「ジーンズブランド」というカテゴリーが一般消費者に通じなくなった理由
2023年11月6日 ジーンズ 1
繊維衣料品業界人と一般消費者の意識・認識が大きく異なることは多々あるが、このアンケート結果とそれに対する業界人の嘆きもその典型例の1つといえる。
本当にランキングだけの記事だが、無駄に6ページ分割もされていて単なるクリック集め対策だろう。
総数は242票となっているので、そんなにサンプル数が多いわけでもない。
1位は順当にリーバイスで32・2%の得票率である。
2位はエドウインで14・9%
3位はリーで7・9%
となっていて、このTop3は極めて順当といえる。
リーバイスは一時期オワコン扱いされていたものの、最近では若者からも再評価を受けており、歴史の長さも相まって不動のジーンズブランドになりつつある。
2位エドウインもその露出、卸先店舗数の多さから考えても当然の結果で、見るだけでいうならエドウインの商品を見かけることが圧倒的に多いだろう。
3位のリーはリーバイスの唯一対抗馬になりうる歴史あるアメリカのジーンズブランドとして根強いファンも多い。
業界人としては、4位以降には疑問を持ってしまっても当然だろうというブランドがたくさんランキングしている。一例を挙げてみる。
4位バーバリー 5・0%
6位ノースフェイス 4・5%
8位ビームス 2・9%
あたりである。
あと
16位のアヴィレックス、ディッキーズ、グラミチ
24位のシップス、ヘインズ
なんていうのもそれぞれ得票数は0・8%と0・4%だが違和感しか感じられない。
このほか、デニム生地アイテムが得意とはいえグッチやドルチェ&ガッバーナを含んだデザイナーズブランドが多数ランクインしているところも違和感がある。
当方も一応業界人の端くれだから、違和感を大いに感じるものの、逆に今の一般消費者の「ジーンズ」というアイテムの捉え方はこうなのだと認識させられる。
バーバリーはメゾンブランドだし、ノースフェイスはアウトドアブランドで決してジーンズがメインの商品構成ではない。「ジーンズもあるよ」という商品構成で、ジーンズはワンオブゼムの商品に過ぎない。アヴィレックスしかりグラミチしかりディッキーズしかりビームス、シップスしかりヘインズしかりである。ヘインズなんてTシャツかトレーナーブランドである。
ビームス、シップスに至ってはセレクトショップであり、恐らくは彼らのオリジナルジーンズを指しているのだと思われるが、それが一般消費者にとっては「ジーンズブランド」という認識だということである。
一般消費者の認識がこうなってしまった理由は、
1、大手ジーンズナショナルブランドの凋落
2、ジーンズOEM(ODM含む)業者の乱立と爆増
この2点に依るところが大きいだろう。
そして、1と2は一見別の要因に見えるが実は密接にリンクしている。
2000年ごろまで、ジーンズを筆頭とするデニム生地商品はジーンズ専業ブランドしか企画製造販売していなかった。高級ゾーンやトラッドブランドからはデニム生地はアイテムは「高感度ファッション」とは認められていなかったからである。
もちろん、カジュアル業界は存在していたが、そことは別ジャンルという捉え方が一般的だったし、業界人もそのように認識している人が多かった。
国内のジーンズのほとんどをリーバイス、エドウイン(リーを含む)、ラングラー、ボブソン、ビッグジョンの大手5大ブランドが牛耳っていた時期も長くあった。
ところが、ジーンズカジュアルとそれ以外のファッション系が徐々に融合してくるようになり、消費者もそれを受け入れるようになると、大手5大ブランドも失速・凋落してしまった。
2000年代後半から2010年代前半にかけてエドウイン、ビッグジョン、ボブソンが経営破綻して縮小してしまうという事態に陥ったし、リーバイ・ストラウス・ジャパン社もピーク時に比べると大きく売上高を縮小させてしまった。ラングラーは早々に2000年にジャパン社が解散となり、エドウインのライセンスブランドになってしまっている。
そうなると、ジーンズ専業メーカーに在籍していた人たちもリストラで人員整理されてしまい、生業を模索するはめになる。20代社員なら全く別業界に転職することも比較的容易だろうが、40代・50代社員は難しい。必然的に彼らはジーンズ関連・デニム関連の仕事に就くがその多くがジーンズ関係のOEM(ODM)屋だった。自ら起業した人も少なくない。
そして、大手ジーンズメーカー各社が縮小すれば、それを支えていた産地の製造業者も厳しくなる。実際にいくつも洗い加工場や縫製工場が倒産廃業している。工場は存続しているが工員をリストラしているところもある。
そうなると、またここでもかつての工員がジーンズOEM屋を起業することが多々あった。
さらに、残った工場ももうジーンズ専業ブランドを頼れないということで、それまでジーンズを扱っていなかったセレクトショップやSPAブランド、百貨店ブランドからジーンズの製造加工の受注を積極的に受け入れるようになった。
かくして、ジーンズは特殊なアイテムでも何でもなくなり、そこら辺を歩いているニイちゃんですらカネさえ払えばオリジナルジーンズを企画製造してもらえるようになった。(ミニマムロットはあるが)
そうなるとセレクトショップでさえ、オリジナルのジーンズを企画製造販売できるようになってしまったわけである。
そうなると、ジーンズマニアや繊維業界人を除いた一般消費者からすると、リーバイスもバーバリーもユニクロも全て「ジーンズブランド」という認識になることは当然の結末といえる。
そしてこの流れは今後ますます定着化するだろう。
「ジーンズ屋、デニム業者としてのこだわりガー」なんて言いながら、実際はレディースSPAブランドからのOEM受注でメシを食っている三備地区(備前、備中、備後)の工場は履いて捨てるほどある。
もうジーンズ専業ブランド華やかなりし頃には戻りようがない。
ジーンズ専門ブランドは今後、そのような状況の中で収益化を続けて行かねばならない。小規模で高利益化することが最も効率的で無理のない方向性だと思うが、どうだろうか。
とりあえずジーンズ業界人はもう「ジーンズブランド」という括りは一般消費者にはほとんど認識されていないということを理解した上で、日々の業務に邁進しなければならないだろう。
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