エシカルとかそっち系の商材は割高になるから大衆に広まりにくい
2023年12月26日 トレンド 0
近年、エシカルとかSDGsとかサステナブルとかがメディアを通じて異様に持ち上げられてきた。
「完全循環」を口にするメーカーや識者もいるが、「質量保存の法則」をぶち壊すような科学技術が登場していない以上「完全循環」は不可能である。完全循環を目指す研究は必要だが、現状で完全循環ができると主張することはミスリードを招く。
一部にはこの手のムードに対して現状での達成は難しいという真っ当な報道もあったがどちらかというと体感的には少数派だった(当方は支持していたが)。
基本的にこの手の商品は割高である。メディアでは「大量生産大量消費の時代は終わった」とのキャンペーンも見かけるが、実際、大量生産の低価格ブランドを集積した「なんばマルイ」は連日、人種を問わず外国人観光客でいっぱいである。日本人向けの施設でも百均、ジーユーはいつも賑わっている。
よほどの金持ちでもない限り、自分の使う物すべてを高価格品のみにすることは収入的に無理なので、自分にとってどうでもよいと感じる物は安ければ安いほどありがたい。例えばお年玉を入れるポチ袋なんて当方にとっては安ければ安いほどありがたい。百均で十分である。
ちなみに日本の富裕層・超富裕層の合計世帯数は23年3月の時点で148・5万世帯となっている。
野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計 | ニュースリリース | 野村総合研究所(NRI)
富裕層は資産が1億円~5億円、超富裕層は資産が5億円以上を指す。
ちなみに日本の超富裕層は23年9月の記事によると、14940人いて世界4位である。
【最新】超富裕層が多い国・都市ランキング 日本は世界4位 | ELEMINIST(エレミニスト)
資産5000万円以上1億円未満は「準富裕層」で325・4万世帯ある。
何から何まで高価格品で揃えられるのは年間収入の多寡にもよるが富裕層と超富裕層だけだろう。それでも資産1億円程度の富裕層なら月収が低ければ身の周りを高価格品で固めることは不可能である。準富裕層も同じで月収・年収が高ければ贅沢な暮らしはできるだろうが、親や祖父母の遺産を受け継いだものの月収・年収が低ければ低価格品を愛用する暮らしをしていると考えられる。
そうなると、高価格品の愛用人口がいかに少ないかがわかる。
ただ、日本は欧州と異なり、階層性社会ではないから低収入層がお金を貯めて一点豪華主義で高価格品を買うこともあるし、それが社会的タブーになっているわけでもないから、市場規模はもう少し広がる可能性はあるものの無制限に広がることはあり得ない。
つい先日、YouTubeの解説動画で、詳細は失念してしまったが「世界的にエシカルのイシキタカイ系の高価格商品の売れ行きが悪化している」というものを視聴した記憶がある。その動画では理由を「インフレによるものですべての値段が上がっているから特定のイシキタカイ高価格品を買う余裕がなくなっている人が増えた」としていた。
で、良くも悪くも大衆を煽ることが大好きな週刊誌にも以下のような記事が掲載されるようになってきた。
乱立した「エシカル系ショップ」の閉店相次ぐ ブームの裏で儲かったのは誰か|NEWSポストセブン (news-postseven.com)
具体的な店名、ブランド名、売上高などの数字が一切表記されていないのでいささか信用度合いは落ちる。しかし基本的な消費ムードは当方も含めてこの記事の通りなのではないかと感じる。
エシカル系ショップは、時代の流れの中で大手メディアにも毎日のように取り上げられ、人気店には行列ができるほどであった。ところが、あっという間に閉店が続き、その姿を消しつつあるという。いったい何が起きているのか。
「唐揚げ店や高級食パン店のように、確かに一時的な人気はありました。でも、エシカルであることに配慮をすると、どうしても大量生産には向かない商品も多い。生産ロットが小さいから、とにかく置いてある商品の価格が高い。意識が高く、比較的裕福な中高年女性たちには一時的に支持されましたが、一般層にまでは広がらなかった、というのが現状でしょう」(大手紙経済部記者)
とのことで、準富裕層から超富裕層までの世帯数や人口を鑑みると一般層(いわゆるマス層)にまで広がると思っていた方がアホだとしか言いようがない。
「最初こそ、SDGsやエシカルを考えるお客さんがたくさんきてくれて、この商売は軌道に乗るかと思ったんです。でも、よくよく考えてみると、エシカルを意識するお客さんですから、そんなに頻繁に商品を買うわけがない。もっと言えば、必要なものだけを最低限買うのがエシカルですよね。迂闊だったとしかいいようがありません」(中野さん)
これもその通りで、大量生産大量販売を悪だと考えるエシカルな人たちは頻繁に大量に商品を買わない。となると各店舗で売れる量も知れている。各ジャンルで数店舗ずつしか存在しないのであれば少ない需要を集約できて売上高も稼げるが、店舗数が増えれば分母の少ない消費は分散してしまうから、各店ともに売上高は稼げなくなる。自明の理である。
関東にある大手私鉄系駅ビルの運営に携わる東海林幹子さん(仮名・40代)も、このエシカル系ショップの存在に頭を悩ませている。
「親会社の意向で、エシカル系ショップが次々にオープンしましたが、一年続いた店はおそらく一つもありません。メディアは騒ぎ立てましたが、結局開店直後の客足が続いた店はゼロで、家賃の踏み倒しや夜逃げもありましたし、中には、エシカル風のショップを装った”マルチ商法”関連の店まで出店し、社内で大問題になりました。もうエシカル、という言葉を見るだけで嫌気がさすほどです」(東海林さん)
東海林さんによれば、「エシカル」を標榜し、表向きの「美しさ」や「響きの良さ」を隠れ蓑に、健康食品などマルチ商法の商品を堂々と取り扱う店舗まで出てきたという。また、エシカル系のショップが潰れた後には、大量生産・大量消費系の100円ショップや、安さだけが売りの雑貨店がオープンし盛況なのだというから皮肉きわまりない。
これも百均、ジーユー、スリーコインズがどの商業施設でも常に盛況なことを見ても当たり前である。
基本的に大量生産しない商品や再生原料を使った商品は製造コストがかさむ。
先日、グンゼの社長会見で主要事業であるプラスチック事業について「SDGsの観点から再生プラスチック原料は割高だが仕入れて使用している」という発言があった、
個人的には、割高な再生ポリエステルを使う比率を高めているから衣料品の値段が上がっているのではないかと思うし、月に一度寄稿していくれているUS君もそのように指摘している。
再利用というと安くなると想像する人も少なくないと思うが、現実には価格が上がる場合が多いということはもっと知られる必要があるだろう。
エシカルとかSDGsとかそっち系の分野においても経済合理性の無い商品やサービス、店が大衆層に広がることは難しい。