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南充浩 オフィシャルブログ

民事再生法を申請したレイ・カズンはそのまま破産整理される可能性が高いのではないだろうか

2023年11月1日 経営破綻 6

レディースブランドの「レイ・カズン」が民事再生法を申請した。

業界的にそこそこ名の知れたブランドの経営破綻は久しぶりではないかと思う。

前回のブログでヴィレッジヴァンガードの「95%の客に嫌われても5%の客に支持されれば良い」という考え方を紹介したが、本当にその通りだとは思うが、5%の客では売り上げ規模の拡大は目指せないのが現実だし、5%の嗜好がマス層から支持されるご時世でもない。

5%向けは5%向けとしてそれなりの規模感で高利益体質で運営するほかない。

これは雑貨に限らず、飲食店も衣料品もほぼ同様だと感じる。

 

今回のレイ・カズンもその5%の範疇だろう。

様々な報道があるから複数を確認してレイ・カズンの今後を推測してみたい。

まず、信用交換所である。

株式会社レイ・カズン – 信用交換所 (sinyo.co.jp)

 

前身の㈱レイ・カズン(その後㈱RCコーポレーションに商号変更)は、ヤングカジュアルを主体に扱い全国に直営店を展開するほか、専門店への卸売も併営し業容を拡大していた。しかし、後継者問題などもあり2013年10月ファンドのアドバンテッジパートナーズ有限責任事業組合等が出資する現㈱レイ・カズン(設立時は㈱AP31)に事業譲渡し再スタートを切った。
以降は、増収基調で2019/9期にはピークとなる71億5000万円を計上していた。しかし、コロナ禍で翌2020/9期には年商55億円内外まで落ち込み、利益面も多額の赤字で厳しい経営を余儀なくされていた。
こうした中、今年の3月24日付で当社株式がファンドの㈱ゴードン・ブラザーズ・ジャパン傘下の㈱GBJインベストメントに譲渡され立て直しを進めていたところ、これも限界となり今回の措置となった模様。

 

レイ・カズンはかなり老舗のレディースブランドだが、現在のレイ・カズンは2013年にファンドに譲渡されたものである。これは当時各種報道されていた。

通常、民事再生法というのは経営破綻であって倒産ではない。新たなスポンサーが見つかれば会社はそのまま活動を継続できる。

スポンサーが見つからなければ破産整理となって倒産ということになる。

 

レイ・カズンに新たなスポンサーが見つかるかどうかだが、信用交換所の報道を見る限りかなり難しく、ほぼ確実に破産整理されるのではないかと思う。

なぜなら2013年に営業譲渡されてから、今年さらにゴードン・ブラザーズ・ジャパン傘下のファンドに譲渡されており、その譲渡先で破綻してしまっているからだ。

こんなに転売を繰り返されているにもかかわらず経営再建ができなかったようなブランドに新たに出資する物好きはほとんどいないだろう。だから新スポンサーは見つからずにそのまま破産整理に追い込まれる可能性が極めて高い。

ちなみにゴードン・ブラザーズは在庫処分屋と絡んでいることが多い。コロナ直前まで手伝っていた在庫処分屋にもゴードン・ブラザーズ経由で入荷したブランドがいくつもあった。

 

レイ・カズンの公式サイトを確認すると11月1日現在で、数え間違っていなければ正規店舗が25店、アウトレットが26店舗ある。数え間違っていても1、2店舗の誤差だろう。

正規店舗はほぼ直営店ではないかと推測されるが、アウトレットは何店舗が直営店なのかはわからない。アウトレットは結構、各地元の販売会社にフランチャイズや業務委託で丸投げしているブランドが多い。

当方の知り合いにも某有名大手セレクトショップのアウトレット店舗を運営している地元販売会社に携わっていた人が何人かいる。

ただ、正規店25店舗に対してアウトレット店26店というのはちょっとアウトレット店が多すぎるのではないかと思う。もしかすると、レイ・カズンの最近の主な収益は正規店ではなくアウトレット店だったのではないかというふうにも考えられる。

実際にコーチは正規店よりもアウトレット店で稼いでいると言われているからレイ・カズンが同様であっても何の不思議もない。

 

さて、アウトレット店のうち、地元販売会社が委託されていた店舗は間違いなく順次閉店していくことになるだろう。

問題はほぼ直営だと考えられる正規店25店の結末である。

まず、帝国データバンクでは

倒産速報 | 株式会社 帝国データバンク[TDB]

負債は債権者約200名に対し約31億円。

今後も店舗の営業を継続し、一部店舗については別会社の承継を予定している。

 

とある。

 

しかし、ファッションスナップドットコムでは

「レイ・カズン」が民事再生法を申請、新型コロナで業績悪化 (fashionsnap.com)

 

FASHIONSNAPの取材に対し担当者は、民事再生法の申請は新型コロナウイルスの感染拡大により業績が悪化したことが理由だと説明。現在の出店店舗については、年内は営業を継続し、2024年から順次閉店するとしている。

 

と報道されている。どの情報が正しいのかは分からないが、個人的には、新スポンサーが見つからない公算が極めて高いため、年内は営業を継続しつつ年明けから順次閉店するという方針で間違いないのではないかと思っている。

 

前回のヴィレヴァンの「95%と5%」の比喩を引用していうと、実際95%かどうかは不明だが、体感的にマス層の70~90%くらいの人はユニクロ、ジーユ―、しまむら、無印良品、ハニーズ、ワークマンあたりのラインナップの商品を組み合わせることで満足しているように見える。高い満足かどうかは別にして大きな不満は無いように見える。

先日、業界の数歳上の先輩と話したが、近所のイオンモールに行くと、ユニクロ、ジーユ―、ワークマンは客入りで賑わっているのに周辺の低価格ブランドはガラガラで空いているという。当方も、あべのキューズモールで同様の光景を目の当たりにする。

5%なのか30%なのかはわからないが、その層に向けて売って行かねばならないブランドの数が多すぎる。レイ・カズンもその一つだといえる。そして、レイ・カズンと言ってもブランド名はある程度知られているが、実際にどんな特徴のある服なのかイメージできる人は少ないだろう。女性ならもう少し確固としたイメージはあるかもしれないが、それでもそれほど多くはないだろう。

畢竟、その他大勢のブランドに埋没しているという印象が強い。

5%~30%の層に向けて売らねばならないが、その中は過当競争であり際立った特徴を発信できなければ埋没してしまいやすい。レイ・カズンもその一つだったということだと当方は思っている。

今秋冬は記録的な暖冬という予報が出ている。実際に9月、10月と苦戦傾向のブランドは多い。5~30%市場から淘汰されてしまうブランドは、レイ・カズン以降結構続くのではないかと思って眺めているがどうだろうか。

 

 

そんなレイ・カズンの商品をAmazonでどうぞ~

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 comment
  • 偽ずんだもん より: 2023/11/03(金) 5:04 PM

    身売り前のレイカズンを取り扱ってましたが、カジュアルな要素のある綺麗めで年代層も広めというイメージで、似たような多数のブランドの一つという捉え方でした。
    ターゲットを広く売りやすい服作りのブランドは、もうユニクロのレディースやハニーズで充分と思われて厳しいと思います。

    最近はコロナで賑わっていた高級アウトドア系ブランドが厳しそうです。
    アークテリクスは好調という記事を見ましたが。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/11/07(火) 10:34 AM

    うーむ・・・1つのブランド・1つのジャンルがどのように
    衰退していくか、良く判るコメントですな・・・

    20世紀はnon/no常連ブランドで、
    当時はトップス1枚5000円~だったんじゃないのかな?

    しかし、21世紀になり、
    南理論でいう「95%と5%の市場」が確立すると、ジリ貧に

    そこで、コメントにあったように路線を変えたものの、

    >似たような多数のブランドの一つ

    になってしまいました

    このコメントが実に秀逸な分析です

    むかしは30%はあった市場が5%マーケットに縮小して
    でも、もとは30%というけっこうなマス市場に特化した
    商売をしていた人たちだから、5%に響く服は作れない訳です

    そして、ドボン・・・ネームの価値だけは残ります
    なんといってもnon/no常連ブランドでしたから

    けど10年いや15年前には、non/noなんざ誰も読まない
    媒体になっていたんだけどねw

    で、身売りは成功しても、
    相手にしていた市場は今となっては、砂上の楼閣・・・

    まだネームの価値は残っているのかなぁ・・・
    ご本尊様は高価格戦略でしょうから、中途半端な上代しか
    設定できないネームに興味はないだろうし・・・

  • あわあわ より: 2023/11/08(水) 12:37 PM

    今日もイキってますなーー笑
    ここのブログの人たちは自分たちの世界しか知らなさすぎるんでないかな

    全ては金額の大小で売れると思ってるのかな
    そんな分析では業界が廃れるのも仕方ないのかもね

    特にイキってる人はさも自分が大御所ごとく振る舞えるのか理解に苦しむけどね
    上から目線すぎでしょ、無知のくせに笑

    5%とか関係あるか?じゃあマッシュグループは5%のターゲットで1000億なんだ
    あそこはなぜ売れてるのか教えてください笑
    どう考えても5%理論にあてはまらないと思うんだけど
    ずっと安いものばかり買ってるからズレてくるんだと思うよ

    それと富裕層だからってなんども買うとでも思ってんのかな
    そこすら勘違いに気づこう

  • とおりすがりのIT土方 より: 2023/11/08(水) 7:31 PM

    アパレルの市場規模がざっくり8兆くらいとして、1000億なら5%がターゲットでもまあ合ってるのではないですかね
    マッシュ”グループ”になるとアパレルだけじゃないので下駄を履かせてもらってる感はありますが

  • あわあわ より: 2023/11/09(木) 11:21 AM

    >IT土方さん

    そうでなくて笑
    5%のターゲットに縮小しているならマッシュグループの伸び率はおかしくないですか?ってことね
    ただ単に安いから売れてるのではないってことの証明だと思うけど

    単純にレイカズンは売れる商品を作れなかっただけなのにww

    ずっとユニクロ、GUなどの商品しか買ってないのにファッションを語るとかイキがってる行為を指摘してるんだよ

    別にユニクロGU無印を否定はしてないよ
    繊維関連の記事を書いてるんだからズレてるんじゃないのって指摘されるのもありえるよね

  • とおりすがりのIT土方 より: 2023/11/09(木) 1:01 PM

    そもそも5%の中に勝手に組み込んだのは誰かだけなのでわたしはよくわからないですが…
    前記事にある全国チェーンでもありませんし、手を広げていたのを狭めたわけでもないなかで5%に縮小?

    記事内にもあるそれなりの範囲で高収益が今のところはできていると言う話なのではないですか
    他の零れ落ちた5%からの牌をうまく回収してるのでしょうね

    売れる商品を作れなかった、はまあそうでしょうね

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