ステマの依頼の多くは広告代理店からくるという話
2024年1月30日 販促 0
インターネットが普及したことで情報の発信が企業側も容易になった。これまでは新聞・テレビ・ラジオ・雑誌というマスメディアからの発信に頼らざるを得なかった。
その後、SNSが普及したことによって、企業側だけでなく消費者からの情報発信も容易となりその力もバカにならなくなってきた。
ウェブ上での発信力・影響力がある個人をインフルエンサーと呼ぶようになったわけだが、ある意味では旧マスメディアからの情報発信よりもウェブ上での情報発信の方が影響力を持つことも珍しくなくなり、旧マスメディアの広告出稿料は軒並み下落している一方で、ウェブ上の広告出稿料は値上がりを続けている。まさしく需要と供給のバランスの問題である。
そこで、インフルエンサーと呼ばれる人たちに対して、広告として情報発信をしてもらう事例が増えたわけだが、これはインターネットに限らず2000年頃から顕著になった消費者の嗜好として、企業やブランドとタレントのタイアップ商品にあまり消費動向を左右されなくなったというものがある。
まだテレビがメディアのトップだったころでも、人気タレントにドラマや番組内で衣装を着せても期待したほどには売れ行きが伸びないという事例は多々でてきた。その一方で、人気タレントがプライベートで着ていた衣装はすごい勢いで売れていた。
この2000年頃になると、消費者間にも「ドラマや番組でタレントが着用している服は企業やブランド側や番組制作側が用意したもので、タレント個人が愛用している物は別に存在する」という正しい認識が広がっていたためだと考えられる。
ただ、テレビも含めた旧マスメディアでは、タレントは自由に好きな時に発信できるわけではないから、タレント個人の愛用物を発信することは難しかった。
それがインターネットとSNSの普及で容易になった。状況さえ許せば誰でもいつでも好きな時に好きなだけ愛用物を発信することが可能になったわけである。
ここから進んで、従来の人気タレントだけではなく、一般人の中から各ジャンルにおいて支持者を集めるインフルエンサーが誕生したわけで、今度はインフルエンサー自身に企業やブランド、メディアは広告価値を見出して今に至っている。
ただ、上に述べたように明らかに企業タイアップ商品よりも一般消費者は個人の愛用物を好む傾向が強まっているため、個人愛用物のようなふりをして商品やサービスを有料でインフルエンサーに紹介してもらう仕組みが生まれた。これがステルスマーケティング、通称ステマである。
2000年代半ば以降のインターネット上での発信はどの分野においてもかなりステマが多かったのではないかと感じられる。もちろん衣料品もだ。
広告を広告と認識させないままに、さもインフルエンサー個人の愛用物のような顔をして商品やサービスを広告料金を支払って紹介してもらうというのは、広義な意味で騙し行為だということは間違いない。
そこで昨年秋から我が国でもようやく「ステマ規制法」が施行されることになった。遅すぎたくらいである。
法施行されてからまだ間もないが効果について興味深いアンケート記事があるのでご紹介したい。
35%のインフルエンサーがステマ依頼「減少」と回答 | 通販通信ECMO (tsuhannews.jp)
SNS・インフルエンサーマーケティング事業のLIDDELLが1月26日発表した「ステマ依頼」に関する調査の結果によると、ステルスマーケティング(ステマ)規制が施行された昨年10月以降、35%のインフルエンサーが事業者からのステマ依頼の減少を感じていると回答した。
調査は昨年11月、SNSで活動しているインフルエンターやクリエイターを対象に、オンライン上で実施した(サンプル数:100)。
ステマ規制の開始以降、「ステマの不安や懸念がある依頼」の増減について聞いたところ、35%が「減少した」と回答し、規制による一定の効果が見られる結果となった。一方、15%が「増加した」と感じていると回答した。
増加したと感じる理由は、「ステマ依頼の可能性があると気づけるようになった」との回答が大半を占めた。インフルエンサーのステマに対する知識が深まっている様子がうかがえた。
とある。確実に法規制は効果を表している。
で、この手のステマはどこから依頼があるのかというと、企業側やブランド側からインフルエンサーに依頼する場合もあるが、多くの場合は広告代理店である。しかも大手の広告代理店である。
広告代理店は、これまでの主要販路だった旧マスメディアの広告価値が下落したため、近年急速にウェブ広告へシフトしている。
ただ、問題なのは大手広告代理店は旧マスメディア広告とほぼ同様の感覚で営業活動を行っているという点である。人気タレント〇〇、好感度ナンバーワンタレント〇〇を起用すれば商品やサービスが売れやすいという認識のままである。実際、旧マスメディアにおいてもそんなことはなくなっており、超人気俳優を起用しても低視聴率のドラマは珍しくなくなっているし、全く売れなかった商品やサービスも珍しくない。
そんな大手広告代理店は企業やブランド側に対して「フォロワー数〇〇万人のインフルエンサーだから売れますよ」というような営業を日常茶飯事で行っているわけだが、フォロワー数が何十万人いても商品やサービス内容と合致しなければ全く売れない。また、そのフォロワー数〇〇万人のうちの何割かを有料で買っているという場合もあり、純粋に〇〇万人が支持をしているとは言えないインフルエンサーもいる。
この辺りのことは、企業やブランド側は強く認識して、大手広告代理店の出してくるアホな提案には乗らないようにしてもらいたい。
最後にこのアンケート記事で興味深い箇所をご紹介したい。
また、ステマ依頼に関するヒアリングで得られた回答から、インフルエンサーがよくあると感じる「ステマ依頼」を取りまとめた。
企業や代理店からの主なステマ依頼として、
「企業からのギフティングなので、PRではないからPRを付けないで投稿してほしい」、
「PRを付けなくてもインフルエンサーではなく、罰せられるのは企業だから心配しなくていいと言われました」、
「タイアップ投稿後、この商品を気に入っていただけたら、感想をオーガニックで投稿してください」
が挙がった。
さらに、
「インフルエンサー限定ご招待のイベントで、同行者にも投稿内容を指示されましたが、広告表記の指示はありませんでした」など事業者が投稿内容に関与するケース
や、
「PRを付けたら今後仕事は紹介しませんと、代理店数社から言われています」
もありがちな依頼という。
とのことで、5点ほどありがちなケースが紹介されているが、いかにも大手広告代理店が口走りそうな内容で失笑を禁じえない。(笑)
特に5点目なんて半ば脅しであり、大手広告代理店の姿勢が旧マスメディア時代から微塵も変わっていないことが如実にわかる。
まあそんなわけで、インフルエンサーのレビュー投稿や「使ってみました」投稿は話半分程度で視聴するのが賢明な人のとる行動といえる。