限界に達しつつあるワークマン
2024年5月9日 決算 3
以前から何度かこのブログで書いているように、ワークマンの企業規模が拡大し、これまでのビジネスモデルはそろそろ限界点に達しようとしていると感じられる。
2024年3月期決算が発表された。
この記事が非常に的確にまとめられているので引用させていただく。
ワークマンの2024年3月期業績は、本業のもうけを示す営業利益が前期比4.0%減の231億円だった。営業減益は2期連続。暖冬による防寒アウターなどの不振が響き、円安やコスト高騰を吸収し切れなかった。既存店売上高は9期ぶりのマイナスとなる同1.4%減で終わった。7日にオンラインで開催された決算説明会で、小濱英之社長は「リピーター獲得が課題」との認識を示した。
チェーン全店売上高は同3.2%増の1752億円、営業総収入は同3.4%増の1326億円、純利益は同4.0%減の159億円だった。
期末店舗数は純増30の1011店舗。新規出店は「#ワークマン女子」を中心に進めた。引き続き「ワークマン」から「ワークマンプラス」への改装も多かった。しかし「新店や改装店は好調に推移するものの、2年目以降は伸び悩んでいる」(小濱社長)。一過性で終わってしまう消費者が多く、それが既存店のマイナスに影を落とす。
とのことである。
総括すれば増収減益ということになる。ただし、増収率は2023年3月期に比べるとかなり鈍化している。
2023年3月期のチェーン全店売上高は1698億5600万円で前年比8・5%増だった。また同営業総収入は1282億8900万円で前年比10・3%増だった。
2024年3月期のチェーン全店売上高は前年比3・2%増、営業総収入は同3・4%なので、伸び率は半分以下と大幅に鈍化しているということがわかる。明らかにワークマンの売れ行きの勢いは鈍っているといえる。
既存店売上高が9期ぶりに1・4%減に終わったにもかかわらず、全体売上高が3%強伸びている理由は店舗数が増加しているからである。売れ行きの勢いの無さを新店出店でカバーした形といえる。ワークマンの決算短信には
「合計33店舗を新規出店、閉店3店舗」
と明記されている。
ワークマンの売れ行きの勢いが鈍化した理由については、リピーターが定着しないということを社長自らが認めている。
ではなぜ、リピーターが定着しにくいのか?
たしかに、メディアの報道効果もあって、ワークマン女子、ワークマンプラスはオープンからの1年間はかなり賑わう。平日昼間でもそこそこ人がいる状態にある。
しかし、2年目か3年目くらいから平日昼間はあまり賑わわなくなる。例えば、当方に馴染みの深い天王寺である。天王寺MIOにワークマン女子がオープンしたのは2021年3月のことである。コロナ禍真っ最中という時期にもかかわらず、平日昼間でもそこそこ賑わっていた。当方はわざわざオープン当日は行かなかったが、すごい来店客数だったといわれている。
それが2023年になると、平日昼間は他社テナント同様にけっこう空いているようになった。同じ施設の5階にジーユーが入店しているが、ジーユーは平日昼間でもそこそこ人が多い。明らかに人入りのペースが違っており、ワークマン女子の客入りは2023年以降減っていると感じられる。
社長が言った「リピーターが定着しない」というのはこういう状況を指しているのだろう。
ではなぜリピーターが定着しないのか?
個人的に言うなら
1、カジュアル業態であるワークマン女子、ワークマンプラスに並んでいる商品は「カジュアルとしては中途半端な品番が多いから(全部ではない)」である。
2、フランチャイズ中心の弊害からか各店舗の品揃えが必ずしも同じではない。(目当ての商品がどの店にあるのかわかりにくい)
3、フランチャイズ店主体なので完売品の追加補充が無い場合が多い(仕入れはフランチャイズ店側の支払いとなるため)
あたりが理由ではないかと思っている。
ユニクロ、ジーユ―あたりとよく比較対象となるが、ユニクロ、ジーユーはほとんどが直営店である上に「超大型店」「小型店」という括りを除けば、品揃えはほぼ均一化されているし、在庫が残っていれば追加補充はスムーズに行われる。これは他の大手SPAチェーンもほぼ同様である。
ちなみにワークマンのフランチャイズ店は24年3月末の時点で952店舗、直営店は59店舗となっており実に94・16%がフランチャイズ店であり、これは他の大手低価格チェーン店ではあり得ないほどの高確率となっている。
さらに、ワークマンは近年、従来型ワークマンをワークマンプラスなどに転換を積極的に働きかけており(フランチャイズ店だから)、決算報告書では「改装転換66店舗」と記されており、24年3月末までの1年間で66店舗が従来型からワークマンプラス、女子などのカジュアル中心店へ転換している。
ただ、ここにも齟齬があって、従来型ワークマンのフランチャイズ店のオーナーはカジュアル衣料品についてはド素人である場合が多い。最寄駅の1駅向こうの駅前徒歩数分圏内に60代とおぼしき夫婦が経営する従来型ワークマンがあったのだが、いつの間にかワークマンプラスに変わっていた。何度かワークマン時代に店に行って買ったことがあるのだが、ご夫婦は本当に普通の初老夫婦でカジュアルファッションに詳しそうでも好きそうでもない。
ファッション好きが必ずしも成功するとは言わないが、ファッションに興味の無い人が経営して成功するほどファッション衣料は甘くはない。なぜ今まで上手く行っていたのかというと、作業着店経営だったからである。作業着店の経営や販売員はファッション好きである必要が無い。理由は顧客は「ファッション」を求めていないからである。もちろん、作業着がカッコいいに越したことはないが、多少デザインや色柄が気に入らなくても値段と機能性で購入してもらえることが多い。なぜなら、作業着なんて1ヶ月くらい、長くても3ヶ月くらいで破損して買い替えになるから、今気に入らない服でも早晩取り換えることになる。デザインや色柄にひどくこだわる必要性が低い。
一方、カジュアルは異なる。値段や機能性も重要視されながらも、デザインや色柄は作業服とは比べ物にならないほど重視される。カジュアルは「嗜好品」の性格が色濃い。そうなると、例えばフランチャイズ店で気に入った色柄が品切れになっていて、気に入らない色柄だけが残っていたとして、カジュアル客は絶対に買ってくれない。作業服客なら「どうせ、来月買いなおすから今回は買っておこうか」ということになる。
この差は大きい。だから、カジュアル業態を運営するのであれば、経営者や販売員がどこぞのファッショニスタみたいなイキリオシャレである必要は無いが、少なくともファッションに興味がある方が好ましい。
従来店から積極的にカジュアル業態に転換させても、リピーターが定着しない理由の大きな一因にもなっていると考えられる。
実はワークマンの某首脳陣にも少し以前にこっそりと「ファッションに強くてフランチャイズ経営に興味のある人いませんかね?」と尋ねられたことがあるので、弊害は十分に認識しておられるのだろうとは思っている。
以前からこのブログで書いてきたことの繰り返しになるが、フランチャイズ主体のままでワークマンがカジュアル業態を積極的に推進しようとするのは、チェーン売上高1700億円規模の今、そろそろ限界に達しようとしていると思えてならない。なぜ大手衣料品チェーンが直営店中心なのか、なぜ大手アパレルや有力セレクトが直営店以外ではファッション専門の販売代行業やファッション衣料専門のフランチャイズ店しか活用しないのか、である。彼らがやっていないということはやれない理由がそれなりにあると考えるべきだろう。
comment
-
-
偽ずんだもん より: 2024/05/09(木) 6:09 PM
ユニクロもフランチャイズ店があったと思いますが全体の数%で、ワークマンもユニクロを目指すなら直営店比率を上げていくべきではないでしょうか。
ワークマンプラスは従来のオーナーでもまだ何とか出来ても、ワークマン女子は売り場作りやコーディネート提案にファッション接客も多少は必要でしょうし、ファッション経験者じゃないと無理でしょう。 -
元古着屋 より: 2024/05/15(水) 10:30 PM
FCとカニバルから通販も強化出来ずに人気商品は品切れ。
同じようなFC小売りでも中央集権型の成功企業もあるけど今から中央集権に転換も無理なので既定路線で行くなら本部が在庫リスクを背負う形の卸し方に仕組みをかえるしかないかなぁ
てかそもそもFC店がカジュアルな立地じゃないし仮に上手く行っても作業着とは違うからFC同士の喰い合いになるかなぁ私的にはカジュアルから今やってる中途半端なキャンプ等を(&団塊Jr.をメインターゲットにして)、釣りや登山みたくセグメントを増やして本気度上げて物作りして、立地環境に応じて1〜3セグメント専門店にシフトしてくのが良い気がする知らんが
とりあえず登山系をウルトラライトハイキング度が高くしてくれたら買いたいからオナシャス
もともと、まったりユルユルと作業服売ってるだけで経営成り立ってたワークマンのフランチャイジーなのに、本部から改装してカジュアル服売ってくれ、なんて言われたら老夫婦さん達は困るだろうなぁw
しかし、店舗増やして増収だけど営業利益は減益ってのは、ちょっと前の「いきなりステーキ」みたいに衰退の始まりですかね・・・