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南充浩 オフィシャルブログ

1つのヒット作が長く続きすぎると必ず低価格競争が始まるという話

2023年11月30日 お買い得品 0

今夏に買ってみて良かった物の1つとして吸水タオル「エアーかおる」がある。

これまで、カンブリア宮殿などの経済系ノンフィクション風のエンタメ番組に何度か取り上げられたタオルである。

特徴は

1、ふわふわであり洗濯を繰り返してもふわふわ感が維持できる

2、綿100%でありながら吸水力が高い

3、綿100%なのにそこそこそ速く乾く

の3点が大きい。

ただ、これまでは店頭販売価格が高かった。

Amazonや楽天で商品検索してみるとフェイスタオルが1500円前後していた。これを高いと感じるか安いと感じるかは個人差があるだろうが、当方はご存知の通りにケチなので高いと感じる。

だから、今までは購入しなかった。

ちなみに天神橋筋商店街でたまに期間限定の屋台で泉州タオルが売られているが1枚200~500円程度なので、300円の物を4枚か5枚買ったことがある。

当方からすると、タオルの相場というのはそういうものだという感覚がある。

 

ところが、今年春からスギ薬局がコラボ商品としてスギ薬局版「エアーかおる」のフェイスタオルの販売を開始した。ウェブで調べると4月下旬にプレスリリースが発表されている。

当方がスギ薬局店内で見つけたのはたしか、5月下旬か6月のことだったのではないかと記憶している。

定価は税込み1100円。しかし、スギ薬局はほぼ毎日「15%オフクーポン」がアプリから配信される。これを使うと税込み935円で買えてしまう。天神橋筋商店街の屋台の泉州タオルに比べると高いが、1000円未満なら試しに買ってみるのも悪くない。

そう思って試しに1枚購入して、自宅で風呂上りに使用してみた。

以前にも書いた通り、入浴中に身体を洗うことに使ったり、屋外での作業時に首に巻いたりするのには全く適さないが、風呂上りに身体を拭くのには適している。

使い勝手が良かったので、15%オフクーポンが配信されるたびに買い足して、結局今年の夏は4枚のエアーかおるを購入した。

そうこうしているうちに、またスギ薬局を物色している際に、店内で今治タオルマークの付いた「HANBUN(ハンブン)」というタオルを発見した。

大きさは33センチ×100センチで、エアーかおるとほぼ同じだ。スギ薬局版エアーかおるは34センチ×100センチである。定価税込み1097円。

何よりも目を引いたのはパッケージに印字された「スーパーゼロ使用」という文言である。POPにもご丁寧に書かれている。

 

 

 

お詳しい方には解説は不要だろうが、この「スーパーゼロ」というのは浅野撚糸という撚糸工場が開発した撚糸の商標名である。スーパーゼロという糸で作られているので「エアーかおる」は上に挙げた3つの特徴を兼ね備えたヒット商品となったわけである。要するに「エアーかおる」の肝の部分である。

この糸で作られたということは、この「ハンブン」というタオルは「エアーかおる」とほぼ同等の特徴があると考えて間違いないだろう。もちろん、幾分かの差はあるかもしれないが、恐らくは当方も含めた素人が体感できるほどの差はないだろう。

エアーかおるよりも3円安い。15%オフクーポンを使うと932円で買えてしまう。要するにわずか3円だがエアーかおるの値段の下をくぐっている。いや、そもそもスギ薬局版エアーかおるは通常のエアーかおるの価格の下をくぐっているわけだから、それのさらに下ということになる。

これがさらにもう一段進むと「スーパーゼロ」使用タオルの価格引き下げ競争が大々的に始まることになる。

 

そもそも、経営難に陥っていた浅野撚糸は「スーパーゼロ」を開発したことによって起死回生となった。そして、おぼろタオルに製造を依頼しオリジナルブランドタオル「エアーかおる」を開発し、それを売ることでさらに経営を良化させて今に至る。糸売りとタオル製品販売との両方で収益が可能となったわけである。

 

ここまでで「浅野撚糸が自らの下をくぐるようなタオル製造に糸を販売するのはおかしいのではないか?」と思われる方もおられるだろう。

しかし、浅野撚糸の本業は撚糸工場なのである。撚糸工場としてのビジネスは撚糸が売れることが最優先となるため、糸の販売量が確保できるなら、自社ブランドタオル向け以外にも積極的に糸を販売しても全く不思議ではない。

 

先日、タオル業界と長く商売を続けている先輩にそんな話をしたところ

「実際、エアーかおるの大ヒットを受けて、タオル業界をスーパーゼロ使いのタオルが席巻しつつあり、スギ薬局だけではなく他にもスーパーゼロ使いのタオルが出回っており低価格競争が始まっている。値崩れを起こしつつあるともいえる」

というコメントをいただいた。

浅野撚糸がスーパーゼロの開発に成功したのが、「スーパーゼロの開発に成功してから4年目の2005年」とあることから2001年のことだろう。エアーかおるの完成が2007年となっている。

誕生からすでに22年、エアーかおるの完成からすでに16年が経過している。

2000年以降、タオル業界は様々な開発を行ってきた。例えばパッケージがケーキやフルーツに見える「ケーキタオル」や「フルーツタオル」。初動は良かったが、ほどなくしてから類似品が溢れただけでなく、恐らくは消費者からしても機能性や使用感が通常のタオルと変わらなかったために買い替え需要・買い足し需要が長く続かなかった。

当方の目から見ると「スーパーゼロ使いのタオル」というのは機能的にも評価され、タオル業界最大のヒット作となったと感じる。だがもう16年も経過しているわけだから、値崩れが起き始めてもおかしくない。ましてや本業は撚糸工場なのであるから、オリジナル製品の付加価値云々よりも自社で製造した撚糸を売って売って売りまくりたいというのが浅野撚糸の本音だろうし、事実現在はそうなっている。

そんなわけで何が言いたいのかというと、

1、スーパーゼロ使いが明言された安いタオルがあれば買って損はしない

2、浅野撚糸とタオル業界はそろそろスーパーゼロに続くヒット作の開発に成功しないと価格破壊が起きる

という2点である。

まさに満月は必ず欠けるのである。

今後の成り行きを外野から眺めていることにしたい。

 

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