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南充浩 オフィシャルブログ

「ジーンズ復活」というよりも「デニム生地がトレンドの1つ」というのが実態

2024年4月3日 トレンド 0

先日、阪神百貨店梅田本店で開催されたポップアップイベント「デニム博」に知人を訪ねてみた。

今回で8回目となるポップアップイベントで国内のデニムアイテムを得意とするメーカー、一部小売店を集積している。

開催当初はなかなか難航しており、正直続けられるのだろうかと思っていたが、途中にコロナ禍による開催中止もあったが8回目となっているので、毎回相応の売上高が稼げていると考えられる。

ほぼ毎回表敬訪問しているのだが、売り場はいつもそれなりに賑わっている。人混みが嫌いなので土日は絶対に行かないが、平日でもそれなりにお客がいるので、土日は相当賑わっていると想像できる。

デニム博に出店しているメーカーの多くは、大手ジーンズメーカーから独立したブランド、縫製工場や洗い加工場の自社開発PBである。全く独自の経歴で立ち上げたブランドはほとんどない。たまに1つか2つある程度である。

当然、彼らは今でも仕事上、プライベートな交友でも国内の各ジーンズメーカーの動向にある程度詳しい。最近ではジーンズメーカー以外のブランドとのやり取りも増えているのでそちらのデニム関連アイテムの動向にも詳しい。

 

 

昨年くらいから「デニムがトレンド」「トレンドはデニム」などと業界メディアで報道されることが増えた。

消費者としての立場から言うと、メディアが特集するほどの「トレンド感」をデニムアイテムには感じない。逆にデニム生地を使った衣服はトレンドと報道されていなかった時期もコンスタントに売り場に並んでいたし、着用者もそれなりに見かけた。

で、今回の「デニム博」では立ち話ついでに知人の出店者に「実際にデニムはトレンドなの?」と質問をしてみた。国内生産に日々直結しているわけだし、逆にブランドに納めている場合もあるから製造と小売り両方の状況に当方ごときよりはよほど詳しい。

返ってきた答えは「そんな実感は無い」とのことだった。

 

買い物客目線でいうと、スキニージーンズブームが終わった2015年以降、ジーンズの着用者数はメッキリと減った。業界メディアが報道するように2022年ごろからジーンズの着用者数は増え始めたと感じる。

そこが「デニムがトレンド」と言われる所以なのだろうと思う。

ただ、買い物客の立場でいうと、ジーンズの着用者数が減っていた時期もデニム生地アイテムはそれなりに売り場に並んでいたし、着用者も相当数見かけた。

そう、トップスである。デニムシャツ、デニムブルゾン(いわゆるジージャン)のような定番品から、デニムジャケット、デニムコートなどなどである。

あとバッグや帽子などの雑貨類でも見かけた。

買い物客の立場から言うと、ジーンズが全く売れなかった時期でもデニム生地を使ったアイテムはそれなりに見かけたし、何ならデニムシャツなんかは自分自身でも買っていたから、ことさら今が「デニムトレンドの復活」と言われてもちょっとピンと来ない。

 

そして、出店者と話したのだが

「ジーンズはたしかに一時期よりは復活しているっぽいが、核となるスタイルが見当たらないから、大きなブームになっているようには感じられない」

ということもある。

 

以前から書いているように、過去のジーンズブームには必ず核となるビッグトレンドがあった。

90年代前半ならレーヨン混のソフトジーンズ

90年代半ばはビンテージ(風)ジーンズ

2000年前後は細身ローライズジーンズ

2005年は高額インポートプレミアムジーンズ(ブーツカット)

2008年以降はスキニージーンズ

という具合である。

「この1型」さえ製造販売していればある程度は確実に売れたという「核となる型」が過去のジーンズブームには存在していた。

 

2020年代の「ジーンズ復活」にはその「核となる型」が無い。

風俗店のスカウトやマイルドヤンキーの制服みたいになったスキニージーンズ、オーソドックスなレギュラーストレート、そろそろ息が長くなってきたワイドパンツ・バギーパンツ、一部でトレンドと言われているフレアパンツなどなど、パンツのトレンドは多極化・分散化しており、ジーンズも他の素材のパンツと同様に多極化・分散化している。

そうなると、ブランドごと・店舗ごとに求められる型が異なってくる。

新トレンドと目されているフレアパンツ・ゆったりブーツカットとて、2005年ごろの熱狂ぶりとは程遠い。好きな人は穿いているがそうでない人は全く穿いていない。

ちなみに当方は、2005年にブーツカットを散々試してみて体格・体型的に似合わないことを悟ったので、今回のフレアパンツには手を出さない。カネの無駄なので、それならアニメロボットのプラモデルを1つ買った方がマシである。

 

このように見てくると「デニムがトレンド」という言葉は「デニム=ジーンズ」ではなく「デニム素材・デニム生地がトレンド」と捉えた方が適切なのではないかと思う。

デニム生地がトレンドだから各種トップスにも各種ボトムスにも各種雑貨にも使用される。

パンツ類で言うと「多極化・分散化した各型にすべてデニム生地が採用されている」というのが実態であり、決してジーンズが復活したわけではないと考えた方が実状を反映しているのではないかと思えてくる。

 

今後、過去のジーンズブームのように一つの型に集中したブームが再燃するかと問われると、その可能性は極めて低いだろう。成熟化した国内では、今後もトレンドは多極化・多様化・分散化が基本になるだろう。ただ、デニム生地そのものはファッションには不可欠だから、「トレンド素材」「定番素材」として様々な型に使い続けられることになる。

国内の専業ジーンズメーカーがかつてのように大企業化することは2度とないだろう。

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