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南充浩 オフィシャルブログ

夏服の着用期間が最も長くなっていて防寒アウターを着用できる期間が短くなっているという話

2023年11月24日 天候・気候 3

10月上旬に一旦涼しくなって長袖を着るようになったが、その後また夏日(最高気温25度)に戻り、11月頭の3連休は最高気温27度の日があったりしてまた半袖で過ごした。

11月11日に寒波が来て気温が下がりそこから今まで長袖で生活している。

北海道・東北・内陸の山間部などの寒冷な地方ではなく、大阪市内や東京都心の最高気温を考えると、今年は11月頭まで半袖で過ごせる気温だった。控えめに言っても長袖では暑いと感じる気温だった。

女性はもう少し暑さに早い時期から長袖を着ておられるのだろうが、それでも9月末ではまだ半袖で過ごしていた女性も多かったのではないだろうか。

 

最近では5月1日とか5月の連休明けからクールビズ期間が始まる職場も珍しくない。

そうすると、5月~9月末までの5か月間、半袖の夏服で過ごすということになる。当方と同じような体感気温の男性だと10月下旬か10月末までの6か月間を半袖で過ごすということになる。ざっと半年間は半袖を着るということになる。

11月11日以降はさすがに長袖長ズボン生活をしていて、当方ですら「肌寒い」と感じる日もあるが、電車の中にはいまだに半袖半ズボン姿の男、半袖長ズボン姿の男、長袖半ズボン姿の男(いずれも白人、黒人ではない)などがチラホラといて、この人たちの体感温度はどうなっているのだろうと心配になってしまう。年間のほとんどを夏服で過ごすという人たちなのだろう。

 

一方、衣料品業界の季節商品の立ち上がり時期、特に秋冬物でいうと

・8月中旬に秋物立ち上がり(お盆明けくらい)

・10月20日ごろ防寒アウターの店頭投入

というのが昔から標準化されている。

何事においても「目安」「基準」というのは必要なので、秋物立ち上がり時期と防寒アウター投入時期の「目安」が定められていること自体は何の問題もない。

しかし、近年、特に2015年以降の夏日の期間の延び方を鑑みると、例えば10月20日前後はまだまだ防寒アウターを着られる気温ではない。

当方が小売店で販売員をやっていたころなら、10月20日に防寒アウターが大量入荷してもその10日後の11月頭にはかなり気温が低下して防寒アウターを着られるような気温になっていた。

このため、30年前ならこの投入スケジュールでそれほど問題はなかった。

近年は11月も温暖になり、ほとんど防寒アウターを着ることがない。せいぜい薄中綿入りのアウター程度だろうか。

12月に入ってもさほど寒くなく、クリスマス前後に寒波が来るかどうかが冬物販売の焦点になっている。

昨年のように例え3日間でも寒波が来れば冬物と防寒アウターは売れるし、寒波が来なければ防寒アウターが売れるのは正月になってしまう。

逆に夏服は着用期間が長期化している。いくら暑がりの当方とはいえ、11月に半袖生活をすることになるとは夢にも思っていなかった。

 

そうなると、秋物の立ち上がり時期や防寒アウターの投入時期、夏服の販売期間など業界が考慮しなおす点が多いのではないかと思う。

ちょうど、三陽商会の新しい試みが報じられている。

三陽商会、セールにメス 夏は6~8月に新商品を投入 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

三陽商会は24年春夏から、正価販売の一層の向上に取り組む。セール期の6~8月に新企画を投入するなどシーズンMDを見直し、店頭の新鮮さを保つ。夏が長くなる傾向やセールに対する消費動向の変化に応える。

 

とある。

三陽商会のメイン顧客層は百貨店やセレクトショップなどが多く、廉価品を主体的に買うような層(廉価品も買う人はいるだろうが)ではない。

この層は昔なら「季節先取り」で買っていた層だろうと考えられるが、この層でも体感温度に沿って買う傾向が強まっているのだろう。彼らが10月末まで半袖で過ごすかどうかはわからないが、少なくとも9月に入ったからと言って暑さを我慢してまで長袖を着るような人は減っているのだろうと考えられる。

そうなると、商品供給側としては夏服の販売期間を長くするとか、夏シーズンにさらに新商品の夏服を投入するとか、そういうことを考えるのは極めて当然だろう。

今後はもしかすると防寒アウターのスケジュールも見直しになるかもしれない。例えば、投入時期を11月にズラして、正月セールでも値引きせずに防寒アウターは定価販売を行い、防寒アウター類だけを1月下旬にセールを開始するなんてことも起こり得るのではないだろうか。

近年、夏服を着る期間が5か月~半年くらいになり、春物と秋物の着用期間はそれぞれ1か月強くらい、冬服着用期間が3か月という具合になってきている。

それを考えると今回の三陽商会の施策は的確ではないかと思う。

ただし、販売期間や投入時期をずらすことは、縫製工場のスケジュールや生地工場の製造スケジュール、生地問屋の販売期間にも大きな影響を及ぼすため、拙速に行うことは難しい。とくにアパレル企業だけが一致団結しても実行できない。アパレル企業だけではなく縫製工場、生地工場、生地問屋など業界の川上から川下までがまとまる必要があるため、かなり大がかりな作業となり困難を極めるだろう。

とは言っても、最早「季節先取り買いがオシャレ」なんて煽っても、マス層は動かないわけだから、何らかの対策が不可欠であることは否定できないだろう。従来型の供給スケジュールを押し通すことは難しくなっている。

百貨店やセレクトショップをメインとする三陽商会ですら、体感温度に合った販売に切り替えようとしているわけだから、体感温度に左右される客層が多い低価格ブランドや量販店ブランドは同様の取り組みが必要なのではないかと思う。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/11/24(金) 12:54 PM

    三陽商会、2023年2月期でバーバーリー喪失以来7期ぶり(社長交代4人目w)で黒字になってましたが、今期も半期終わって営業利益17億円、純利益16億円くらいと好調のようですね。(https://www.sanyo-shokai.co.jp/company/ir/statement.html)
    前期が営業利益22億円、純利益21億円とかだったので、今期は大幅増益になりそうな勢い。
    たった1年で黒字転換して業績右肩上がりとか、ゴールドウィン再生させた三陽商会の現社長の大江伸治って凄いね。(スーツの着こなしはダサいけど)

  • とおりすがりのオッサン より: 2023/11/24(金) 1:10 PM

    あっ、三陽商会が黒字になったのは3年掛かってました(^_^;)
    リストラ、希望退職も相当やったみたいなので、優秀な経営者なのかどうかは微妙なのかも?

  • てつや より: 2023/12/03(日) 1:42 AM

    重衣料、レイヤード大好きなので冬が短いのは寂しい限りです

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