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南充浩 オフィシャルブログ

地方郊外百貨店は完全SC化するか撤退閉店するかの選択肢しか無くなるだろうという話

2023年11月15日 百貨店 2

先日、京都高島屋SCのオープン内見会への取材依頼をいただいて、寄稿させてもらった。

高島屋創業の地、京都でも進むS.C.化 専門店ゾーン「T8」を増床 (fashionsnap.com)

この施設はざっくり言うと、従来の髙島屋京都店に専門店街を増床したという百貨店+αの形態である。

 

この内見会席上でも言及されていたのが11月の立川髙島屋SCのリニューアルオープンだったので、興味を持って推移を眺めていた。

百貨店区画なき「立川高島屋S.C.」がオープン、暮らしや体験に特化し食品やアミューズメントに舵切り (fashionsnap.com)

 

同じ「髙島屋SC」だが、京都店とは異なり、百貨店ゾーンを全廃し全店専門店テナントとなった。そしてアパレル売り場は大幅に縮小されている。

同店は今年1月末に営業を終了した百貨店区画部分を中心に、新たに16店舗を誘致。生活ニーズや体験ニーズに特化した「食料品」「生活雑貨」「アミューズメント」系のテナントを中心に展開し、アパレルの売場は従来の半分、館全体の1割となる1フロアのみに縮小した。

地下1階から屋上となる地上10階までの計11フロアのうち、今回のリニューアルでは今年1月末に営業を終了した地下1階、1階、3階の旧百貨店区画と、従来は一般開放していなかった屋上を改装し、16店舗の新たな専門店を導入することで刷新。「“立川暮らし”の場」をコンセプトに、「ニトリ」や「ジュンク堂書店」「ユザワヤ」といった既存テナントとの親和性が高く買い周りが見込める、より生活に密着した店舗や施設サービスの導入を意識したという。

とのことである。

また池袋西武の売却問題で反対派の槍玉に上がったラグジュアリーブランドだが、

改装前は「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」や「グッチ(GUCCI)」といったラグジュアリーブランドや、眼鏡、宝飾、バッグなどのファッション雑貨、化粧品を展開していた1階には、100円ショップの「セリア」や、ペットからペット用品、トリミング、ショートステイまでを扱う総合ペットストアの「ペテモ」、「サンドラッグ」、立川市内初出店の菓子店「シャトレーゼ」、同じく立川市内初出店のバロックジャパンリミテッドが展開する観葉植物・ガーデニング雑貨ブランド「チュイン グリーナリー(TUIN greenery)」など6店舗を導入し、従来の高級路線から生活ニーズに即したカジュアルな生活雑貨を扱うテナント中心の構成に大きく舵を切った

とのことで、バッサリと全廃され、セリアやシャトレーゼと言った低価格店に置き換わる。

同じ「SC」なのに京都店と立川店では随分と百貨店ゾーンの扱いが異なるが、これは人口とインバウンド客の問題が大きい要因ではないかと思う。

京都市は2013年から絶賛人口減少中とはいえ、まだ2023年4月時点で138万人の人口がある。対して立川市は18万5000人の人口しかない。

またインバウンド客の数量は圧倒的に京都市が上で、立川市にわざわざ立ち寄るインバウンド客はゼロとは言わないがかなり少ないだろうと考えられる。

そうなると、百貨店ゾーンを残しても売上高が稼げないということだろう。

実際に記事中には

2018年10月には百貨店区画を3割残し、館の7割に専門店を導入して「立川高島屋 S.C.」として改装オープンしたものの十分な集客や買い周り効果が得られなかったため、2023年1月末をもって百貨店区画を全てクローズし、完全S.C.化に向けた準備を進めてきた。

とある。

今後百貨店はファッション中心の都心大型店と、SC化するか閉店するかの地方郊外店の二極化がさらに進むだろう。

伊勢丹新宿本店、今期売上高3700億円突破へ コロナ前から1000億円上乗せ

例えば、伊勢丹新宿店は過去最高の3700億円を売り上げている。伊勢丹新宿や阪急うめだ本店だけを見ると「百貨店絶好調」ということになるが、地方・郊外店は閉店や完全SC化が相次いでいるので、その格差が広がるばかりである。

例えば、髙島屋は岐阜高島屋の閉店を決定している。

「街の誇り」岐阜高島屋、閉店へ…開業は「柳ヶ瀬ブルース」ヒットから11年後 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

 

06年度には年間390万人が来店し、198億円の売り上げを記録したものの、近年は入居ビルの老朽化が進み、少子高齢化やネット通販の台頭など経営環境は悪化した。コロナ禍の打撃を受けた20年度の来店者数は185万人に落ち込み、売り上げも115億円に減少。23年2月期の最終利益は3100万円の赤字に転落した。

しかし、売り上げは回復せず、24年2月期は本業のもうけを示す営業利益が1億1400万円の赤字、最終赤字も7600万円と見込むなど、「業績の回復の見通しが立たない状況」(岐阜高島屋)となっていた。

とのことで、岐阜市の人口増が見込まれているにもかかわらず、売上高も回復せず赤字からも脱却できないとなると、百貨店は慈善事業ではないのだから損切り撤退するのは当然である。

岐阜市にせよ立川市にせよ、都心大型百貨店へ行くのに電車で行きやすい立地であるため、

「ファッション衣料は都心店で、身の周り品や日常品は地元のショッピングモールなどで」

というふうな消費者の使い分けが顕著化しているのではないかと推測される。

今後、百貨店ユーザーの中でもこの使い分けはさらに加速化するだろうし、地方・郊外の富裕層は外商やネット通販も使用するだろうから、地方・郊外店は立川SCのように完全SC化するか、岐阜のように撤退するかしか選択肢が無くなるだろう。

また、立川SCのアパレル売り場大幅削減も近年の消費者心理を反映しているといえる。そこまでやみくもに毎シーズン洋服を買い足そう(値段の高低にかかわらず)とする消費者の人口は著しく減っているのではないかと思う。

それは当方自身もそうだし、同年配の業界人も同様で洋服の購買枚数や購買金額は年々減少傾向にある。

当方だったら洋服よりもガンプラ、他のロボットのプラモデル(ダンバインなど)。他の人だったら、バイクや自転車、釣り、キャンプなどと言った具合に、支出先が変わってきている。

 

今後、都心だろうが郊外だろうが、新たに百貨店店舗が建設されることはないだろうから、百貨店は店舗数を減らしつつ、ファッションの殿堂みたいになった都心大型旗艦店と、完全SC化して生き残った少数の郊外店という組織になって存続するのではないかと思う。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/11/15(水) 11:38 AM

    立川から新宿までどのくらい掛かるか検索したら、中央線快速なら25分しか掛からないんすね。
    東京23区内に住んでいたときは、立川とかはるか彼方ってイメージでほとんど行ったこと無かったですが、上手く電車に乗れればそんなに遠くもないんですね(距離はともかく時間的には)。
    そりゃ、わざわざ高額商品を買うなら、都心に出ちゃいますよね。逆に、都心から立川へ行くのは相当ハードル高いですがw

  • 読者 より: 2023/11/15(水) 12:20 PM

    立川は入ってたハイブランド店はどうしたんですかねえ。
    競合に引っ越しされたら高島屋が損するだけじゃんとか思ったけど。
    立川は一番店の伊勢丹が家賃高くて慢性赤字だったと思う、減額してなければ。
    不毛な地域の印象ですな、数字はデカいけど。

    岐阜の高島屋が撤退なのはビルの構造の問題がデカいと思う。
    普通の百貨店より高層化してる分エスカレータの数が多い。
    営業中の更新だと工事費用が高くなるが、台数が多いのでさらにキツイ。
    一旦閉店して下層の数階だけの店舗にするならかなり安く更新できると思うけど、
    耐震補強がどこまでできてるかにもよる。
    やりようはあったようにも思うが、費用対コストが割に合わんのでしょうな。

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