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南充浩 オフィシャルブログ

「年間の半分は夏服」という提案は検討してみる価値があるのではないか

2024年4月30日 天候・気候 0

少し以前にジャヴァの現社長が季節MDを見直したいという記事が掲載され、個人的には注目をしていた。

今回、繊研新聞に掲載された解説記事はその解説である。

《解説》MDの見直しを迫る“長い夏” 「気温問題」にどう向き合うか | 繊研新聞 (senken.co.jp)

婦人服アパレルのジャヴァコーポレーション(神戸)は、年間の半分を「夏」と捉えた正価提案の確立を目指す。

同社の23年度業績(24年3月期)は減収減益の見込み。高気温が続いた23年夏から秋にかけての売り上げ苦戦を端緒に、下期計画を下方修正した。「プロパー売上高を上げる適正な仕入れを実現するためのMD設計」(浅見幸正社長)に課題がある、という。

それを修正・改善するための考え方が「年間半分は夏」と捉えること。セール期の7月を夏物の“ゴール”としてMDを組み立てるのではなく、秋(晩夏、初秋含め)の立ち上がり期としていた8月、9月も含め、4~9月を「夏」に位置付けた正価MDの構築を各ブランド長やMD担当者に要請した。

とある。

以前にこのブログでも書いたことがあるが、当方の個人的な体感温度に合わせると、毎年半年間前後は半袖で過ごしている。

要するに春と秋が高温化していることの表れなのだが、自分を目安にすると、毎年5月には必ず半袖を着ている。長袖に着替えるタイミングは毎年10月の中頃である。

正確に言うと、半袖を着始めるタイミングは早ければ(気温の高温が早期化した場合)4月の下旬である。遅くとも5月の中旬である。

長袖に着替えるタイミングは早ければ10月の中旬、遅ければ10月下旬である。

4月の下旬から10月下旬まで半袖を着用した場合、半年間は半袖で過ごすということになる。短くても5月中旬から10月中旬まで半袖を着用するので5か月間は半袖で過ごすということになる。

当方が年間最も長く着用する服は「夏服」になっている。

 

 

もちろん、体感温度というのは個人差があるから、暑がりの当方がすべての人の基準になるわけではない。特に女性は寒がりの人が多いから、夏服着用期間は当方よりも短くなるだろう。しかしいくら短いと言っても年間4カ月間くらいは夏服を着用するだろうから、やはり、夏服の期間は長いと言わざるを得ない。

着用期間でいうなら、記事中にあるように7月頭から夏服がバーゲンになるというのは、体感温度とはズレているといえる。7月頭は多くの地域で梅雨真っ盛りで、湿度は高いものの、気温はそこまで高くない。通常、梅雨明けは7月下旬でそこから一気に高温化する。

消費者の立場からすると、梅雨明けするころには夏服バーゲンが2週間以上経過しており、さらに安値になっているのでありがたい。しかし、その一方で売る側からすると、暑さがピークになる前から夏服を値下げ販売しなくてはならないから理不尽といえる。

また、8月のお盆前後には店頭に秋服が立ち上がるが、昔はいざしらず、ここ20年間でお盆からいきなり涼しくなった年なんて経験したことがない。昔なら9月の秋分の日が過ぎれば暑さがおさまったが、近年は秋の彼岸が過ぎても暑さはおさまらず、10月15日くらいになってようやく暑さがおさまる。下手をすると10月下旬になってようやく猛暑から解放された年もあった。

 

 

こうなると、8月のお盆に秋服を立ち上げるという業界の慣習に対して、ジャヴァのように疑問を持つ企業が出てくるのも当然ではないかと思う。

もちろん、季節先取りで投入をして上手く消化できているブランドもあるだろうから、そのブランドはそのやり方で問題ないだろうが、常に気温で売れ行きが左右されているブランドは、顧客が体感温度に応じた買い方をしているのだからそれに合わせる必要性があるだろう。

理論上は、夏服を着る期間が長期化しているのだから夏服を長期間売れば良いということになる。あくまでも理論上は。

 

 

これに対して、例えば縫製工場のスケジュールはどうなるのか?とか素材の手配のスケジュールはどうなるのか?という疑問も提示されている。

また、仮にジャヴァだけが季節MDを変更したとして、入店している百貨店やファッションビルのMDとの不整合はどうするのか?とか、周辺の他店との商品政策のズレはどうするのか?という問題も出てくる。

ジャヴァ1社だけが「夏服の販売期間を長くしました」というだけでは済まないことも明白である。

 

 

 

とはいえ、個人的にはこういう模索は評価をしている。

理由は、体感温度で衣料品を買う人が増え(全員ではないが)ているのに、商品の季節MD が従来通りを墨守していても実際には売りづらさが増ましている。

さらにその上に業界では「プロパー(定価)販売」を重視する傾向が強まっており、一部のプロパー販売比率信仰は過剰ともいえるほどに高まっている。なのに、その一方で体感温度に合わない物をゴリ押しで定価販売し続けても購買率は高まるどころか、余計に低下する。

1、年々高温化する気温

2、体感気温購買の普及

という背景があるにもかかわらず、従来型の季節MDを墨守しながらプロパー販売率を高めろというのは無理ゲーではないか。

ジャヴァの提案が今後業界標準になるのかどうかはわからないが、個人的には検討してみる価値があると思っている。

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