寂れ果てたイーマとブリーゼブリーゼに対して低価格昼飲み居酒屋で人流回復をした大阪駅前ビル
2024年3月4日 売り場探訪 7
毎年春になると商業施設のテナント入れ替えがリニューアルと称して行われる。
ただ、10年くらい前からどの商業施設もテナントラインナップがほとんど変わらないという感じになっている。そうなる理由は簡単で、国内でマス規模で売れているブランドが最大でっも50くらいしか存在しないからである。
何事にもメリットとデメリットがあり、どんぶり勘定経営にはデメリットもたくさんあったがメリットもあって、高度経済成長からバブル崩壊直後くらいまでは「実績はないけど面白そうなブランドだから導入してみる」という判断を下す商業施設がけっこうあった。
そのおかげで、一躍脚光を浴びるようになったブランドもあった。その脚光が長続きしたこともあれば短命に終わったこともある。もちろんブランド側もどんぶり勘定経営である。
現在はかなり経営は厳格化されている。メリットはたくさんあるが、デメリットもあって、海の物とも山の物ともしれないようなブランドをテナント誘致するということはほとんど無くなった。
売れ行きの実績や根拠が必要とされるので、必然的に実績のある似たようなブランドが各施設に集まることになる。
その結果、売れているブランドはさらに売れるようになるし、売れていないブランドがメジャーにいきなり踊り出るということは少なくなった。70年代・80年代のようなシンデレラストーリーはもうほとんど見ることはできない状況にある。
そのため、有力テナントが移転すると勢いを失う施設が多い。
大阪市内の人流は梅田に一極集中しつつある。
もちろん難波、心斎橋もそれなりに人流は多くあるが梅田がさらに抜きんでている。少し以前にも書いたが、12月の上旬に知人4人で忘年会をするため、店を予約しようとしていたが、たまたま金曜日の夜だったので梅田で4軒問い合わせてみたが満員で予約することができなかった。仕方なく、難波で探すと1発で予約できた。
忘年会シーズンの金曜日の夜の飲食店の込み具合に梅田と難波でここまで格差が開いているのかと驚いた。
しかし、それほど人流が多い梅田にも廃墟のようになってしまった商業施設が2つある。
イーマとブリーゼブリーゼである。
現状をまとめてくれている秀逸な動画があるのでご覧いただきたい。
イーマとブリーゼブリーゼはいずれも20年くらい前に建てられた商業施設で、2000年代半ばくらいまではフロア面積こそ両方ともさほど広くはなかったが、イケてるセレクトショップがそこそこ集積しており、イキッた感度の高いセレクトショップファンには愛用されていた。当時はイーマ、ブリーゼ、ヒルトンウェスト、ハービスエントなどが集まった西梅田地区はちょっとした「おしゃれ地区」と見なされていた。
ところが、2010年代になると西梅田地区の商業施設はさびれ始める。特に大阪駅に隣接してルクア、ルクアイーレ(元・JR大阪三越伊勢丹)、グランフロント大阪が開業すると寂れ方に加速度がついた。
イーマやブリーゼにあった有力セレクトショップが根こそぎ、ルクア、ルクアイーレ、グランフロント大阪のいずれかに移転してしまった。人流も大幅に激減した。
テナントは歯抜けになり、動画でも紹介されているようにわけのわからない美容クリニックとか学習塾が入居するようになってしまった。
そうするとさらに来館客は減る。減るからさらに有力テナントは集まらないという悪循環スパイラルを極めているのが現状である。
とはいえ、ルクア、ルクアイーレ、グランフロント大阪も全エリア・全テナントが絶好調というわけではなく、不振テナントもあれば不振エリアもある。グランフロント大阪は南館2階がJR大阪駅とつながっているのですごい人流があるが、南館1階は逆に人があまり来ない。撤退しているテナントも多々ある。
JR大阪三越伊勢丹が不振で早々に撤退し、ルクアイーレにモデルチェンジしたことも記憶に新しい。
イーマ、ブリーゼブリーゼが復活を目的として、ファッションで有力テナントを集めようと思ってもなかなか難しい。ほとんどが近隣の他の商業施設に出店しているからである。では、昔のように無名ブランドを発掘して集積するという手しかないが、それも厳格化された現在の経営では難しいだろう。ほぼ実現不可能である。
ファッション以外のわけのわからない美容クリニックや学習塾を集めるという方針は苦し紛れではあろうが、ある意味で理にかなっていると言えなくもない。
盛者必衰を感じざるを得ないわけだが、近隣には「人流」だけを見ると回復した商業施設がある。梅田駅前第1~第4ビルである。
イーマ、ブリーゼが全盛を極めていた当時、老朽化したこれらのビルは古ぼけていて人流もあまりなかった。たしか第1ビルの1階にはエロ本・エロビデオ販売で有名な信長書店が入店していたが、今もあるのだろうか。今度確認しに行ってみたい。
もともと、上層にはオフィステナントが多数入店していたことから地下1階・2階には飲食店・居酒屋が多数入店していたが、2000年代はそこまで繁盛していなかった。
ところが2010年代半ば以降になると、どんどん新しい低価格居酒屋が出店をするようになり人流が戻ってきた。あらに2020年になると、コロナの影響で各飲食店は深夜の営業を中止する代わりに昼飲みを始めた。そしてコロナ自粛が解禁になってからも昼飲みは定着してしまっている。
そのため、第1~第4ビルは現在は昼間でも居酒屋に人が多数いる状態にある。おまけに価格は安く生ビール180~190円が平均相場となっている。
売上高とか施設のイメージとかは度外視し、人流の多さだけを考えると第1~第4ビルは低価格居酒屋を集積し昼飲みを続けることで回復させることができたといえる。
イーマとブリーゼの回復策としては動画のコメント欄に「アニメショップやアニメグッズショップを集積してはどうか?」というものがあったが、当方も賛成である。もう売れているファッションテナントを集めることは不可能だから、アニメショップやプラモデル屋を集積した方が効果的だろう。近隣の施設とも差別化できるし、転売ヤー混じりとはいえ、プラモデルやミニカーの新商品発売日には全国の家電量販店各店舗のおもちゃ売り場にいまだに長蛇の列ができる。ファッション衣料にくらべるとその裾野は明らかに広い。あとは第1~第4ビルのように昼飲み対応の生ビール180円の低価格居酒屋を集積するか、だろう。
商業施設をファッション衣料で活性化という方策はもう過去の遺物になりつつあると感じられてならない。
comment
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とおりすがりのオッサン より: 2024/03/04(月) 2:15 PM
秋葉原なんかだと、ソフマップのフィギュアとかプラモとか売ってるトコは、つねに外国人がわんさか居るので、アニメショップ、プラモ屋とか集めたら結構商売になるのかも?あと、秋葉原だとミリタリー屋も結構多くなってるから、アニメ、プラモ、ミリタリー、トイガン、コスプレとか専門店を集積したら買い回り需要とかで相乗効果出てガッポガッポになったりして。普通のお客さんは近寄らなくなるだろうけどw
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/03/05(火) 9:19 AM
通りすがり菊蔵氏>ミリタリー屋
するどい観察眼ですね
このカテも固定層かつ少なくとも~5年は
カネを落とすのが持続するのは間違いないただ、服が絡んでくるから、面積が必要なのがネックです
なので、ターミナル駅から数駅のマイナー駅
もしくはターミナル駅徒歩15分なんてところの方が
長続きしていたりもしますただ、観光客には、解りやすい立地ですよね
いまどきサープラスなら鎌田か日暮里じゃあるまいし -
とおりすがりのオッサン より: 2024/03/05(火) 11:09 AM
>南ミツヒロ的合理主義者さま
わたしが元ガンマニアだから目に付くってだけかも知れませんが、秋葉原にも結構ミリタリ屋が増えましたね。アニメヲタ、コスプレマニアもキャラが銃使ったりしてガンヲタとかミリヲタとかと被る所もあるから、1か所で全部揃ったら良さげな気はしますw
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/03/06(水) 8:57 AM
なつかしい名前だ>ミリタリ屋
まだあるのでしょうか?ただ、今求められているのはそういう
80年代型サープラスショップではなく
おっしゃる通り、重複するヲタジャンルが全て
1エリアで揃うショップ群なのでしょうジャンルをまたいだ横の広がりがあるのが特徴か・・・
つくづくホビージャパンは商売がうまいと思いますんで、空港からも東京駅からもアクセスが良いのが
秋葉原となる訳ですな -
とおりすがりのオッサン より: 2024/03/06(水) 4:56 PM
ググったら池袋から移転して、田端でしぶとく営業しているようですw >サムズミリタリア屋
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南ミツヒロ的合理主義者 より: 2024/03/07(木) 7:27 PM
この投稿、読みごたえがありますなぁ。
業界歴が長いが消費者ベースの視座があるからでしょう>10年くらい前からどの商業施設もテナントがほとんど同じ
この「どの」を「全国どこでも」に置き換えちゃいましょう
今や日本全国どの商業施設スタバになか卵にビームスにHoneysですただ、都会とりわけ都内でこれをやっちゃうと、
最終的には利益率がどんどん低下するのが目に見えています
大量の販売員を必要とするのがアパレル、飲食ですから>こうなる理由は簡単で、国内でマス規模で売れてるブランドが
>50くらいしか存在しないからである。南サンがいう50のネームはアパレル飲食アニメキャラ物のジャンルを
合わせて50だと思います。ついでに書店なんかも誰でも知っているアパレルでは、もはや50もネームがありません
>高度経済成長からバブル崩壊直後くらいまでは
>「実績はないけど面白そうなブランドだから導入してみる」
>という判断を下す商業施設がけっこうあったそう、それがPARCOであり西武でした
佐々木系が伸びたのもPARCOのおかげだし、
らでぃっしゅぼーやとかあの手の新セグメントも
西武が外売りの場所を貸したからですけど今では、食品売場まで、どのデパートもどの商業施設も
同じネームしか入っていませんこれでは食品の祭事にひとが集まってあたり前ですよね
無印のようにアパレルもやるなんでも屋を含めると
そうだな、20社ぐらいしか、社員を雇って多店舗展開して
3年先まで見通しを持てる会社がないと思いますすごい時代になったものですね
マァ半実用品的色彩が強まる今の時代では、
絶対的な技術力が必要でない軽工業製品のほうが
むしろ収れん・集約化されますわな
関西も、ですか・・・
立地はいいが、さびれた商業ビルの末路はどこも一緒です
特等席を格安重飲食に貸すようになる
しかし上のフロアは空いたママ・・・
そして数年後には、ビル全体がさらにバッチイ感じになります
物販はムリだと思います。ボロとはいえ、立地のせいで
賃料が高い。あの賃料水準でペイするのは飲食だけです
ただ、プラモもキャラ物も、商品の体積比で価格を見ると
そう場所はとらずに売上が上がる。しかも買い手は南サンを
見るまでもなく、経済観念がかなり変わった層www
(注:いわゆる経済観念がないとかカネがない層ではない)
となると、どうでしょう?先行事例求ムといったところか