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南充浩 オフィシャルブログ

レアスニーカーブームが沈静化してスニーカーは生活に定着した

2024年4月26日 企業研究 2

スニーカーブームは終わったという関係者からの嘆きの声をメディアで見るたびに「アホくさ」と思ってしまう。彼らの言うブームとは、主にナイキの復刻版や限定モデル(便宜上レアモデルと総称する)が投機目的転売ヤーを含めて過剰値上がりした状況を指していると当方は理解している。

あんなものの何が良かったのか理解に苦しむ。

当方が愛好するガンプラで言えば、転売ヤーによる買い占めによって争奪戦が起きているような状況であり、自関係者がそれを是とすることが理解できない。

他方「ブームは終わった」と言われる割には着用者数はそんなに減っていないと体感する。特に中高年層の着用比率は男女ともに圧倒的である。スニーカーという靴は、ブームだファッションだという以前に、実用品としてすっかり定着したといえる。今後需要が激減するということは考えられない。冠婚葬祭とビジネス時以外では、一定以上の頻度で全年代がスニーカーを着用し続けるだろう。

 

 

 

ファッショントレンドとして見た場合、たしかにブームのピークは過ぎたといえる。以前も書いたが、若い世代の男女はスニーカーの着用比率が2023年から落ちていると感じる。

ファッショントレンドはスニーカーではなく、ブーツ類、革靴類へとシフトした部分が大きい。それとともに、新たなスニーカーブランドへと移った部分もあると感じる。

その新たなブランドというのが「ホカ」「オン」などのヨーロッパ発のスニーカーブランドである。

トレンドファッションとして主にナイキのハイテクスニーカー系を履いていた層の何割かがブーツなどへ移り、残った何割かが「ホカ」「オン」あたりに移ったという感じである。

厚底シューズにニューウェーブ 欧州勢が急伸、都心に売り場相次ぐ | 繊研新聞 (senken.co.jp)

「ナイキ」が作り出した厚底シューズ人気。そのセカンドウェーブが押し寄せている。代表格は「オン」「ホカ」「サロモン」などの欧州系ブランド。ランナー以外にも支持され、都心では新規店の開業が相次ぐ。

という状況にある。大阪市内の中心部で、通行人の服装をぼんやりと眺めていると、以前ならナイキエアなんたら系を着用していた代わりに、ABCマートの4900円コーナーでは見かけないハイテクっぽいデザインのブランドスニーカーを着用している人を結構な割合で発見することができる。

この「ABCマートの4900円コーナーでは見かけないブランド」が「ホカ」や「オン」である。たしかに昨年ごろから急増していると感じる。

 

 

 

 

 

スニーカーブーム沈静化どこ吹く風 スイス発「オン」、急成長支えるイノベーション

「オン(ON)」のシューズを街で見掛ける機会が激増している。産業としてスポーツメーカーが盛んではないスイスで2010年に創業し、21年には米ニューヨーク証券取引所に上場。レアスニーカーブームが沈静化してイキ、アディダスが苦しむ中、23年の売上高は前年比46.6%増の17億9210万スイスフラン(約3028億円)、純利益は同37.9%増の7960万スイスフラン(約134億円)で、26年には売上高35億5000万スイスフラン(約5999億円)を目指す。

とある。

スニーカーが注目されているが、スポーツ向けアパレルもトータルで展開しており、この売上高3028億円というのはスニーカーも含めた全製品の全世界売上高を示している。

 

 

 

 

 

世界で3000億円の売上高というとまずまずの規模である。一方、最近なにかと不調がクローズアップされ、ホカやオンと比較されているナイキやアディダスだが、売り上げ規模は全く桁違いである。

NIKE,Inc. 2024年5月期 第3四半期 連結決算──微増収、微増益に – Sports Business Magazine スポーツ・ビジネス・マガジン (apparel-mag.com)

NIKE,Inc.(ナイキ社)の2024年5月期第3四半期(6-2月)の連結決算は、売上収益は387億5,600万米ドル(約5兆7,746億4,400万円、1米ドル=149円で換算)、0.9%増の微増収となった。売上総利益率(粗利率)は44.5%(1.0ポイント減)と改善。営業利益は47億6,500万米ドル(約7,099億8,500万円、同)、1.5%増の微増益となった。税引前利益は49億7,400万米ドル(約7,411億2,600万円、同)、0.4%増。四半期利益は42億米ドル(約6,258億円、同)、4.0%増だった。

とのことで、通期ではなく第3四半期連結決算の売上高だけでも5兆7746億円だから、今回特集されているオンの通期決算と比較しても15倍以上あることになる。

要するにオンやホカが少々売上高を伸ばしたところで、実はナイキやアディダスには何の影響もない。ただ、イメージ戦略上は影響を与え始めている部分はあると言えてしまうので、この辺りがファッショントレンドのややこしいところともいえる。

ちなみに靴の売上高はというと、

商品別の売上収益は、主力の「Footwear」(シューズ)が251億9,000万米ドル(約3兆7,533億1,000万円、同)

とある。通期に満たない第3四半期の靴の売上高が3兆75000億円強もある。売上高と販売数量でいえば絶対的王者である。

 

 

オン、ホカの商品価格はスニーカーで1万円台半ば~4万円台、6万円台となっているので、これまでのナイキのレアモデル系とだいたい同じくらいだといえる。価格的にもナイキレアモデル勢がオン、ホカに乗り換えたという可能性は高いだろう。さらに加えて、いくらレアモデルとは言っても、マニア以外から見ればナイキのスニーカーであることに変わりはなく、ABCマートで4900円に値下げされているナイキスニーカーと同じに映る。そういう同一視を嫌うとハイブランド系のスニーカーへ移るか、オン・ホカあたりに移るか、という選択になったのではないだろうか。

ではオンやホカが現在のナイキやアディダスのスニーカーほどに老若男女の全世代に行き渡るかというと、それはあり得ないだろう。結局、あまねく普及するには価格が高すぎる。それこそABCマートで型落ち品が4900円くらいに値下がりして売られていないと全世代に広がることはない。恐らく、オンやホカはそういう広がりを求めていないだろうから、現在の価格帯で愛好家に向けて売り続けるという姿勢を崩さないのではないだろうか。

 

 

 

 

メディアは「読まれてナンボ」「クリックされてナンボ」の商売だから、センセーショナルな見出しを付けるのが常套手段なのだが、いくら「急成長」とか煽ったところで、オンやホカが全世代に広がって現在のナイキやアディダスの位置に立つこともなく、一部愛好家への選択肢が増えた程度だろう。

一般大衆はABCマートあたりでナイキ、アディダス、ニューバランス、リーボックなどなどの大手ナショナルブランドの値下がりスニーカーを今後も変わらず購入し、着用して生活を続けて行くことだろう。

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 comment
  • 立売 より: 2024/04/27(土) 3:52 PM

    情報が少し古いかと。

    nipper目指してみてはどうですか?

  • 偽ずんだもん より: 2024/04/29(月) 11:26 AM

    普段はサンダルなので、スニーカーすらほとんど履きません。
    スニーカーを買う時はおっしゃる通り、量販店で型落ち激安で済ませます。
    デザイン以外は高額なレアスニーカーも型落ち激安品も性能的にあんまり変わらないでしょうし。

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