MENU

南充浩 オフィシャルブログ

上場廃止によって中長期的な取り組みが実施されるか?

2024年4月16日 企業研究 3

何事においても、成功するかしないかは「運」と「タイミング」が最も大きく作用するのではないかと思う。

「経営なんて運次第」と言い放ったオジサンが昔おられたが、ある意味でその通りだと思う。ただ、すべてを運任せにすることもまた危険であるため、できるだけ「確実性」を持たせるように最大限努力は必要不可欠になる。確

「人事を尽くして天命を待つ」

というわけである。やれることをすべてやった上で「天命=運」を待つしかない。人間にできるのはそのくらいである。

成功する秘訣の一つは

「運・鈍・根」と言われる。運と鈍感力と根気という意味である。

また

「天の時、地の利、人の和」とも言われる。天の時とはすなわちタイミングとか時流とかそういう意味である。

どちらも「運」と「タイミング」を真っ先に挙げているのだから、いかにそれが重要かということがわかるだろう。

ここまでが前置き。

 

このたび、不振にあえぐサマンサタバサの社長がまた交代した。

サマンサタバサが社長交代、コナカ社長が兼任

バッグブランドのサマンサタバサジャパンリミテッドは4月15日、親会社であるコナカの湖中謙介社長が同日付で社長に就任すると発表した。現社長で、元エステー社長の米田幸正氏は退社する。サマンサタバサはすでに6月27日での上場廃止が決定しており、コナカとの株式交換での経営統合を発表していた。コナカは経営統合により、サマンサタバサの経営の立て直しを急ぐ。

とある。

不振にあえぎ続けているサマンサタバサだがこれまで決して無策だったわけではない。これまでから社長を交代させて何とか回復を模索してきた。

ただ、これまでから繰り返しているように、個人的には

1、女性のハンドバッグ需要が激減している

2、サマンサタバサ的な雰囲気やテイストが時流から外れている

ことが根本的な要因ではないかと思っている。

 

 

 

 

とは言っても、トップによって施策は大きく異なる。団体スポーツでもプレイヤーはほとんど変わらないのに監督やコーチが交代した途端に強くなることもある。

実際に社内でどのような施策が行われてきたのか、社内の雰囲気はどうだったのか、などは知る由もないが、サマンサタバサの親会社のコナカとしては、過去にタイプの違うトップに任せてきたが結果としては上手く行っていないということになる。

今回退任が決定した米田氏が社長就任した際はこんなふうに報道されていた。

サマンサタバサが社長交代、後任にエステー元社長の米田氏を内定 6期連続の赤字で

 

米田氏は1950年10月22日生まれ。伊藤忠商事を経て、2007年にピジョン常務取締役、09年にスギホールディングスとスギ薬局の社長、12年にエステー社長を務め、21年5月からはサマンサの社外取締役に就任していた。

 

とのことで世間一般からは「プロ経営者」と評されている。経歴を拝見するとスギ薬局、エステーと社長を歴任されておられるので、恐らくは薬品系の経営ノウハウは豊富なのではないかと想像できる。個人的には、人はそれぞれ得意分野不得意分野があるので、米田氏は薬品系はお得意だが、ファッション・服飾雑貨系は不得意なのではないかと思っている。

メディア上で有名な各プロ経営者も得手不得手があるようで、経営に成功することもあれば失敗に終わることもある。

そしてこの記事が掲載されたのは、2022年4月14日のことなので、米田氏の任期は2年間で終わったということになる。

 

 

 

では米田氏の前任はどうだったかというと、この報道である。

12月に就任したサマンサ新社長に直撃! コナカ主導の再建策

2019年12月のことである。

 

湖中謙介コナカ社長の右腕でコナカ専務取締役COO(最高執行責任者)兼経営企画室長の門田剛(もんでん・つよし)氏を社長として送り込み、門田氏と湖中社長を含めた4人がコナカから取締役に就いた。門田氏はザラジャパン、アニエスベー ジャパン、アガタ ジャポンなどの社長を歴任してきた、ファッション業界きってのプロ経営者の一人。

 

とある。

こちらの門田氏もプロ経営者だが、ファッション業界に特化しておられる。在任期間は2年半強ということになる。

就任時期を見てわかるようにコロナ禍が始まる直前である。当時は未来のことなどだれもわからないが、後から見れば明らかにタイミングが悪かった。「天の時」を持ち合わせていなかったし「運」が悪かったといえる。

もし、コロナ禍が無ければこの門田氏の施策によって、ある程度の回復ないし現状維持は可能だったのではないかと推測しているがどうだろうか。逆にコロナ禍が無くても同じ結果だったという可能性もあるが。

 

 

それにしても両氏ともに在任期間は少し短いのではないかという気がする。少しの不振ではなく衰勢が止められない状態のブランドなので、立て直すには中長期的な視点が必要になる。そのため少なくとも3~4年程度の任期は必要なのではないかと思う。この両氏が在任した期間は上場企業であったため、口うるさい株主から早期の改善を強く求められていたのかもしれない。

今回、コナカ社長が兼務をすることになったが、きっかけの一つにはサマンサタバサの上場廃止があるのではないか。上場廃止になれば株主から早期の結果を求められることも大幅に減る。良く言えば中長期的な取り組みが可能になる。悪く言えば少々低迷が続いても経営者責任が問われにくくなる。

既成スーツのコナカとレディースハンドバッグ類のサマンサタバサでは、同じファッション系と言えど、テイストや顧客層すべてが異なる。コナカトップのノウハウはサマンサタバサに通用しないと思うが、どのような中長期的な施策が打ち出されるのかを期待しつつ気長に眺めていたいと思う。

この記事をSNSでシェア
 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/04/16(火) 11:28 AM

    門田剛氏、スーツ屋なのにネクタイがちゃんと締められてない時点で駄目だと思う、私はファッション素人w
    でも、南さんの考察どおりに、ハンドバッグ需要と時代とテイストの不一致が不審の主因だとすると、完全に業態変更するしか生き残る道はなさそうですし、そうするとサマンサタバサブランドを続ける意味もなかったりして。ホント、企業経営って大変そうっすね。

    写真フィルムの大手だった米国コダックと日本の富士フイルムなんて、2000年以前は拮抗するような企業だったのに、デジタルカメラが普及して来て10数年でコダックは倒産、富士フイルムは色々と他分野に進出して生き残ってるという明暗の差。当時の経営者がボンクラだったら富士フイルムも倒産していたでしょう。サマンサタバサの運命やいかに・・・

  • 細野 より: 2024/04/16(火) 2:44 PM

    ファッションのことは詳しくないので、的外れだったらすみません。ハンドバッグの会社なのに、ゴルフのアパレルを売っていたり、アクセサリーもアニメ関係のコラボが多かったり、売っているものに統一感がないと私は感じました。それで親会社は背広を売っている会社なのですから、お客は困惑すると思います。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/04/25(木) 9:50 AM

    ゴルフ用品や妙ちきりんなコラボは
    ほぼすべてCamCan全盛時代の名残りです

    中長期的な取り組みとしては、4,5年かけて
    じっくり物の企画生産から撤退する路線じゃないのかな?

    そして最後はロゴプレートがくっついた商品が
    AEONやドンキに並ぶようになる

    VANやアルファキュービックと同じ末路ですよ

    「消費者が実際に購入した平均単価の下落率」では
    バックかばん類が最悪じゃないのかな?

    今の20代なら3万どころか1万どころか
    5千円かける人もそう多くないと思います

    そういう私もヴィトンの1点ものオーダー品から
    パソコン付属品屋のべんりバックになったからなぁ・・・

Message

CAPTCHA


南充浩 オフィシャルブログ

南充浩 オフィシャルブログ