
価格が高いことと着心地が良いことは必ずしも一致しないという話
2024年4月22日 製造加工業 0
個人的な洋服の評価基準だが、似合うか似合わないかという点は除外して
1、着ていて楽なこと
2、少々雑に扱っても破損しにくいこと
3、防水や吸水速乾の機能性があること
4、洗濯機を使った家庭洗濯できること
あたりである。
一つずつ補足していくと、まず1だが、2000年代のようなピチピチピタピタはやっぱりしんどいのでもう2度と着用したくない。あと、昔ながらの製法で作られた生地(ツイードやメルトンなど)でやたらと重いのはいくら高額品でも着用したくない。
次に2だが、衣替えで保管する際に多少失敗しても虫食いなどが起きないような素材や製法であることが望ましい。だから、高級ウールで作られたスーツやジャケット、コート類は嫌いではないが所有したいとは思わない。ましてや高額な物などは論外である。保管に気を使わねばならないから絶対に嫌である。
3だが、別に機能性が無くても構わないが、夏服着用期間が年間の半分を占める現在においては汗っかきには吸水速乾機能は不可欠である。夏以外の期間にまでは吸水速乾機能は求めないが。また最寄駅まで自転車に乗るので、防水ジャケットは大好きである。あと防水リュックも大好きである。
機能性の無い物も嫌いではないが、防水機能と夏場の吸水速乾の2つは個人的には必須で、あとは丁寧にたたまなくてもあまりシワにならない防シワ機能とかはあればうれしい。
なにぶん「丁寧な暮らし」とやらにはこれっぽっちも興味も無いし評価もしていないので、服を「丁寧に」たたむ生活なんてやる気もないので防シワ機能はあれば嬉しい。
4についてはクリーニングに出すのはめんどくさいし金がかかるのでなるべくやりたくないから、洗濯機で家庭洗濯できることはありがたい。どうしてもという場合はクリーニングに出す。それくらいの金はあるが、出しに行くのもめんどくさいし、今度は引き取りに行くのもめんどくさい。また金はできるだけ使いたくないので家庭洗濯できる物が望ましい。
まあ、ざっくりとだいたいこんな感じである。
これらの全て、もしくはいくつかを満たしていて、デザインや色・柄がかっこよければ理想である。さらにそれを着用した時に似合っていればさらに理想的である。
先日、知り合いがスピーチする衣料品業界のセミナーを拝聴しに行った。
その後、懇親会で何人かと雑談したのだが、そのときに、かなり凝った素材のブルゾンを参加した女性が持っておられた。
そのブルゾン談義になったのだが、材質は恐らくは綿100%でかなりの厚手である。イメージとしてはかなり分厚い帆布みたいな物を想像してもらいたい。
刺し子のように生地には全面に細かいステッチが入っている。ステッチを入れることによってコーデュロイみたいな畝を作ろうとした意図があるのではないかと思えてくる。
そして、一面に細かい総柄の花柄プリントが施してある。
一見しただけで、かなり高額そうな生地だと感じる。
少し持たせてもらったのだが、かなり重い。それは当然だろう。綿生地自体がかなり分厚いし、さらに全面ステッチが入っている。重くならないはずがない。感覚的に言えば柔道着の1・5倍くらいの重さがあると感じた。これがポリエステル100%ならもっと軽かっただろう。
ちなみに購入時のお値段を聞くと40万円くらいだったという。40万くらいということなので恐らくは名の通った著名な高額ブランドだろう。
たしかにそれくらいの値段がすることは理解できる。
しかし、当方が仮に資産家だったとしてもそのブルゾンは買わないだろう。多分、同じ商品が4万円でも買わないし4000円でも買わない。
理由は「めちゃ重い」からである。
世間一般で言われるような「軽量化」の追求について当方は価値を見出していない。「従来品は200グラムだったのを今シーズン物は195グラムに軽量化しました」なんて全く意味が無いと思っている。5グラム軽くなったことを誰が判別できるというのだろうか。別に200グラムそのままで何の問題もない。何なら205グラムに増えても何の問題もないほどだ。
しかし、服の重量が1キロとか2キロになると話は変わってくる。そんな重い服は持っていたら腕が疲れるし、着用しても生地が分厚くて動きにくくて疲れる。
実際、その女性も「買って大切にはしているが、重いのであまり着用していない」と言っておられた。
逸品として所有しておくことに価値を見出す人がいてもそれはそれで構わないし、そういう所有欲というものがあることも否定しない。
ただ、当方は着用しない服・着用できない服はいくら高額ブランドでも価値を見出さない。だからそれが40万円でも4万円でも4000円でも買わないのである。
何が言いたいのかというと、このブルゾンが示しているように高額衣料品が必ずしも着心地が良い物とは限らないし、高額素材が必ずしも心地良い物とは限らないということである。製品価格が高くなる理由は様々ある。着心地を追求したから高くなったとは限らないのである。