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南充浩 オフィシャルブログ

「本格的天然生地の良さ」がマス層に評価されにくいと考えられる理由

2024年3月5日 素材 0

以前から何度も書いているが、ウールのセーターが好きで結構な枚数を持っている。

20年くらい前の物も残していてたまに着用している。ボイコットのウールニットベストなんていう懐かしい物もいまだに残している。

2月も終わったので今冬の気候を総括すると、基本的に暖冬だったが時々短期間大寒波が襲来し、寒暖の差が激しい冬だったといえるだろう。

先日の寒波で、暖房をほとんど点けない当方だが薄手フリースの重ね着では寒すぎてちょっと耐え難い日があった。そこで10年くらい前に買ったユニクロのミドルゲージのウールのカーディガンを羽織ったのだが、そこまで厚手ではないのに寒さが大きく和らいだ。

もちろん体質的なこともあるだろうし、感じ方に個人差もあるだろうが、当方にとってはフリースよりもウールセーターの方が暖かく感じるということを再度実感した次第である。

 

そんなわけで今後も当方は毎シーズン、ウールのセーターを買い足すことになるだろうと思うが、着用回数は年々減っている。

理由は2つある。

1、暖冬傾向

2、メンテナンスがめんどくさい

である。

1の暖冬傾向は説明不要だろうと思う。暖かい日が多いのでウールセーターを着るほど寒くない。

ただ、寒波の日はウールセーターが必須だが、その寒波も一冬の間に何日来るのかという状況である。

 

そして、重要なのが2のメンテナンスがめんどくさいである。

ウールのセーターは洗濯をするのに気を使う。少なくとも一般的なTシャツやスエットのように気軽に洗濯機で回すわけにはいかない。

洗い方には一応注意が必要だし、干すときも物干しざおに無造作にかけるわけにもいかない。

そして、保管に気を使うところもめんどくさい。

ウールは虫に食われやすい。体験したところだとシルクも虫に食われやすい。要するに動物性たんぱく質の天然繊維は虫に食われやすいとまとめることができるだろう。

春になって収納する際には必ず防虫剤を入れるようにしている。これでほとんど大丈夫だが、それでもたまには防虫剤を入れていたにもかかわらず虫に食われて穴が開いてしまうこともある。

その際は泣く泣く捨てるわけだが、防虫剤を入れていても100%保護することができないというのが何ともめんどくさい。

ユニクロで990円に値下がりして買ったウールのセーターならショックはそれほど大きくないが、9000円くらいしたブランド物だったらショックは計り知れない。

そうなると、よほどの寒い日以外はウールのセーターではなく、フリースとか裏起毛スエット、合繊セーターなどを着用するという選択が増える。

フリース、裏起毛スエット、合繊100%セーターなら洗濯や保管の手間や失敗がほぼ皆無になるからだ。

 

近年、休日の男性諸氏の服装を眺めているとフリースや裏起毛と思われるスエット、合繊100%と思われるセーターっぽい何かを着た人がかなり多いと感じる。

いわゆる風合いのよさげなウールセーターを着ている男性はよほどの服好きくらいに限られている。

この理由は暖冬以外では、やはり洗濯・保管の面倒さではないかと思っている。めんどくさいからフリースにしておこうという男性がほとんどではないか。もしくは奥様が「めんどくさいから夫にはフリースでも着せておこう」という感じになっておられるのではないかと思う。

風合いの良さとか温かみとかは理解できるのだが、実際の生活においての洗濯や保管の手間を考えると、ウールセーター好きの当方ですらフリースや合繊100%セーターに傾いてしまっているという現実がある。

 

これはウールセーターに限ったことではなく、あらゆる衣料品に共通の問題ではないか。

例えばジーンズ、ワイシャツ、スーツなどなどだ。

ジーンズというとデニム生地が必要不可欠で、綿100%の厚手デニム生地には何とも言えない風合いがある。総じて男性は14オンスとかそれ以上の厚みのあるヘビーオンスデニム生地を好む人が多い。当方もヘビーオンスデニム生地は好きな方である。ただ、最近はヘビーオンスデニム生地のジーンズを穿くことはしんどいと感じる。また洗濯をしても真夏以外は乾きにくいから不便だと感じる。

ストレッチ混デニム生地や他のジャージ素材パンツ、スラックスタイプなどを穿き慣れてしまうとノンストレッチの厚手デニム生地はしんどいし、重たく感じてしまう。

そのため綿100%ジーンズを穿くことは減ったし、当方と同年配で若い頃にジーンズを穿いていた人たちでも着用回数は減っている。

 

綿100%裏毛素材(いわゆるスエット用生地)も同様だ。

厚手裏毛生地の持つ風合いは分かるし、その重厚感を当方も評価はするが、実際着用してみるとどうかというと重いし、洗濯をすると乾きにくいので不便である。

そのため、合繊100%のダンボールニットの方が着用回数は増えている。

 

いずれも「天然繊維の持つ風合いの良さ」とか「本格生地の良さ」とかそういうことは理解できるが、実際に着用物として見たときには、めんどくさい愛好物になってしまっている。もちろん当方の加齢による精神的な意欲の減退は大いに影響しているところはあるだろう。

しかし、実際に快適で便利だと感じるのはダンボールニットでありストレッチ混デニム生地であり、合繊セーターだったりするのが現実である。

 

当方は一応、繊維関連の製造加工業に携わる人と面識が多い方だろうと思ってはいるが、製造加工関係者がアピールしがちな「天然繊維の良さ」とか「本物生地の風合いの良さ」とかはあまりマス層には響いておらず、ほとんど効果が無いだろうというのが当方の意見である。

それでもたまに響く人、興味を掻き立てられる人もいるだろうが、繰り返し着用するリピーターになるのかというとその中でもほんの一握りしだけではないかと思って見ている。

残った一握りはそれこそマニア層になるのだろうと考えられるが、それは例えばガンプラから入ってそのうちに「タミヤの戦車のプラモデルの奥深さに開眼した」というくらいの希少なマニア層と同じではないかと思う。

もうSNS上では13年くらいその手の製造加工業者の主張を見続けてきているわけだが、それほど効果が出ていない(まったく出ていないわけではない)ことを考えると、そろそろ違う売り文句を考えた方が良いのではないかと思っている今日この頃である。

 

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