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南充浩 オフィシャルブログ

新技術をどこよりも早く導入すべき理由はあまりないという話

2024年4月24日 ファッションテック 3

欧米で開発された新技術や新思想に条件反射的に飛びつくことが良いことだというように我が国のマスゴミマスコミは報道する風潮が強いと感じる。

しかし、その新技術や新思想が欧米自身で立ち消えたり、我が国に導入されたものの風土に合わず伸長しないことがままある。

一秒を争って導入しなければ後れを取ってしまうような事物というのは、そんなにたくさんあるわけではないから、新技術・新思想は横目に見ながら、我が国風土に合うのか、自社の顧客に合うのかをある程度検討したうえで取捨選択すればそれで良いと当方は思っている。

 

 

2020年春のコロナ禍が始まる少し前くらいから人手不足を補うためにスーパーにセルフレジ、飲食店に自動券売機を増やすべきだという論調が強かった。

とりわけ先進事例としては欧米や一部東南アジアなどの取り組みが紹介された。

飲食店の自動券売機にしては個人的には賛否半々である。シンプルなものであればあるほど使いやすいと感じるし、多機能にすればするほど使いにくいと感じる。

昔ながらのメニューが書いてあるボタンをポチっと押すタイプの券売機は使いやすい。当方は別に店員と話すことに何ら価値を見出していないので、券売機で済むならそれに越したことはない。

一方、牛丼チェーン系の券売機は使いづらい物が多いと感じる。当方は複雑なサイドメニューやら特別な食べ方やらを頼む気が一切ないのでもっとシンプルにしてもらいたいと思うが、慣れるまでは使い方に苦労する。

そういえば最近は「東南アジアのマクドナルドは券売機が導入されているのに、我が国のマクドナルドはいまだに店員にオーダーするから遅れている」という人をめっきり見かけなくなった。券売機を導入して業務や消費者側が効率化できるなら導入すれば良いし、業務にも消費者側にもメリットが少なければ導入する意味はない。別段、機械導入の国別競争をしているわけではない。

結局我が国のマクドナルドはいまだに券売機を導入していないのだから、導入するに足るメリットがないとマクドナルド側が判断したということだろう。

 

 

食品スーパーのセルフレジも2010年代半ばから徐々に導入され始めて今に至る。

以前にも書いたが、現金投入口の位置や操作方法がそれぞれの機械で異なるから、慣れるまで不便である。機械のフォーマットを全機械メーカーで統一してもらいたいと思ってしまう。

まあ、導入自体には賛成でも反対でもない。有人レジが混んでいてセルフレジが空いているならセルフレジを使うし、セルフレジが混んでいて有人レジが空いているなら有人レジを使う。それだけのことである。

コロナ禍をきっかけにして欧米ではかなり積極的にセルフレジが導入され、一時期は例の国別競争マニアが「欧米では」と騒いでいたが、今度はその欧米でセルフレジ不要論が加速し始めている。

 

 

これは今年3月の直近の記事である。

米大手スーパーで「セルフレジ」を廃止し、有人レジに戻す動き | TABI LABO (tabi-labo.com)

報道によると、米大手小売店「Target」では、セルフレジで一度に購入できる商品数を制限したり、「Walmart」ではいくつかの店舗でセルフレジを廃止。また、英大手スーパー「Booths」でも、同じくセルフレジの数を減らしているという。

とのことだ。廃止理由は、まずさほど人員が減らせないことを挙げている。

たとえば、セルフレジ導入により配備されるスタッフの人数が削減されたものの、会計時のトラブル対応もしなければならないこと。それは機械的なエラーだけではない。日本でもアルコール類の購入時など年齢確認画面が表示されるが、いまだに自動化できない業務については、都度スタッフが介入する必要があるからだ。

次いで万引きの増加である。

さらに、問題視されているのが“万引き”だそう。BBCが報じたところによると、セルフレジを導入してから商品の窃盗件数が増加したと回答した企業も多く、損害規模は売り上げの3.5%ほどに達しているといった報告も。また、LendingTreeが消費者へ実施した調査では、セルフレジ利用者の69%が窃盗が容易になるとの回答も。

とのことで、たしかに、セルフレジの出口に人員を配置していないと万引きできる確率はかなり高くなることは、当方とていつもセルフレジで支払いながら考えている。別に万引きする気はないが、万引きしようと考える奴が増えることは当然だろうと思ってしまう。

 

 

我が国の比ではないほどにコロナ禍以降万引き被害が急増している欧米ではこのままセルフレジは大幅縮小されるか完全廃止されるだろうと当方は見ている。

ちなみに最も当方が個人的に評価しているのが、愛用しているスーパー万代のレジである。ここもたしかコロナ禍あたりを契機に現在のシステムに変えたのだが、現金の支払いだけがセルフに変わっており、それ以外は従来通り有人で行っている。

今まで通りに有人レジで商品のバーコードを読み込んでもらって集計してもらう。そしてその有人レジと直結した後ろのセルフレジで支払いだけを行うというシステムである。

有人レジとセルフを組み合わせており、上で述べたような万引きの確率も下がるし、セルフレジを見張るためだけの人員というのもほとんど必要なくなる。またレジの人と会話がしたいという人(当方は全然必要ないが)はその願望も叶えられる。

結局、2010年代半ばごろに条件反射的に飛びつかずに、数年かけて検討したことが奏功したのではないかと個人的には見ている。

機械導入の速さコンテストではないのだから、いの一番に導入する必要は無い。数年間かけて検討したところで何の問題も無いし検討して自社に適した形で導入することが最も効果的である。ワンテンポくらい遅らせて他社にモルモットとなってもらってから導入した方が失敗する確率が少ないだろう。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/04/24(水) 12:51 PM

    最近、マクドナルドと良く対比されるというか勝手に対抗してるというかのバーガーキングにちょくちょく行きますが、あそこのタッチパネルの注文端末も使い勝手良くない感じがオッサンにはしてしまいます。ま、有人レジもあるんで、そっちで頼むことが多いですがw

    セルフレジとかより壮大な失敗だと、VW社のEV車工場への投資とかヤバいみたいっすね。
    エンジン工場をEV車の工場に20億ユーロ掛けて作り変えたのに、最初はエンジン車とEV車を共通のプラットフォームで行こうとしてたら、EV専用にしないと他車に勝てそうもないと追加で15億ユーロ投資することになっり、更に今度はEV車自体の先行きが不透明になってきてエンジン車も続けないとダメかというすったもんだだそうでw

    ホント、焦って投資すると碌なことにならんのですねぇ。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/04/25(木) 9:39 AM

    完全セルフレジは、両替機を兼ねてるようなもんです
    +盗難対策で、導入費は無限大www

    もっとも合理的なのは電子マネー決済オンリーの
    端末導入ぐらいかな?

    んで、地場系や電鉄系スーパーは会計のみセルフの
    システムをかなり後になってから導入しました

    「小売業特有の熱病」に侵されていない人たちは
    堅実ですね

    万引き対策という点でも、会計のみセルフが最も合理的です

    法令との関係で現金決済を残すのはマストでしょう?
    となると、会計のみセルフ形式で全ての支払い方法に対応
    というのがむこう10年15年で最も確かな方法だと思います

  • sakeparadise より: 2024/04/29(月) 10:44 AM

    飲食店で増えていると感じるのが 席のQRコードを客のスマホで読み→注文するシステム。タッチパネルの設置より大幅コスト減のはず。
    たまに利用する「おすすめ屋」という2時間食べ飲み放題2000円(税抜)のコスパ良し居酒屋。修行のごとく注文するので、いちいち従業員さんを呼ばなくて済むのが便利(しかも提供早い)。レシートを見ると妙な達成感が。梅田 難波にも店舗があります。
    難点 1 出店コストを抑えるためか、店舗周りの環境が悪い(風俗街やキャバなど)。
    難点 2 ランニングコストを抑えるためか、支払いは現金のみ。
    難点 3 若者が多いのでうるさい。→先日一緒に行った友人曰く「お互い還暦すぎてるのだからもっといい店に行こうよ」(笑)。

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