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南充浩 オフィシャルブログ

「日本製」よりも「日本基準で管理された商品」の方が適切では?

2015年1月16日 未分類 0

 このところの円安基調と、中国工場での毎年の人件費の高騰によって、繊維産業も国内回帰しつつある。
とくに縫製の国内工場回帰が鮮明だといわれている。

またクールなジャパンの打ち出しなんかも相乗効果となって、「高品質な日本製を発信しよう」という動きも活発化している。

筆者も国内業者とのかかわりが多いので、国内製造業活性化への取り組みは大いに賛同するところだが、「高品質な日本製」という昨今の打ち出しにはちょっと違和感がある。

例えばデニム生地メーカー、大手のカイハラのように一貫して国内生産を続け、日本人従業員のみで運営してきた企業ならその評価はわかる。
エドウインの東北の自家縫製工場も同じと評せるだろう。ジーンズという粗野なアイテムにしては縫製が綺麗すぎるという逆評価も存在するが。

一方で国内縫製工場の多くは、中国人研修生で運営されている。
近年ではベトナム人やミャンマー人の研修生も増えている。

日本製と言いながら、実質はメイドBY中国人、メイドBYベトナム人というのが実情でもある。
そうなると、日本人・日本企業が技術指導した中国工場やベトナム工場で縫製された衣料品とどう異なるのだろう?と疑問を感じる。

生地メーカーは比較的日本人従業員のみで操業している企業が多いが、それでも一部にアジアからの研修生を受け入れている企業もある。
そういう実情を考えると、こういう政策は実情に沿っていないと感じられる。

「純国産」の衣料品に認証タグ 日本の技術と品質を国内外にアピール
http://www.fashionsnap.com/news/2015-01-14/japan-made-tag/

日本ファッション産業協議会(以下、JFIC)が1月14日、J∞QUALITY商品認証事業の立ち上げを発表した。日本繊維産業連盟(以下、繊産連)による協力のもと、日本の技術力とクリエイティビティの素晴らしさを消費者に的確に伝えることを目的に、認証した純国産の衣料品にオリジナルのタグを付ける。

とある。

ちなみにJFICの三宅正彦会長はTSIホールディングスの会長兼社長でもある。
元はサンエーインターナショナルのトップだった。
JFICの会長の属する会社自体が、中国生産品を主体としているのに、日本製の素晴らしさとかをアピールされても正直素直には受け入れにくい。
「そんなに素晴らしいものなら御社がもっと国産品の取り扱いを増やされてはどうでしょうか?」と質問したくなる。

この記事の文末にもあるように、「国産製の比率は3.6%と低い数字」という状況だが、それなら海外への販売も結構だが国内販売を増進させることの方が重要ではないだろうか。
国内販売が極大化しすぎて頭打ちだから海外へ販路を求めるという状況ではなく、国内販売はまだまだ回復させる余地がある数字である。

話は横道に逸れるが、昨今は百貨店からも国産品に注目が集まっている。
しかし、それは国産品をメイン商材に据えたものではなく、販促催事としてあくまでも自店に彩りを加えるためだけの企画に見える。

しかし、その手の催事に複数出店した企業から結果を聞くと、「『日本の産地』という打ち出しのイベントでは売上高・集客がイマイチだったが、『京都の技』という打ち出しのイベントでは売上高・集客ともに良かった」という報告があった。
消費者の多くは「日本の産地」にさほど興味を持っていないのではないかと思わせられる。

また、他の業者に聞くと、「あの百貨店のあの階層は売れなかったが、1階でやったら売れた」とか「あの百貨店ではいつも売れないが、この百貨店はそれなりに売れる」という報告もあった。

単純に「日本の産地」というだけの打ち出しでは売れず、百貨店との相性や階層の相性も大いに関係している。
反対に言えば、百貨店や階層との相性が良ければ「日本の産地」という打ち出しでなくても売れたのではないかとも考えられる。

また、かつてファッションビル「ルミネ」もセール後倒しを打ち上げたときに、その理由として「国内産地の保護」を訴えていたが、当時、ルミネに入店していたテナントの9割以上が中国産、アジア産の衣料品しか扱っていない状況下にあったのだからこじつけにも程がある。これには失笑するほかない。

これらはいずれも単に販促手段の一つとして「日本製」をブチ上げているに過ぎないのではないか。

そして、そもそも日本製と言われる縫製品の多くが、メイドBY中国人、メイドBYベトナム人であることを考えると、「日本製=高品質」という打ち出しが実情に沿っているとは言い難いのではないか。

昨今の動きを見ているとそんな風に感じる。

個人的には、「日本製」に固執するから実情にそぐわない打ち出しをせざるをないのではないかと考える。
それよりも「日本基準で管理された商品」「日本企業が認めた品質」という打ち出しにすれば、メイドBY中国人だろうがメイドBYベトナム人だろが、実情にかけ離れていない打ち出しになるのではないか。

また、JFICや百貨店、ルミネなどの販促手法については、「売れる」となるとなんでも良いのだから仕方がない。お好きにどうぞというほかない。

最後に

いずれもJFICまたは繊産連傘下の日本法人が申請資格を有し、申請料は「安全・安心・コンプライアンス企業認証」と「縫製企業認証」が1企業10万円で有効期間は5年間、「J∞QUALITY商品認証」では1品番1万円で有効期間は2年間となる。なお、JFICと繊産連の加盟企業は合計すると約1万3,100企業にのぼるという。

とある。

この申請料はどうなのだろうか?
1企業10万円はさておき、1品番1万円という価格設定は高すぎないか?
例えば、特定の数品番のみを申請する場合なら、その企業は数万円の費用で済む。
一方、もし、そこそこの規模の企業が年間50型とか100型を登録しようとしたなら、50万円とか100万円とかの費用が必要となるが、大手を除いた今のアパレル企業にそれが吸収できるだろうか?

もちろん、組織の活動費・維持費やタグの製作費は必要となるからいくばくかの費用の徴収は必要になるが、もう少し安くても良いのではないかと個人的には思える。

じゃあ、いくらが適正だと考えるかと問われると困るのだが。

そして、そもそもこの「タグ」が付くことで競争力やステイタス性が上がるのだろうか。
先の「日本の産地」では売れなかったが「京都の技」なら売れるという証言から考えると、「純日本製」というタグが付いただけではそれほどの競争力はないのではないか。

また、糸を作る材料、綿花・羊毛・石油などほとんどが輸入に頼っている現状を考えると、紡績以降の工程を指して「純日本製」と呼べるのかという疑問も新たに出てくる。

繰り返しになって恐縮だが、やはり「日本製」という打ち出しよりは「日本基準で管理された商品」「日本企業が認めた品質」という打ち出しの方が矛盾点が少なく、だれからも納得されやすいのではないだろうか。

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