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南充浩 オフィシャルブログ

ソフトジーンズのリバイバルでもユニクロに先行されてしまったという話

2024年2月14日 トレンド 0

マス層のズボンのトレンドを見ていると、多様化しているとはいえ、ワイドシルエットのパンツが増えたと感じる。極太でなくともワイド気味とかややゆったりというシルエットも多い。

スキニーも着用者は多いが、全盛期の頃のような「細ければ細いほどかっこいい」という気風は無くなっていると感じる。

以前にも書いたが、スキニーよりもややゆとりのあるスリムストレートあたりが細身ズボンの主流ではないかと感じる。

 

ズボンがワイド化すると、タック入りというディテール採用も当然増える。

ノンタックよりはタックを入れた方がおさまりが綺麗に見える。だから、ジーユーやアダストリアでもタック入りワイドシルエットパンツという商品も増えた。

カジュアルブランドなので素材は綿100%チノだったり綿100%デニムだったり様々だが、こうなると当方くらいの古い人間になると「あの素材」を思い出さざるを得ない。

そう、レーヨン系素材である。今はセルロース系繊維素材と呼べばよいだろうか。

今のワイドシルエットパンツ、タック入りワイドパンツを見ていると90年代前半に全盛を極めたレーヨン系デニム素材を使ったソフトジーンズブームを思い出してしまう。

昔はレーヨン混、その後にテンセル混が登場したが今だとレーヨン混、テンセル混のほか、モダール混、リヨセル混、キュプラ混などの素材バリエーションも考えられるだろう。

製品価格の高低によって使用素材を考慮すれば済む話である。

 

90年代前半に5ポケット型はそのままで使用素材をレーヨン混デニムに置き換えたソフトジーンズが一世を風靡した。ブームの牽引は「ゼロヨンジーンズ」を開発したボブソンである。

この当時すでに売り場に立っていた当方もボブソンの「ゼロヨンジーンズ」を合計で5本くらい買った。

するとそのうちに、ニチメンインフィニティ(現:双日インフィニティ)あたりからタック入りスラックス型のソフトジーンズも店頭に納品されるようになった。

ちょうど同時期にメンズクラブはソフトジーンズ特集を大々的に組んでおり、ボブソンを含む国内5大ジーンズメーカー各社のソフトジーンズを取り上げると同時に、タック入りスラックス型のソフトジーンズも取り上げていた。

タック入りのワイドデニムパンツ、タック入りワイドチノパンツを見ると、当方はどうしても30年前のこのレーヨン混タック入りスラックスを想起してしまう。

だから以前にもこのブログで「ソフトジーンズを復活させるのは今ではないか?」という内容を書いたことがあった。

 

ワイドシルエットのズボンはドレープ感が求められることが多い。ドレープ感というとレーヨン系(厳密にいうと異なるが便宜上キュプラも含む)の素材の特徴となるから、この連想は極めて当たり前だと思っている。

特にボブソンなんかは、このマストレンドを活かして「ゼロヨンジーンズ復活」の販促キャンペーンを張ってはどうかと思うほどである。

ただ、自分が知っている範囲においては、ボブソンを始めとしたジーンズメーカーはもとよりジーユーなども含めてソフトデニム素材商品は復活していない。もしかすると当方の知らないブランドで展開している可能性も高いとは思うが、マスブランドに目に見えるほどの量では展開されていない。

 

そんな中、ユニクロの今春の新作を眺めていたら、こんな商品が提案されていた。

ユニクロ公式 | ドレープデニムタックパンツ(丈標準72~74cm) (uniqlo.com)

素材

[30 NATURAL, 62 BLUE, 65 BLUE] 本体: 59% 綿, 41% 再生繊維( セルロース )/ ポケット布: 65% ポリエステル, 35% 綿 [31 BEIGE] 本体: 59% 綿, 41% 再生繊維( セルロース )/ ポケット布: 100% 綿

使用素材はこんな感じで再生セイルロース系繊維なので、レーヨン系やキュプラ系の素材である。綿59%・セルロース41%なので全盛期のゼロヨンジーンズのようなドレープ感があるのだろうと推測される。

別段どのブランドと顧問契約やアドバイザー契約を結んでいるわけでもないし、利益関係もないのだが、正直「またユニクロに先んじられてしまった」と思った。

ワイドシルエットでタック入りディテールとくれば、レーヨン系素材のドレープ感と好相性なので、早急に提案した方が良いということは当方のような外野でも思いつくことだった。おまけに今の40代以下の世代は30年前のブームを知らないから目新しさもある。ドレープデニムとは上手いこと名付けたものだ。

それでも今まで当方の目に付く範囲では提案されてこなかった。

マスブランドではユニクロが最も目に付く形で真っ先に今回リバイバルさせたといえるだろう。さすがに機を見るに敏である。

レビューを見ると低評価もあるが、高評価も多い。

代表的なレビューをいくつか読んでみたが「柔らかくて穿きやすい」というものが多かったが「30年前のソフトジーンズみたいで懐かしいですね」というものは無かったので、今の消費者からすると「目新しい商材」ということになっているのではないかと推察される。

それにしてもつくづく惜しい。ジーンズメーカーはまたしてもユニクロに後れを取ったことになる。今からソフトジーンズを発売したところでユニクロの後追い商品と受け取られてしまう可能性が極めて高い。

一方、ユニクロは「また1つ目新しい商材を開発した」という評価を世間的に受けることになるだろう。

こういう積み重ねが業界標準のカジュアルメーカーとユニクロの差をここまで広げたといえるのではないだろうかと思ってしまう。

つくづく惜しい商材を逃してしまったと思えてならない。

 

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