暖冬によって予想通りに防寒アウター類の値下げが続くマスブランド
2024年1月9日 月次速報 0
今日から関西は3日間「えべっさん」である。「えべっさん」が終わると正月のメイン行事が終わる。
とは言っても関西ではいまだに15日までを松の内としていてしめ縄を飾り続けるところもある。
えべっさん前日の昨日はちょっと冷えたが、全般的に関西も東京も暖冬傾向で推移している。昨年12月は3日間くらいのクリスマス寒波があったが、それ以降は暖かくて年末大掃除が捗った。
そうなると、基本的に防寒アウター類は12月中に売れにくい。売れにくいから12月に防寒アウター類の大幅値下げが目立った。
個人的に特に目立ったのはユニクロとジーユーで、その引き下げはすさまじい。またネット通販サイトで定点観測しているとアダストリアの各ブランドも防寒アウターの値下げが活発だった。
世界的な要因でどのブランドも22年以降ほとんどの品目で値上げをしている。値上げせざるを得ないというのが正確なところだが、その値上げ分を吹っ飛ばすほどの値下げが12月から現在にかけて行われている。
値上げしたものをわざわざそれ以下に値下げするのだから、アウターのみならず防寒着類全般の売れ行きが不振で在庫がダブついていると見るべきだろう。
専門店チェーン、セレクトショップの2023年12月度売上高(既存店ベース)は、暖冬で苦戦したケースが目立っている。国内ユニクロは前年同月比15.4%減。22年秋の値上げ以降、前年実績を割ったことのなかった客単価も、同0.1%減と割り込んだ。
とある。
ジーユーは発表されないが、恐らくは客単価はユニクロ以上に減少していると店頭値下げから推測できる。
この記事の良いところは、昨年12月のユニクロの状態も併記して比較している点である。
一昨年12月が、値上げした“ヒートテック極暖”やカシミヤセーターが売れて売上高が同16.9%増、客単価が同14.8%増だったことも大きいが、「本来アウターが売れる時期なのに売れていないことで、単価が下がった」(広報担当者)という。
とある。一昨年12月の伸び率が好調だったので、23年12月は21年12月並みに戻ったと数字上では考えられる。
客単価は一昨年比で微減(0・1%減)となっている。
ここで注目したいのがユニクロはやはり12月末までは防寒アウターの売れ行きが悪かったという点である。だから値下げが活発に行われた。
定価で1万円を越えていたメンズのダウンアウター類は年末までに全て1万円未満に値下がりしている。これでは一体何のために1万円を越えるように値上げをしたのか全く分からない。
ジーユーに至っては中綿ベストがすでに990円に値下がりしてしまっている。ちなみに防寒ズボン類も990円に値下がりしている品番が多い。防寒機能は無いが、今秋冬トレンドと目されていた極太シルエットのパラシュートパンツは定価3990円にもかかわらず現在は990円に値下がりしている。
中綿入りモンスターパーカも登場してすぐに3990円まで値下がりしている。
ジーユーの客単価はかなり低下してるのではないかと思う。
アダストリアも当初は強気な価格設定だったが、12月に入るとアウターの値引きが始まり、12月最終週からは大々的な値下げになった。
さらに1月からはタイムセールと称してもう一段の値下げが行われている。
例えば、ウーリーテック(合繊メルトン)ステンカラーコート)グローバルワーク)なんて今の時点で50%オフの3960円である。ユニクロよりも圧倒的に安い。同じウーリーテックのチェスターコート(ラコレ)も40%オフの5192円でユニクロよりも安い。
ウーリーテックのロングトレンチコート(ラコレ)も28%オフの6952円だし、現時点では8000円未満で買える防寒アウターがかなり豊富にそろっている。
よほど気に入ったデザイン・サイズ感・色・柄・シルエット・素材感を兼ね備えた商品でなければ当方は最早定価で買う必要性を全く感じていない。
その一方で都心旗艦百貨店の好調が報じられている。
例えばこれ。
主要百貨店5社の2023年12月度業績は、おしなべて1割程度の増収だった。ラグジュアリーブランドや時計・宝飾等の高価格帯商品が引き続きけん引し、気温が下がり切らない中でも冬物衣料が健闘した。
各社の前年同月と比較した売上高は、三越伊勢丹が13.1%増、高島屋が10.1%増、大丸松坂屋百貨店が7.2%増、そごう・西武が3.9%増(広島店、千葉店別館の閉店影響を除く)、阪急阪神百貨店が12.3%増。
これはまさに二極化の象徴だといえるだろう。
百貨店はインバウンド客も相当数取り込んでいるだろうが、最近のユニクロやジーユー、その他低価格ブランドの店頭を見ていてもこちらも相当数インバウンド客がいるので、あまりその差はないような気がする。使っている金額は全く違うのだろうが。
よく業界の人はこの都心旗艦百貨店の好調を例示して「高価格品が売れている」というのだが、個人的にはそれを市況全般に当てはめることは危険だと思っている。インバウンド客を除いた国内の客で、ファッション性なのかブランド価値なのかを重視して高い服を買いたいと考える人は、都心旗艦百貨店を支えるだけしかいないのではないだろうか。消費志向が堅実化している現在の日本人には、これらの人々の高級志向・価値志向が波及する可能性は少なく、この手の消費をする人口が増えるとは当方には考えにくい。
業界はそのあたりを冷静に見極めて価格設定と数量発注をする必要がある。高い物をプロパーで売ると息巻く業過人は少なくないが、それを買ってくれるような人口は決して多くないし、富裕層を狙ってもそれはそれで競合ブランドが溢れている。
それにしても、ユニクロの値上げ戦略は国内ではそろそろ限界ではないのだろうか。これ以上値上げしても定価で買う消費者は増えないだろう。ましてや今冬の値下げを体験すれば定価で買うことがアホらしくなる。そんなわけで当方は今年も値下げ品を買ってくらす所存である。