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南充浩 オフィシャルブログ

百貨店の富裕層狙い強化で中小型の地方郊外百貨店はさらに減る

2024年2月8日 百貨店 0

百貨店が富裕層狙い・外商強化を掲げるのは、経済的な効率で考えると正解だろうと思う。

百貨店が無くても法事と葬儀の香典返し以外に困らない当方からすると百貨店の政策など対岸の火事である。一切の感情を挟まずに判断するなら、富裕層狙い・外商強化は正しいだろうと思えてならない。

ただ、問題は百貨店自身(中の人たち自身)がどのように考えているかだろう。経済的効率を追求するから富裕層狙い・外商強化は正しいと考えているのであれば言動一致で何も言うことが無い。そのまま突き進めば良いと思う。

反対に今でも「ある程度はマス層も取り込まねばならない」と考えているのであれば、富裕層狙い・外商強化だけでは全く効果が無いだろう。言動不一致であり、施策と目的が合致していない。

 

最近、百貨店の好調な決算や単店舗の最高売上高など景気の良い報道が相次いでいる。その一方で地方・郊外型の中小型の百貨店の閉店ラッシュが止まらない。

この傾向について不思議がっている人やメディアもあるのだが、富裕層狙い・外商強化の結果が、都心大型旗艦店の好調と地方・郊外中小型店の不振だと言えるのではないだろうか。

政策による当然の結果ではないかと考えられる。

富裕層狙い・外商強化でますます都心大型旗艦店は栄え、中小型の地方郊外店は寂れる。これがこの政策のもたらす結果ではないだろうか。

 

断っておくと、地方・郊外の人々の需要が無くなって地方・郊外の百貨店が閉店するのを当方は構わないと思っている。今のところイオンモールなどの大型ショッピングセンターがすでに存在するし、これが寂れたらまた何かの新しい業態が生まれるだろうと考えられる。

「商店街は不可欠」とか主張する意味の分からないアカウントに10年前に絡まれたことがあったが、不可欠ならなぜ商店街が寂れたのか。それは多くの人にとっては不可欠ではなかったからだ。近隣の大型食品スーパーやドラッグストア、コンビニで十分だということになる。むしろそちらの方が価格メリットがある。

これと同じで、需要があれば地方・郊外の中小型百貨店も存続するだろうし、需要が無くなれば閉店するしかない。

地方・郊外型百貨店の未来 | コンサルタント | 生地 雅之 | アパログ | ファッション、アパレル業界のブログポータルサイト (apparel-web.com)

生地さんが記事をアップしておられる。

誤字脱字変換ミスが少なからずあって文意を掴みにくい部分があるが、個人的にはその通りだろうと思う。

現在は外商顧客のみにしがみつき、全体では富裕層に向き、百貨店の過去のメインターゲットの失なったマスやアッパーマス層を無視して、外商売上(現在20%もな)を倍にしても全体の半分もカバーできないのです。

とある。「もな」というのは山本モナではないだろう。モナ王でもないだろう。「20%にもなる」か「20%になる」かのミスだろうか。

 

生地さんはこの記事で百貨店はマス、アッパーマス層を切り捨てて富裕層特化で正解なのか?ということを問いかけておられる。(と思う)

当方よりも消費者的にも業務的にも百貨店と親しい生地さんは、個人的にはマス層・アッパーマス層を切り捨てるべきではないとお考えだろうと思う。

 

ここからはあくまでも仮定の話で、当方がそう懸念しているというだけのことである。

もし、百貨店首脳陣が富裕層狙い・外商強化をすることでマス層やアッパーマス層を獲得できると考えているのであるなら、それは大きな間違いとなる可能性が高いと個人的には考えている。

高度経済成長期からバブル崩壊以降、2000年代後半に差し掛かるまでの間にはなるほど、富裕層向けの高額商品を打ち出したブランドへの「憧れ消費」というものがあった。

それは子供時分に当方も雰囲気を体感している。バブル崩壊以降もしばらくは「憧れ消費」というものが確かにあった。カネの無い貧乏人がなけなしのカネを貯めて(時には違法スレスレの方法の場合も・・・)高額ブランドを買うということがあった。

そういえば、2000年前後の女子高生はなぜかプラダのナイロンリュックを担いでいた。全く不釣り合いなのだが、そういう消費行動である。

現在でも一部の「港区女子」とかいうアホな輩にはその気風が受け継がれていると伝聞するが、そういう輩を除くとあまり不釣り合いな購買行動は見かけなくなったと感じる。

女性だけではなく、男性でも90年代半ばのビンテージジーンズブーム、2000年前後の裏原宿ブームでもなけなしのカネを握りしめて高額なビンテージジーンズや裏原宿ブランドの商品を買っている人が少なからずいた。

だが、男性でもそういう購買行動を見かけるケースが激減した。

 

現在のマス層の消費者は決して衣料品やバッグ類にだけ突出した身分不相応な支出をすることが減ったと考えられる。それはファッション業界やメディアが「セレブナンタラ」と煽り立ててもである。

衣料品やバッグ類への興味は以前よりは低下傾向にあることも考えられるし、またそういう無理をして高額品を買う「背伸び購買」「憧れ消費」という気分ではない人が増えたということも考えられる。さらに、ファッション以外の分野にお金をつぎ込む人も増えたということも考えられる。

そういう複合的な要因によって「背伸び購買」「憧れ消費」をする人は減少したのだろう。

 

で、仮定に戻るのだが、百貨店首脳陣が富裕層強化によってマス層の「憧れ消費」を喚起できると仮に考えているのであれば、それは間違いだろう。

富裕層狙いを強化することでは「憧れ消費」は決して引き起こせない。逆に富裕層強化によってマス層は「俺たちには無縁の売り場」という認識をさらに強めるのではないかと考えた方が正しいのではないかと思う。

 

百貨店の富裕層狙い強化と外商強化によって、百貨店は大都市都心大型旗艦店だけが残り、中小型の地方郊外店はほとんど無くなるだろう。ちょうど、フランスやイタリアの百貨店のように、大都市都心旗艦店だけが残るという結末になるのではないだろうか。

まあ、個人的な消費でいえば完全に対岸の火事に過ぎないのだが。

 

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