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南充浩 オフィシャルブログ

3度目の不祥事でもSNS上で炎上しない高いステルス機能に驚いた話

2024年3月22日 企業研究 0

若い女性向けのプチプラ服販売のネット通販サイト「GRL(グレイル)」を運営するGIO(大阪市西区)が公正取引委員会から下請法違反で勧告された。金額は総額で8200万円である。

 

ECサイト「グレイル」運営会社が下請法違反 下請事業者に対して合計で約8200万円を減額

公正取引委員会(以下、公取委)は3月19日、ヤングレディス向けECサイト「グレイル(GRL)」を運営するジオ(GIO)社が下請代金から合計で約8200万円を減額したことが下請法違反に当たるとして、勧告を行った。ジオ社は減額した額を1月31日までに支払ったという。

ジオ社は、下請事業者1名に対して、下請代金の支払いまでの期間を短縮する代わりに「値引き」と称して、下請代金から総額で約1527万円の減額を行った。

また、同社は下請事業者13名に対して、同社が製造を委託している商品の一部について、サンプルの納期が遅延したこと、商品に瑕疵があったことなどを理由として商品を受領したにも関わらず「委託取引」と称して商品を販売するまで代金の支払いを保留し、支払期日を過ぎても代金を支払わなかった。さらに、保留していた下請代金を支払う際に、「値引き」と称して総額で約6678万円を減額した。

とのことである。この2件の合計金額が8200万円というわけである。

下請法違反は衣料品業界ではちょくちょく起きるが、驚くのはこのGIO社が不祥事を起こすのは3度目という点である。

WWDの記事の末尾にも触れられているので引用する。

ジオ社は2015年、「スナイデル(SNIDEL)」などの模倣品を販売したとして当時の代表取締役が不正競争防止法違反で逮捕されている。また、16年には架空のインターネット広告宣伝費などを経費に計上し、12~25年の法人税計4700万円を脱税したとして大阪国税局が告発している。

とのことで、どちらもまだ記憶に新しい。

・2015年 模倣品による不正競争防止法違反 当時の社長逮捕

・2016年 13年間に及ぶ脱税

・2024年 下請法違反

今回は8年ぶり3度目の不祥事ということになり、ちょっとした強豪校の甲子園出場経歴みたいになっている。

で、今回のWWDの記事には気になる箇所がもう一つある。

下請法は、取引当事者の資本金の額と取引内容に応じて適用の対象範囲が決まるが、グレイル社の担当者はWWDJAPANの取材に対して「(資本金に関する区分の)認識が甘かった」と述べ

とのことだが、ザックリ言うと、資本金の大きい会社が自社よりも資本金の小さい会社に対して不利な条件を強要すると下請法違反に問われるのだが、資本金が同等か大きければ問われない。(あくまでもザックリ)

以前に当方が見知っている生地工場が某アパレルから発注生地の未引き取りや違法返品されて困っていることがあった。そこで公正取引委員会に下請法違反で訴えたわけだが、資本金が同等だったので下請法違反は成立しなかったことがあった。

このことを頭の片隅に入れて先の一節を読むと、到底反省しているようには読めなくなってくる。文章が正確だったと仮定すると「資本金に関する区分が甘かった」と言っているのであれば、区分外の資本金(自社と同等かそれ以上)の取引先には今後も不利な取引条件を押し付けると読めてしまう。もちろん、日本語の解釈は様々あるだが、少なくとも当方にはそのように読めてしまう。恐らく同様に読めてしまう人は当方以外にも相当数いるにちがいない。

ちなみにGIO社の資本金は3000万円、22年の売上高は324億円と発表されている。

それにしても不思議なのは、今回の下請法違反のニュースはYahoo!ジャパンのトップページに掲載されたにもかかわらず、SNS上では炎上していないことである。

現在些細なことでも炎上するSNS上でこれほどの不祥事の多さ(8年ぶり3度目)にもかかわらず、ほとんど炎上していないのは何故だろうか?全く不思議である。

例えば、以前、セシルマクビーがテレビ東京系の経済番組で下請け工場に過酷な条件を突き付けているかのような放送回があったが、その際はSNS上で大炎上していた。

今回はそれと同等、過去の不祥事も含めるとそれを上回るのだがGRLが攻撃されている様子はSNS上ではほぼ見られない。

ここからはあくまでも仮定になるが、GRLはその売上高の多さ(324億円)に反して、ブランドとしての存在感が著しく低いからではないだろうか。

また、個性あふれる過去からの企業としての振る舞いに反して、ウェブ上やSNS上の振る舞いは無個性・没個性に徹している。

これらのことによって、炎上から免れているのではないかと思う。もし他の理由を思いつく方がおられたらぜひともご意見をいただきたい。

また売上高324億円というと国内アパレルとしては中堅規模ということになるが、大手と呼ぶには足りない。そうなると、現時点での支持者・顧客はマス層よりも少ないから知名度も大手やナショナルブランドに比べると少し低い。繰り返し報道されやすい大手に比べると、例えばターゲット外である中高年男性層にはGRLという名前はあまり知られていない可能性が高い。

それ故、攻撃者の数も少ないとも考えられる。

メディアはともすると、ユニクロ、しまむら、ジーユーなど限定された国内大手数社、ZARAやH&Mのような大手グローバルブランドばかりを日常的に報道するが、GRLは逆に3度の不祥事以外はほとんど報道されない。そうなると、知名度は顧客層にのみ限定されることになる。そのため、GRLのことを知っている人は知っているが、知らない人は全く知らないという状態が出来上がってしまう。これが不祥事の多さに反して炎上しにくい理由なのではないかと思う。

そしていつの間にか売上高324億円にまで成長しているのだから、そのステルス機能はあまりにも高い。本当に高性能ステルス機並みだといえる。

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