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南充浩 オフィシャルブログ

衣料品そのものへの需要が低下しているのではないかという話

2024年4月4日 百貨店 0

何となく、義務感もあって毎月値下がりした洋服を数枚買っているが、もう5年間くらいは「どうしても欲しい」と思うほどの洋服は無い。まあ、値下がりしてて在庫が残っているなら買ってみようかな、程度である。

値下がりしていなければ買わないし、在庫が残っていなければそれで諦める。

正直、加齢とともにすべての意欲は減退している。これは老化によるものだろう。

ただ、当方の老化と同様に世間一般的にも洋服への需要は概して昔と比べて減退しているのではないかと感じる。

もちろん「ファッション好き」と呼ばれる人たちは今も変わらず存在しているが、その人口比率は15年前と比較しても減少しているのではないかと感じられてならない。

 

当方で言えば、毎月のガンプラの新作発売日の方が洋服の新作発売日よりもはるかに重大事項となっている。

当方が交流のある業界の人の多くも洋服を買うよりもそれぞれの趣味に支出の比重を置いている。

 

報道では好調と報道されている百貨店でも、衣料品の売り上げ構成比は減っている。

コロナ禍が始まる前の19年ですら、衣料品の売り上げ構成比率は30%を割り込んで29・3%となった。90年代、百貨店の売り上げ構成比で衣料品は40%を占めていた。19年で変わって売り上げ構成比の首位に躍り出たのは食品だった。

そこそこの富裕層向けのファッション売り場として認識されている百貨店でさえ、コロナ禍前から衣料品の需要は低減しており、食品の需要がそれを上回っていたといえる。

 

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23年計で東京地区百貨店総額は100.6と19年を超えたが、衣料品は91.8と9掛けにとどまり、全国百貨店総額は同94.2、衣料品は86.6と9掛けに届かなかった。

消費税増税前の18年と比較すれば、23年の全国百貨店売上高総額は92.1、衣料品は82.3、化粧品も78.8にとどまる一方、ラグジュアリーブランド雑貨を含む身の回り品は113.1、美術・宝飾・貴金属は137.8と突出しているが、デパ地下人気が衰えない食料品とて91.4と来店客数の減少が響いている。

衣料品の中身も婦人服・洋品の87.7はまだマシだが、紳士服・洋品は76.8、子供服・洋品は65.8と回復は遠く、この水準が定着しかねない。22年来の単価上昇を考慮すれば、百貨店衣料品の国内客数は18年の7掛けを割り込んだのではないか。

とある。

要するに「コロナ自粛全面解禁で百貨店絶好調」という報道が相次いでいるが、衣料品売上高はコロナ前には回復していないということである。ついでにいうと、以前にも書いたが全百貨店合計の売上高も増えているわけではない。毎年店舗数が減少している分だけ、良くて横ばい、普通なら減少という状況が続いている。

メディアの報道は正しくは「残存している都心大型百貨店の売上高だけが絶好調」とするべきなのである。

 

百貨店における衣料品の売り上げ構成比の推移については

90年代は売上総額の40%を超えていた衣料品シェアも年々低下してコロナ前19年には29.3%と30%を割り込み、コロナに直撃された20年は27.0%、21年は25.3%に落ち込み、23年も26.9%とほとんど回復していない。

とまとめられている。

先述した通り「百貨店好調」が連日報じられていたコロナ禍前の19年ですら、衣料品の売り上げ構成比は30%を割り込んでしまっていたが、コロナ自粛全面解禁の23年ですら、衣料品比率は26・9%とさらに比率が低下してしまっている。

百貨店における衣料品の売り上げ構成比は今後も27%弱程度で推移すると考えた方が良いだろう。

売上金額首位の座は食品に奪われ、伸び率の高さはラグジュアリーブランドと貴金属宝飾に奪われているというのが現在の百貨店における衣料品販売の実態である。

ただ、22年以降の顕著な国内外の物価高によって、ラグジュアリーブランドの売上高も減少傾向に転じている。そりゃいくら「価値がある」と言っても高すぎる価格になれば手を出す人は減って当たり前である。

無限値上げなんて通じるはずもない。ましてや、当方を含めた庶民が何十万円もするようなバッグや腕時計を身に着ける意味などあまりない。どうしても欲しい人はここぞという場面で使うための3つ・4つを持っていれば十分だろう。

人気のスーパーブランドを除いてはラグジュアリーの勢いも陰り始めており(コロナ明けインフレも収束も先行した米国では失速が著しい)

 

ともあり、この記事のみならず、各記事や各動画配信でも言及されている。特に不況が悪化した中国でも一部を除くとラグジュアリーブランドの勢いが弱まっているという報道も多い。

 

もちろん百貨店だけで衣料品を語るというのは意味が無いが、そこそこの高い値段帯の衣料品が揃って、富裕層がそこそこ愛用を続ける百貨店でさえ衣料品の需要は明らかに減っているのだから、物価高を除いたとしても概して衣料品に対する渇望感は低減していると考えられるだろう。

中低価格帯でもいくつかの好調ブランドと不調の大多数ブランドという構図が鮮明化している状況が続いているのも、衣料品全体の需要が低下しているからだろう。

「あれもこれも欲しい」ではなく「あれとこれくらいで十分」というのが今の衣料品に対する需要というところではないか。

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