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南充浩 オフィシャルブログ

残存百貨店は好調だが全国百貨店店舗数は180店舗を割り込んだという話

2024年3月26日 百貨店 1

3月25日に日本百貨店協会が2月百貨店売上速報を発表した。

売上高は4329億円で前年同月比14・0%増となり24か月連続プラスとのことである。24か月連続というと2年間増収が続いているということになる。

「残存」百貨店は好調だといえる。

注目すべきは2月の対象百貨店である。71社/177店舗となっている。

ちなみに1月の対象百貨店は72社/180店舗となっており、1月末に1社/3店舗が減少したということになる。

1月には島根の一畑百貨店や尾張一宮の名鉄百貨店一宮店などが閉店しているため、全国の百貨店店舗数はついに180店舗を割り込んだということになる。

今後、百貨店の新店舗建設はほとんど見込めないことから、全国百貨店店舗数は減ることはあっても増えることはないと考えられる。

全国百貨店店舗数の減少は何店舗で下げ止まるのかというところが最大の注目ポイントになるだろう。

個人的には10年後には150店舗くらいになっているのではないかと推測しているがどうだろうか。

 

ちなみにコロナ禍直前(一部では営業時短が始まっていた)の2019年2月の時点では79社/217店舗あったので、5年間で40店舗が消滅したことになる。

コロナ禍によって撤退のスピードが速まったことは否めない。コロナ禍の3年間がなければ撤退の速度はもっと緩やかなものになっていたのではないかと想像できる。

ゆるゆると時間稼ぎをしている間に店舗の消費環境が大きく変わる可能性もゼロではない。突然何かのブームが起きて百貨店各店舗もその恩恵の余波を受ける可能性もある。

その時間稼ぎができなかったことがコロナ禍による最大の悪影響だったのではないだろうか。

 

もともと、夏冬のバーゲンが完全終了した8月と2月は「ニッパチ」と呼ばれて小売店店頭が最も閑散としている時期だとされてきた。

近年は夏冬のバーゲン偏重の比重が少し緩和されつつあり、新たな販促イベント(ハロウィンやブラックフライデー)も生まれて、少し状況が変わりつつあるが2月の需要はあまり高くないということは変わらない。その2月にあって、前年2月にはコロナ自粛が全面解禁になっていなかったとしても、今2月の伸びは好調だったといえるだろう。

ちなみに売上高4329億円というのは、コロナ禍直前の2019年2月の4220億円、その前年の2018年2月の4290億円を上回っており、24年2月の百貨店がいかに好調だったかということを示している。

 

24年2月の地域別の百貨店業績を見てみると、全国10都市ではほとんどが伸びているが広島だけが9・2%減で6か月連続減収に終わっている。

また10都市以外の地域もほとんどが増収だが東北地方だけが4・8%減で6か月連続の減収となっている。

個人的には広島には土地勘がないので各地の残存百貨店が好調な中、唯一、6カ月連続減収している理由はよくわからない。もしご存知の方がおられたらぜひとも教えていただきたい。

 

さて、メディアでは「百貨店店舗数の減少」と「百貨店好調」が同時に報道されることが多く、百貨店に詳しい人は別としてそうではない人にとっては結構理解が難しいのではないかと感じることがある。

一方で「百貨店好調」が伝えられ、もう一方で「百貨店撤退」「百貨店店舗数減少」が伝えられているという一見すると矛盾とも感じられる状態にある。

整理してみると、

1、好調店と不調店の格差がさらに拡大している

2、好調店の多くは大都市都心で、地方・郊外店は苦戦傾向が強い

という状況にある。

そして「残存」している百貨店は好調で多くはコロナ禍前を上回りつつある。

だが、伸び率だけで比較すると目測を誤ることがある。

例えば、今回引用した2018年2月と2019年2月の百貨店売上高だ。

先述した通り、2018年2月は4290億円、2019年2月は4220億円となっていて、2019年2月の方が70億円減収している。にもかかわらず、2019年2月は前年比0・4%増と発表されているのである。

実はこの数字は「店舗数調整後」の増減比率なのである。1年間で店舗数が減少する(過去には増えたことも)ため、店舗数の増減を調整してから昨年対比を割り出している。

2018年2月の店舗数は80社/225店舗、2019年2月の店舗数は先述した通り79社/217店舗だから、1年間で8店舗減少しているということになる。この8店舗減少分を調整して計算したものが2019年2月の0・4%増だと考えられる。

だから、増減比率だけを見ていると誤ることがあるわけである。

ただ、2024年2月の売上高は金額ベースでも増えているため、残存百貨店の好調は本物で間違いないといえる。

 

この好調が続けば、百貨店の年間売上高も幾分かは回復することが可能だろう。しかし、ピーク時の9兆円台に戻ることはあり得ないと考えられる。

理由は店舗数はこれから減少するばかりだからだ。いくら、残存している大都市都心店が好調だと言っても、各店舗が大幅に何千億円も増収することは不可能だし、伊勢丹新宿店が年間売上高1兆円を達成することもあり得ない。

となると、百貨店全体の売上高は増えたとしてもピーク時の9兆円台に戻ることはない。

今後百貨店は売上高を大幅に増やすことよりも営業利益率をいかに高めるかを真剣に考えなくてはならないだろう。百貨店に限らず売上高にのみ注目している小売業は得てして経営基盤が弱い。恐らく「著名ブランドを真っ先に導入する」ことにのみ熱中していた過去からの方針をそろそろ見直すべきだろう。基本的に百貨店の営業利益率は大手量販店(GMS)よりも低いくらいなのだから。

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 comment
  • 大阪のオバチャン より: 2024/03/26(火) 1:33 PM

    >個人的には10年後には150店舗くらいになっているのではないかと推測しているがどうだろうか。

    百貨店の数は、それ以上に減っているように思います。
    地方の店舗は、持ちこたえられないのではないでしょうか。

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