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南充浩 オフィシャルブログ

ファッション性を強める作業服業界でワークマンの強みの1つは無くなりつつある

2024年2月15日 トレンド 1

ワークマンの下方修正と減益が話題となっているが、今後のワークマンは既存客層はさらに分散すると個人的には見ている。

もちろん、ワークマンがすぐさま赤字転落をするとか大幅減収に陥るとかいうことはあり得ないが、少なくとも急成長期は終わり停滞期に突入するのではないだろうか。

理由は、ワークマンのこれまでの強みがワークマンだけの物ではなくなりつつあるからだ。

ワークマンの強みは

1、低価格・高機能

2、作業以外にも使えそうなそこそこマシなデザイン性とファッション性(一部にカッコイイ物もある)

3、フランチャイズ(FC)による多店舗展開

4、圧倒的な知名度の高さ

の4点に集約されると考えられるのだが、1と2は、もうワークマンの独占物ではなくなっている。

 

例えば、先日Amazonで108円に値下がりした指無し手袋を買ったメーカーだが、おたふく手袋という。

大阪府箕面市に本社を置く大正15年創業の老舗である。社名通りに作業用手袋メーカーとして立ち上がっているが、近年は手袋から派生して靴下、インナー肌着、作業靴、一部外衣へと商品展開を広げトータル作業服メーカーになりつつある。

この会社の最新デジタルカタログを拝見したのだが、作業服メーカーの中では各ページのデザインはトップクラスにカッコイイと感じる。

2024SSカタログ|INFORMATION|おたふく手袋株式会社 (otafuku-glove.jp)

興味のある方はサイトをご覧いただきたい。

インナー機能肌着、靴下、手袋、安全靴がメインで一部の外衣はTシャツ、ベスト、半ズボンあたりしかないが、逆にこの外衣の少なさが、ページのファッション性を高めていると当方は感じる。

最近、ワークマンの成功に触発されて作業服メーカーのカタログは軒並みシャープでカッコヨくなっている。しかし、多くの作業服メーカーは作業服がメイン商材であるためどうしても作業服の掲載が増える。当たり前の話だが。

作業服はファッション性を盛り込んだと言っても、やっぱり詰まるところは作業着なので作業服らしいデザインにならざるを得ない。それをいくらカッコイイモデルに着せてカッコイイページデザインにしたところで、やっぱり「カッコイイ作業着のページ」にしかならない。

フラットな目で見ると、カッコイイけどやっぱり作業着でしかない。しかし、おたふく手袋の場合は外衣が少なく、しかも本格的作業着ではないからどちらかというともう少しカジュアル・スポーツカジュアル寄りのデザインになる。おまけにメイン商材は手袋、機能性インナー、靴下だからこちらのデザインはさほど作業着臭は無い。

となると、他の作業服メーカーよりもカジュアルチック・スポーツカジュアルチックなページデザインになり、カッコヨサがわかりやすくなる。

 

このほかにも以前にご紹介したTSデザインやバートルなどファッション性を高めた作業服メーカーは10年くらい前から増えてきており、ちょうどワークマンの躍進がそれをさらに助長したと感じられる。

実際、ワークマンに比べると売上高規模ははるかに小さいがバートル、おたふく手袋ともに増収を続けており、両者とも売上高100億円が視野に入ってきた。

おたふく手袋 5年後に売上高100億円へ | THE SEN-I-NEWS 日刊繊維総合紙 繊維ニュース

作業用手袋製造卸のおたふく手袋(大阪府箕面市)は今期(2024年3月期)、過去最高となる売上高78億円強(前期74億4千万円)を見据える。

ちなみに昨年夏の時点では売上高は75億円超と見込まれており、これが過去最高とのことだが、それをさらに3億円上回る見通しになっている。

一方、作業服小売店も続々とファッション化している。

関西のワークウェア専門店「キーポイント」が全国展開 FC中心に4年後、5倍の70店超へ | 繊研新聞 (senken.co.jp)

アグロワークス(神戸市)はワークウェア専門店「キーポイント」の全国展開を始める。現在は関西に12店だが、4年後の28年3月期にはFC60店、直営16店を目指す。オリジナル商品の拡充、OMO(オンラインとオフラインの融合)など体制が整ってきたことから、FC中心に事業を拡大する。

キーポイントは「かっこいいと仕事が楽しい」をキーワードとし、プロの職人を対象とする。ワークウェアとともに、職人が好むようなデイリーウェア、「アヴィレックス」などのブランドも多く揃える。

 

とのことで、作業服以外に、職人が好みそうなアヴィレックスなどのカジュアルブランドも置いているというから、作業服とカジュアルブランドのミックス店である。客単価だけでいうとアヴィレックスは作業服の5倍から10倍くらいするので、平均客単価はワークマンに比べると相当高いだろうと推測される。

また

今春には、カジュアル寄りベーシックデザインで価格を抑えた新ブランド「スーリオ」を立ち上げる。さまざまなアイテムがあり、インナーのコンプレッションウェアは1000円前後を予定している。24年春夏の自社商品比率は前年より40ポイント高い50%を計画する。

 

とオリジナルブランドの投入も企画しているようだ。ただ、気になるのは自社商品比率を一気に40ポイントも高めて構成比50%にまで達する計画である。あまりにも急激に高めすぎてはいないだろうか。

 

このほか、大阪を拠点にチェーン展開する「たまゆら」なんかもファッション性を高めた作業服商材の比率を高めていると業界内からは聞こえてくる。

 

このように見てきて、冒頭に戻るのだが、ワークマンの強みである4点のうち1の低価格・高機能と2のそこそこマシなデザイン・ファッション性というのは、メーカーレベルでも小売店レベルでもすでに追いつかれてしまっている。

3の多店舗展開と4の知名度の高さはワークマンに一日どころか三日くらいの長があるのだが、1と2に関してはもうワークマンは差別化できない状況にある。

 

ワークマンにはこれまでの岩盤支持層だった「ガチ職人客層」からの不満の声が上がっていると言われている。しかし実際はガチ職人客層は何もワークマンに固執する必要はなく、たまゆらやキーポイントのような地域チェーン店を使っても良いだろうし、バートルやおたふく手袋のネット通販(Amazonでの販売も含む)を使用しても構わないのである。だから、ガチ職人客層はワークマンから分散する可能性が高いと考えられる。

また消費者についても同様だ。圧倒的な多店舗展開と圧倒的知名度の高さでワークマンを選ぶ人はまだまだ多いだろうが、バートルやおたふく手袋、キーポイントやたまゆらの知名度がもっと高まればどうなるだろうか。恐らくこちらも分散傾向となるだろう。

 

商品デザインやサイト、カタログデザインをカッコヨクファッショナブルにするというワークマンの手法が有効だということがわかってしまえば、当然他社も盗作ではない範囲でファッション化させる。そして現在のカジュアルブランドやモードブランドが同質化しているようにファッション化という点だけでは差別化できなくなり横並びにならざるを得ない。

そうなると、一般客層も分散化傾向になることは容易に推測できる。

「ワークマンは職人客層の不満を気にしすぎる必要は無い」という論調の記事を読んだことがあるのだが、問題点はそこではない。同業他社と店舗数と知名度以外で格差が無くなってきているところが今後のワークマンの大きな課題なのである。

今後どのような施策を取るのか注目しながら眺めてみたい。

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 comment
  • 元古着屋 より: 2024/02/29(木) 11:37 PM

    小資本FC+そのFC立地モデル、に加えて本部の権限が低い&ネットでカニバらない仕組みが出来てないなどのコンボで強みすら活かせないのかなと。
    商材は違いますが駿河屋(本部強い)のようなネット販売の一本化が出来れば良いのにと他人事です、はい。

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