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南充浩 オフィシャルブログ

ワコール、トリンプが停滞、苦戦している理由を考えてみた

2023年11月14日 決算 4

有為転変というが、この世に絶対不変の事象など無いということは昔から言われている。

売上高規模こそ往年とあまり変わらないが、最近のワコールの苦戦ぶりは15年前までなら想像することすら難しかった。特に当方が女性肌着各社を担当させられた90年代後半から2000年頃までだと、ワコールは分野内での絶対王者だった。それを猛追していたのがトリンプである。

今回、中間決算ではワコールは赤字転落し、通期見通しでも赤字額がさらに拡大している。

「安さと快適性」に勝てなくなってきたワコールの苦境

赤字転落ではあるものの、往年と売上高はさほど変わらないワコールはまだしも、当時勢いのあったトリンプはさらに厳しい状況となっている。

「天使のブラ」トリンプが苦境にあえぐワケ 直営店の減少に赤字決算、社長の後任も未定 | 週刊東洋経済(ビジネス) | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

これは2017年12月に掲載された記事である。

かつて「残業ゼロ」を実現しながら19期連続で増収増益を成し遂げた優良企業が、苦境に立たされている。

婦人下着メーカー大手のトリンプ・インターナショナル・ジャパンは11月初旬に2016年12月期の決算を官報に公告した。売上高は434億円、営業損益は9.5億円の赤字だった。

定期的な決算開示がないため近年の業績推移は確認できないが、売上高は05年の約520億円をピークに減少傾向が続いている。現在の直営店は約250店で、ここ5年で50店ほど減った。

とある。

実は調べた範囲内では、この2016年12月期以降で、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの官報の決算公告は見当たらない。

恐らくは、2016年よりもさらに業績は悪化しているのではないかと当方は推測する。特に売上高はこの当時よりもさらに縮小しているのではないだろうか。

理由は、勢いのあったころに比べるとトリンプの宣伝広告を各媒体でほとんど目にすることが無くなった。業務以外では女性肌着に一片の興味すら無い当方のような者からすると、5年くらい前からトリンプというブランドの存在すら思い出すことが無くなってしまうほどに存在感が無いからだ。

女性ならまた認知度が違うのかもしれないが、全般的にはトリンプは相当にブランドの存在感、知名度を下げているのではないかと推測している。

 

ワコールが停滞し、トリンプが失速したのは、前回も書いたようにユニクロ、しまむらの低価格肌着がシェア率を伸ばしたことが一因だろう。

先に引用した東洋経済オンラインの記事には2016年の女性肌着の各社シェア率の円グラフが掲載されている。

1位 ワコール 20・3%

2位 ファーストリテイリング 20・2%

3位 しまむら 12・6%

4位 トリンプ 7・7%

となっていて、トリンプのシェア率は2016年の時点で、しまむらよりも低下してしまっている。しかも5%近くも差を付けられて。

一方、ユニクロのファーストリテイリングはワコールとほぼ同率で、ファーストリテイリングとしまむらの合計シェア率は32・8%となり、ワコールとトリンプの合計シェア率28・0%を4・8%も上回っている。

2023年現在は、ユニクロのシェア率が微増してワコールがほぼ横ばいから微減、しまむらは横ばいか微増、トリンプは微減ないし減少ではないかと推測できるのでシェア率の差はもう少し広がっているのではないだろうか。

一般的にはユニクロの躍進ばかりが注目されるが、しまむらの台頭もワコールとトリンプにはかなり大きな痛手だったと思えてならない。

 

また、他の要因としてワコールやトリンプの従来型商品がデザイン的に以前ほど支持されにくくなっているのではないかという声もある。

レースやらフリルやらが過剰につけられた従来型のブラジャー類・ショーツ類が気恥ずかしいとして忌避する女性の声も少なからず上がっているように感じる。

そういう女性はスポーツブランドの商品やら、ユニクロのブラトップやらを支持している率が体感的に高いと感じる。

 

もちろん、当方は女性ではないし、10年前に離婚して以来女性と深く付き合っているわけでもないから、詳しい心理状態はわからないし、さしてわかりたいとも思わない。ただ、個人的感覚で言うと、当方はユニクロ大型店で女性肌着コーナーに間違って迷い込んでもそれほど慌てないが、通常のワコールやトリンプの売り場はやむなく近くを通るだけでも何となく抵抗感がある。だから、従来型女性肌着のああいうテイストを好まないという女性の数も増えているのではないだろうか。そうでなければ、いくら低価格で快適性が高いと言っても、ユニクロとしまむらの支持率がこれほど大幅に上昇するはずもない。

 

もちろん、従来型の商品が好きだという女性がいることはわかるし、そういう人がいても全く構わないと思う。それこそ多様性である。ただ、その類の肌着類が2010年代半ば以前ほどの高い支持率には今後も回復することは無いだろうと当方は見ている。

一時期、女性には「勝負下着」があるとかないとかそんな話題もあったが、当方としてはそんな物を見る機会は今後もないし、自分で機会を作ろう・作りたいとも思わないから、ブラトップやら女性向けスポーツテイスト肌着やらが増えてもらった方が、売り場を観察する際も目のやり場に困ることが少なくなって助かる。

逆に言うと、レースやらフリルが付いた従来型を好む女性にとっては売り場やら商材やらの選択肢が以前よりは狭まっているし、今後も狭まるのではないかとも思うのでその点はいささか気の毒には感じる。

ただ、自分には無縁の商品なのでそういう人たちを傍観するだけのことなのだが。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/11/14(火) 11:59 AM

    ちょっと知ってる下着マニアの女の子(というか三十路間近)は、前にコメントされてた方と同じく海外の数万円とかする下着買ってるようですね。でも、海外製だとサイズが合わなかったりするようなので、ワコールとかトリンプとかはそういう海外下着マニアwの需要を精査したらよいんじゃないでしょうか?
    ニットとかも日本メーカーは白、黒、グレーとかしか作ってなかったりしますが、イギリスとかイタリアのメーカーは、微妙な色をいっぱい作ってたりして圧倒的に差がありますよね。下着とかもそういう感じなのかも?

  • 大阪のオバチャン より: 2023/11/14(火) 9:07 PM

    女性は、普段は洋服にひびかない色柄素材の下着を好みますが、デートの時は変える人が多いと思います。
    でもそれも、すごいフリルやレースというのは、今時ではないですね。
    今時の若い男性は、彼女がどんな下着を身につけるのが嬉しいのでしょう?
    やっぱりシンプルが受けるのでしょうかね?

    女性が下着にこだわるのは、結婚前から新婚時代、子育てが落ち着きつつある40代後半以降ではないでしょうかね。
    私は梅田の大丸の下着の階で購入しますが、ワコールや外国ブランド数店が固まっていて、とても買いやすいです。
    でも安くはないので、40代以降のオバチャンのお客さんが多いです。
    海外のブランドでも、サイズはわりと豊富ですよ。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/11/15(水) 9:56 AM

    大阪オバちゃま>
    女性が下着にこだわるのは
    ・結婚前から新婚時代
    ・子育てが落ち着きつつある40代後半以降

    完ぺきな分析です。しかし、上記の定石分析が
    少しずつ当てはまらない市場になっているから
    特にワコールは苦戦している模様です

    月給取りのシングル向け、高齢マダム?向けの専用ネーム
    があるのですが、いずれも苦戦しているそうです

    いっぽうでスーパーの売場はそこまで落ち込みが酷くないとか

    南サン造語の改良版になりますが

    「着けてラクちん・メンテもラクちん」

    な商品が日本全国どこでも手に入るようになると
    従来型の商品はワリを食うに決まっています

    加えてワコールの従来型の商品でちょっと上のラインだと
    セール購入でも上下で1万~だと思います

    それを数セット、耐用年数は3年となると
    多少稼ぎが良い程度では追いつかないと思います

    いっぽうでMade in Japanで高齢者向けのラクちん商品は
    そこそこ快調だとか。あとは親が買い与えるジュニア用

    「優良企業と騒がれていたが、実は単に市況が良かっただけ」

    というのは良くある事です

  • キムゴンウ より: 2023/11/20(月) 12:28 PM

    会社に持っていく紙袋を適当に見つけて持っていきますと
    「kimさんそれ女性下着のメーカーの紙袋ですよ。」
    と女性社員から教えてもらいました。
    我が娘28才胸が大きいのは知っておりましたが
    下着はハニーズでは無いことを知った父でした
    ウンナナクールとかいう所のやつでした
    そしてそこがワコールのグループであったことをこっそり調べたのです
    けちんぼの娘が下着にはこだわっていたことには ある意味ホッとしたのですが
    はたして28の女性が使用するには いささか子供っぽい様にも思い
    娘の行く先に一抹の不安を持ったのでした…

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