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南充浩 オフィシャルブログ

エコな取り組みでも不採算なら長続きさせられないという話

2024年3月18日 企業研究 1

1970年に生まれ、日常的に公害が発生していた70年代に幼少期を過ごした当方としては、環境対策は重要だと考えている。

しかし、現在の科学技術力で何もかもを一挙に解決できないことは現実を見れば一目瞭然である。少しずつ科学技術を進歩させる必要はあるしそのための開発研究は必要不可欠である。

2011年の東日本大震災で、太陽光発電が救世主のように祭り上げられたが、それから13年経過した現在、太陽光発電パネルの弊害が大きく認知されようとしている。(というか、当方は元々「行き過ぎた太陽光発電信仰」はアホだと思っていて何度も書いている)

現在の科学技術では、無から有は作り出せないし、有を無に帰すこともできない。

これは破損した太陽光発電パネルが処分できないことや、EVの劣化したバッテリーの処分ができないことが示している。分子を結合させて物体を作り、また分子に分解するという技術が確立されない限りは完全なるエコな取り組みは完成しない。

 

そんなわけで、太陽光発電に限らず、衣料品や服飾雑貨においてもエコでSDGsな商材や取り組みを過剰に持ち上げる報道については以前から懐疑的だった。

繰り返すが環境対策は重要だという認識は前提としてある。しかし、何もかもが一挙に解決されるかのようなプレゼンや報道はミスリードを引き起こしやすいので危険だと言っているのである。

 

衣料品や服飾雑貨におけるエコでSDGsな商材や取り組みだが、華々しく登場した割に忘れ去られていたり、経営破綻したりする例が徐々に増えてきたと感じる。

シンデレラにかけられた魔法は真夜中の12時には解けてしまうのである。永遠には続かない。

今年2月末にスウェーデンのリサイクル素材ベンチャーだったリニューセルが経営破綻した。

リニューセルが経営破綻 スウェーデンのリサイクル素材ベンチャー | 繊研新聞 (senken.co.jp)

スウェーデンのリサイクル素材ベンチャー、リニューセル(ストックホルム)が経営破綻した。綿などの古着をパルプにした「サーキュロース」を製造し、ザラ、H&M、リーバイスなどと協業を進めていた。

2月27日にストックホルム地裁に破産申請し、決定した。同社は12年にスウェーデン王立工科大学のイノベーターによって設立され、20年には同国ナスダック市場にも上場している。

22年12月にはレンチングと5年間で8万~10万トンのサーキュロースを供給する契約を結んだ。日本のダイワボウ、米イーストマンなどとも、原料供給で提携していた。

一方、今年1月に人員削減を含むリストラ案を発表するなど、経営状態は厳しかったとみられる。2月には23年度決算の報告を2度にわたって延期していた。

 

とのことである。

創業から11年で経営破綻したわけだが、2020年春からの世界的コロナ禍での需要減という予期せぬ大事件はあったが、大手ブランドや大手繊維メーカーと定期的な供給契約を結んでいたにもかかわらず、経営破綻したということはコスト構造に無理があったのだろう。

リニューセルのコスト構造は分からないが、基本的に再生原料の製造原価は高くなる。製品を一度崩してさらに繊維化するわけだから、単純に考えて「製品を崩して繊維化する」という工程自体にすでに工賃が発生してしまうし、その作業は恐らく通常の原料(綿花・羊毛・石油など)を繊維化するよりも難しいから工賃が高くなってしまうと考えられる。

となると、素材やそれを使った製品は当然割高になってしまう。

割高な素材やそれを使った割高な製品がずっと、永続的に買われ続けるというのはなかなか無理のある設定だと言わざるを得ない。

多くの人が定期的に買いなおす・買い足すには割高な製品は向いていない。

 

一時期、エコだSDGsだと過剰に持ち上げられていたブランドでも経営難が続出している。

オールバーズが1年で2度目のトップ交代 新CEOに聞く再建への道のり

同社の2023年度第4四半期決算によると、オールバーズの売上高は前年同期比14.5%減の7200万ドル(約100億円)。純損失は5680万ドル(約84億円)で、通期では売上高は前期比14.7%減の2億5410万ドル(約375億円)、純損失は1億5250万ドル(約224億円)だった。

とのことで、営業利益額などは報じられていないが、黒字だとしてもごくわずかな金額だろうし、赤字でも全くおかしくないだろう。

 

ヴァーナチオ新CEOによるとオールバーズは昨年、在庫状況の改善とコスト削減を実現するとともに、新商品の導入、そして物流の改善に取り組んだという。なお23年5月、同ブランドは、22年8月の8%に続き、従業員を9%削減することを発表していた。

 

地球環境には優しいのかもしれないが、従業員にとっては全く優しくない実にアメリカらしい経営だといえる。

なお、当方はオールバーズのスニーカーはデザイン的に「極めて普通」だと思っており、全く良さがわからない。

 

工賃などを透明化したことで2010年代半ばから我が国でも大きな話題となったエバーレーンも近年、特に国内ニュースでは存在感が皆無である。

直近の国内報道といえばこれだろうか。2020年4月の記事だからコロナ禍が原因だろうと考えられるので仕方のない側面はある。

 

エバーレーンが従業員約300人を一時解雇 「説明もなくある日突然解雇された」と一部従業員から不満の声

その後、このブランドは創業者が退任し、プロ経営者がその地位に着いたが、依然として赤字のようである。この記事は23年4月に掲載されている。

「当社は黒字化に向かっている」: エバーレーン CEO、アンドレア・オドネル氏

 

「黒字化に向かっている」というくらいなのだから現状は赤字であることは明白である。しかも日本よりも早期にコロナ自粛を解禁したアメリカにあって23年4月時点で赤字なのだから、商況が厳しいことは言うまでもない。

 

エコやSDGsは理念や目標としては理想的なものが多い。しかし、実際にコスト構造や商材自体の製品力が伴っていないとどんなに華々しく登場して一時的には時代の寵児になっていても、いずれは赤字転落したり経営破綻したりする。

エコとかSDGsとかが大々的に叫ばれて10年くらいが経過してきたが、地力の無い企業やブランドは崇高な理念を掲げたまま実態は伴わずに今後さらに淘汰されることになるだろう。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2024/03/18(月) 12:52 PM

    YouTubeで北村雄一っていうサイエンスライター氏の動画が独自目線で面白いんですが、その人は「太陽光発電とかの再生可能エネルギーはそもそも収支が合わない」って話してましたw
    https://youtu.be/d0oqpiTyY1E?si=WyNo1-sQ0G1T97Ll

    イラスト含めて全部自分で作ってる動画だそうで、ナレーションも自分でやってて聞き取りにくかったりしますが、生物学、経済学、工学とか多岐にわたる内容で他の動画も面白いっす。

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