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南充浩 オフィシャルブログ

人間は同じ物ならなるべく安い方で買おうとする

2024年4月18日 ネット通販 0

洋服も含めてすべての商材は大手になればなるほど卸売りと直販のバランスが難しくなる。

ブランド側とすれば、直販を増やした方が粗利益は取りやすい。しかし、直販も万能の良薬ではない。実店舗にコストがかかるし、ネット通販も最近ではすべてのコストが上昇している。実店舗にしろネット通販にしろ強化すればするほどコストはかさむ。

ユニクロやGAPのように完全に直販に振り切ってしまったブランドは別として、ナイキやリーバイスのように直販も開始しつつも卸売りを温存しているブランドはその時の経営陣の考え方によって両極端に振れやすい傾向もある。物凄く平たい言い方をすれば、トップの思想次第みたいなところがあってどちらが正しいとも言えない。当方はいつも「今度のトップはそういう思想なんやな」と思って眺めている。

 

売上高数億円程度の小規模なブランドなら、バランスは必要なく、卸売りか直販かどちらかに集中しても事業は成り立つが大型ブランドになればなるほど、バランスが必要になる。

そして販売チャネルが多ければ多いほど、価格や値引き率を比較対象されて買われやすくなる。

レイオフを実施した ナイキ 、カナダグース、リーバイス。D2Cビジネスの「拡大」計画に苦しむ | DIGIDAY[日本版]

インフレが進行し、金利が上昇するにしたがい、消費者は卸売も含むあらゆるお得なチャネルから購入するようになった。現在、eコマースの成長は比較的横ばいであるにもかかわらず、Amazon プライムデー(Amazon Prime Day)のような強力なプロモーションイベントは売上を更新し続けている。

とある。

これは米国市場についての記事だが、日本市場も根本は同じである。

日本市場はインフレ突入時期よりも以前からそういう傾向にある。当方は実店舗と複数のネット通販を見比べて最も値下がりしている物か、最もポイント付与率が高い物を買うようにしている。

基本的に人間は誰でも同じ物なら最も安いところで買おうとする。

この原則を忘れてはならない。例えば、完全に同じ銘柄のジュースが定価の自販機、食品スーパー、コンビニで売られていたとして、値段はそれぞれ異なる。定価自販機とコンビニは同等だろうが、食品スーパーはそれらよりも安い。そうなると、食品スーパーに立ち寄りにくいとか、スーパーのレジが異様に混雑していて長時間待たなければならないとか、そういう事情が無い限りはスーパーでそのジュースを買う人がほとんどだろう。

次いでコンビニだろう。

理由はコンビニはポイントが貯まりやすいからだ。最も選ばれにくいのが定価自販機だろう。ただし、設置場所の利便性などでそういうハンデをカバーできる可能性は高い。

洋服や服飾雑貨も同じである。同じ物をわざわざ高く買いたいと思う人はほとんどいない。

 

 

 

同じ物なら安い方で買うという習性を踏まえた上で対策を練るなら、コストや手間暇を度外視すると卸売りと直販で商品を変えるということだろう。

これなら比較対象にはなり得ない。

これを最も成功させているのは、バンダイナムコなのではないかと個人的には感じている。

バンダイナムコの一大コンテンツにガンダムのプラモデル(ガンプラ)がある。コロナ禍以前から、通常の家電量販店や模型店向けの卸売り以外に、ネット直販「プレミアムバンダイ」のホビーオンラインがあった。

もともとホビーオンラインでは、一般店に卸してもあまり売れ行きが見込めないようなマイナーな機種や、既存機種の別色などが販売されていて、ファンの間ではある程度注目されていた。

もちろん、直販のホビーオンラインの方が粗利益も大きいので2010年代後半になると、バンダイナムコもそちらを強化しているように感じられた。

そしてコロナ禍によって、転売ヤーも含めて40年ぶりのガンプラブームが起きた。一般店頭からガンプラがほとんど消え、再販入荷された商品は数日で完売するという状況がやや緩和されたとはいえ、今現在も続いている。

品薄になると欲しくなるというのが人間の悲しい習性のようで、転売ヤーではないファンも実店舗でガンプラを買いながら、さらにホビーオンラインでもガンプラを買うようになっている。

機種によって人気の高低はあるが、人気の高い機種だとホビーオンラインで発売後数分で完売してしまう。人気の低い機種だと数分で完売ということはあり得ないが、それでも発売後から1か月以内には完売してしまう。

生産数量の関係なのか、恐らく莫大な数量を生産している一般店頭用に比べてホビーオンラインは感覚的に30%くらいは価格が高い商品が多い。逆に一般店用モデルの色違いやマイナーチェンジ機種なんかの価格は一般店と同等か少し高い程度である。

あと、ホビーオンラインは以前から今も変わらず、例え何万円買おうと送料は無料にならないのだが、それは卸売店に対するメーカーとしての配慮なのではないかと思えてくる。

 

もちろん、これはガンダムという強力コンテンツを一手に握っているバンダイナムコだからこそ可能であるということは重々承知しているが、ネット直販と卸売りで商品を完全に分けるという手法は衣料品業界でも検討してみる価値はあるのではないかと思いながら、当方は送料無料クーポンを手に入れた時だけホビーオンラインでガンプラを買っている。

 

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