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南充浩 オフィシャルブログ

踊り場にさしかかった衣料品類のネット通販市場

2024年4月19日 ネット通販 0

業界の大手や有名企業の決算が発表されているが、最近の傾向としては「ネット通販が伸び悩んでいる」場合が増えていると感じる。

個人の体験で言うなら、ネット通販は毎月使っているが、衣料品よりは生活雑貨、家電、生活用品、薬剤・洗剤などを買うことの方が多い。

もちろん、当方は衣料品に対する興味を全盛期の2割くらいまで低減させているから、国民全体に反映できるわけではないということを承知しているが、それを差し引いてもネット通販に慣れてくると使い道が限定されてくる。

その点に関しては多くの人も同様ではないかと思う。

 

ネット通販を使い始めて、長い人ならもう10年以上、短い人でも3~4年が経過している。これだけ使い慣れてくると、使い始めのころのような熱狂的な需要は無くなってくる。人間は飽きるし慣れる生物である。

こと衣料品に関していえば、ネット通販で買うブランドや商品とネット通販では買わない商品やブランドをほとんどの人が使い分けているのではないかと思う。

その結果が、大手や有名ブランド各社のネット通販の伸び悩みや売上高減につながっているのだろう。

例えば、ユニクロである。かつて一部のITイキリ系からはEC化率の低さという訳の分からない指標で叩かれていたが、売上高もこれまで順調に増え、それとともにEC化率もジワジワと上昇し続けてきたが、ここに来て踊り場となったようである。

国内ユニクロ事業のEC売上は6.3%減の743億円、EC化率は15.3%【2024年度中間期】 | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)

ファーストリテイリングが発表した2023年9月-2024年2月期(中間期)の連結業績によると、国内ユニクロ事業におけるEC売上高は前年同期比6.3%減の743億円だった。

連結売上高は同9.0%増の1兆5989億円。国内ユニクロ事業は同2.0%減の4851億円だった。国内ユニクロ事業に占めるEC売上高の割合は同0.7ポイント減の15.3%。

とある。

中間決算の数字なので単純に2倍して通期のEC売上高をザックリ計算すると、それでも1500億円前後というとてつもない金額になる。

それでも現時点ではユニクロといえどもネット通販売上高は1500億円前後が一先ずの限界点ではないかと個人的には感じている。

 

ユニクロもネット通販拡大施策を取っている。しかし、当方はあまりそれに魅力を感じない。当方が認知している施策は、購入金額5000円以上での500円割引ネット通販専用クーポンの配布である。これはジーユーも同様である。

しかし、個人的にはユニクロ、ジーユ―でまとめて5000円以上を買うことは滅多にない。理由は、期間限定値下げか処分値下げのどちらかでしかユニクロとジーユーで物を買わないからだ。

期間限定値下げだと狙っているAという商品は値下がりしていても、狙っていたもう一つのBという商品が値下がりしないことも多々ある。その場合、Aだけを買ってBは値下がりする(期間限定値下げも含めて)まで待つから、結果的に1度の買い物で5000円に到達することがあまりない。

そのため、クーポンが使われずに期限切れになることがほとんどである。

この施策を取り続ける限り、ユニクロのネット通販売上高の天井は1500億円ほどに終わり、これを2000億円とか3000億円に伸ばすことは不可能だろう。

 

 

さて、売上高の規模感は全く異なるがこんな記事もある。

タビオの2024年2月期EC業績、EC売上は1%減の18億8900万円 | ネットショップ担当者フォーラム (impress.co.jp)

靴下の製造・販売を手がけるタビオの2024年2月期における国内EC売上高は、前期比1.0%減の18億8900万円だった。

全社売上高がだいたい150億円内外の企業なのでこの程度のEC売上高になるが、ここもネット通販は踊り場にさしかかっているといえるだろう。

 

また繊研新聞でもこんなコラムが掲載されている。

《めてみみ》OMOの悩み | 繊研新聞 (senken.co.jp)

主力客層は40~50代の女性。比較的高価格帯の商品を販売しているため、元々顧客は店頭購買が主流。コロナ下でEC購入が拡大したが今は自社ECで検索、店頭来店で確認し、購入する流れが顕著になったようだ。顧客との接点が増えても、顧客のチャネルの「使い分け」は少なく、店頭への送客にとどまっているというわけだ。

一番の課題は、どちらのチャネルでも新規客獲得が進んでいないこと。

ある企業の現状をまとめているのだが、性別は違うが同年代の人間としては、主要顧客層である40~50代の女性はネット通販にも慣れて自分の都合の良いように使い分けをしているのだと感じる。

当方とて、ネットで調べて実店舗で買うこともあるし、実店舗で見かけた物をネットで買うこともある。要はその時にどちらが安いか、どちらがポイントが貯まりやすいか、で使い分けている。

以前、たまたま値下げされて5990円になった商品をユニクロの店舗で一大決心の末に買おうとしたことがあったが、ちょうどその時に例の「5000円以上で500円割引ネット通販専用クーポン」が配布されたことを思い出し、買おうと思っていた実店舗でそのままスマホでポチったことがあった。結果として5490円で買うことに成功したわけである。

ネット通販に慣れてきた人たちはこういう買い方を普通にしていると考えられる。

 

ネット通販における初期のイキリ時期は終わったし、コロナ禍による特需も終わった。消費者は一層お得な使い方に慣れてきている。今後、黎明期のようにネット通販が無条件に伸び続けるという状況はあり得ない。これからはネット通販も実店舗同様に売上高の格差が広がって勝ち組と負け組が鮮明化することになるだろう。

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