
「ファッション化」のデメリットが顕在化しているワークマンの業績下方修正
2024年2月9日 企業研究 2
ワークマンの下方修正と2期連続の減益が話題となっている。
しかし、このブログでは以前からファッション化を過剰に推進することはワークマンにとってはプラス面だけではないことを以前から書いてきた。
また、企業やブランドも無限成長し続けられるわけがないので、チェーン店全店売上高が1600億円に到達したワークマンもそろそろ停滞期に差し掛かってきたという見方もできる。
今回の下方修正を手短にまとめると
1、企業規模が大きくなり停滞期に差し掛かっている
2、過剰なファッション化によってデメリットが顕在化し始めている
という2点に集約されるだろう。
ご存知の方もすでに多いと思うが、今回のワークマンの下方修正をおさらいしておこう。
2024_3q_gyoseki_shusei.pdf (workman.co.jp)
営業総収入(いわゆるワークマン本社の売上高)は16億円少ない1349億9300万円
営業利益は22億8000万円少ない234億4000万円
となっている。
ちなみにチェーン店全店売上高も目標としていた1800億円には届かず、1758億8800万円に留まっている。
無限成長はあり得ないと割り切っている当方からするとワークマンの下方修正も「こんなもんでええんちゃうの?」と思ってしまうが、無限成長狂信者にとっては大変なことなのだろうと思う。
さて、ワークマンの停滞期突入は下方修正発表以前に昨年の月次既存店売上高がほとんどの月で昨年実績を割り込んでいる時点で隠しようもなかったといえる。
ここに来て、メディアにもワークマンの現状と今後についてまともな懸念を示す記事が増えてきた。
見出しはイマイチだが、分析は正しい。
無料部分だけでも相当にまともで正しい指摘がなされている。
もう一つはこれだ。
ワークマンの「ファッション重視」路線は正しい戦略か? アンバサダーの視点から分析 (fashionsnap.com)
ワークマンのアンバサダーの人が書いているので、どちらかというと忖度した言い回しがあるが、指摘していることは正しい点が多い。
逆に言うと、アンバサダーの人までが指摘するほどなのだから、実情は相当にまずいことになっていると考えた方が適正だろう。
まず、一つ目の記事から引用する。
「ワークマンプラス」への改装店は、1年目は売り上げが伸びても2年目以降は減少、既存店売上高も4.3%減少、「#ワークマン女子」新店は初年度は勢いがあるが2年目以降の落ち込みが大きく、既存店売上高は11.8%も減少している。それでも「#ワークマン女子」新店の売上寄与度は一番高いから(開店初年度売上高平均は3億円弱、SC店舗は5億円を大きく超える)、積極出店を継続することになる。祖業「ワークマン」の既存店売上高も2.5%減少しているのは「職人離れ」を推察させる(ロイターによる下方修正の記事を転載したヤフーニュースには、職人たちの批判コメントが殺到していた)。
同社の決算説明会資料では「暖冬でアスレジャー向け防寒商品が伸び悩む一方、プロ向けは堅調」と説明しているが、部門別に見れば「ワーク・アウトドアウエア」売上高は前々期から減速して今第3四半期は前年を割り、「作業用品・レインウエア」も同様に減速して今期は前年を割り込んでいる。「レディス・ユニフォーム」だけは減速しても2ケタ増、「インナー・ソックス」も減速ながら2ケタ近い伸びを維持している。PB(プライベートブランド)別に見れば、最もハードな「イージス」が急失速して前年同期比76.0%に沈み、ワーク&アウトドアの「フィールドコア」も急減速して1ケタ増に落ち、ワーク&スポーツの「ファインドアウト」は前期に急失速して水面を割り、今期はかろうじてその水準を維持している。
部門別にはこのように結構酷い有様である。
職人客に特化したローカル立地のFCビジネスから一般客(「ワークマンプラス」)、さらにはメトロエリアの女性客(「#ワークマン女子」)を狙っての出店立地とマーチャンダイジングの一気呵成のドメイン転換がいくつもの「すれ違い」を生じさせ、運営スキルやマネジメントではギャップを埋めきれなくなったと見るべきだろう。
ホットなファッション性を高めたアスレジャーアイテムがクールなメトロエリア(大都市圏郊外)客の嗜好とすれ違って失望を買い(「#ワークマン女子」既存店売上高の落ち込み)、プロ向け品ぞろえの縮小や滞店時間の長い一般客の増加に失望して長年の顧客だった職人層が離れても(「ワークマン」既存店売上高の減少)、ホームセンターに慣れ親しんだローカル中高年層の支持は変わらない、というのが今のワークマンの実態と思われる。
と分析しているが、これもほぼ正しいだろう。
天王寺MIO6階に昨年3月にワークマン女子がオープンした。初年度は平日昼間でも結構な客入りだったが、昨年後半以降は平日昼間は多少客入りはあるものの、決して混雑しているわけでもない。明らかにオープン景気が終わったと感じられる。この店舗の現状も記事の指摘通りだということだろう。
2本目の記事では、当方が以前からこのブログで書いているようにファッション化によって値引き品番が増えて粗利益が減少していることが指摘されている。
一般客向けのカジュアルウェアはマークダウンが増加し、その影響により荒利益率が悪化している。とはいえ、一般客向けの製品は売り場の鮮度を高めることを目的に、マークダウンしてでも売り切る方針であることが語られた。つまり、ファッション性重視の製品はあくまで売り場の鮮度を高める「飾り」的な位置付けで、今後も引き続き展開されると思われる。
とある。つまり今後もワークマンは売上高欲しさにファッション化をやめないし、それによる売れ残り品は値下げ処分するという意思表示である。
次の文節ではアンバサダー氏は「ファッション化の成功例」として「メリノウール長袖丸首シャツ」と「エアロストレッチクライミングパンツ」を挙げておられるのだが、着用画像と用途についての説明を読んでいると「ファッション化」というより「外見がそこそこマシで実用的にも使いやすい」という説明としか読めない。着用画像に関していうと、ユニクロのエアリズムコットンオーバーサイズTシャツよりもファッション性は低いと当方は評価する。
そして
ひとことに「ファッション性を高める」と言っても、様々な方法がある。現在、ワークマンはトレンドのデザインを取り入れることで「ファッション性を高める」ことを目標にしているようだが、トレンドデザインは旬の時期が短いので、どうしてもマークダウンからは逃れられない。私としては、「汎用性の高いシンプルなデザイン」という意味での「ファッション性を高める」ことで、顧客層をより広げていくことが、長い目で見るとワークマンにとっては得策ではないかと思っている。
と締めくくっておられるが、この点に関しては当方も同感で、ここが筆者の本音ではないかと推測される。
酷く乱暴な言い方をあえてすると、今のワークマンが掲げている「ファッション性」というのは、ファッションセンスのカケラも無いダサいオッサンがいきなりファッションに目覚め、必死で頑張って無理やりに似合っていないオシャレ着を着ている程度のファッション性と感じられてならない。
ワークマンの長所は、厳しい作業服業界で培われた「低価格・高機能」であることは誰しも異論は無い。
しかし、デザインセンスは無いから、ファッション性を強化したいのなら、企画・デザインチームを入れ替えるとか外部へのデザイン依頼を増やすとかする必要があるだろう。そして、長所である「低価格・高機能」とデザイン性をいかにバランス良くドッキングさせるかという作業に注力しなくてはならない。
地道なようだが、これをやる以外に現状を打破することはできないだろう。
comment
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ハマオ より: 2024/02/10(土) 7:56 PM
ワークマンは川上的なマインドが強いですね
プラス女子カラーズとファション強化の屋号を
出してますが特にプラスは一番厳しいと思います。パターン色目vMDと全てが残念な内容ですね
今一度本業のワークマンに注力すべきでわないかと思います。機能性や素材開発は素晴らしいと思いますので
ファションをやるのであれば外部からプロを呼ぶべきですね
有名な専務やテレビに出ていた匠みたいな方では
ファションは無理ですよ
当方は北海道在住ですが、プロノというワークマンみたいな店が競合として存在してます。
ここがワークマンと比べてすでに「ファッション性の高い汎用性の高いシンプルデザイン」をやっているように見えます。
売れ残り品番が増えるとFCオーナーもつらくなるので、商品開発はトレンド性を追いかけすぎないように頑張って欲しいです。
ワークマン女子のFCオーナーは通常のワークマンFCオーナーより厳しいと思います。